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北海道サッカーがはじめて頂点に近づいた一日【ぼくのコンサ史・番外編1】

 シリーズ『ぼくのコンサ史』の番外編だ。本当は書きたかったが内容が本編に合わなかったり、コンサドーレに関係ないため省いたものを書いていく。このコンサ史を書いている「ぼく」のサッカー観やルーツにも深く関わるサッカーと北海道の話である。(以下敬称略)


1.頂を目指す北海道サッカー

 北海道サッカーが全国大会で最も頂点に近づいた瞬間はいくつあるだろうか?

 コンササポであれば真っ先に2019年のルヴァンカップ決勝をあげるはずだ。川崎フロンターレと激闘の末PK戦までもつれたあの試合は確かに「最も近づいた」といって過言ではない。

 育成にも関心があるコンササポには、2011年の高円宮杯JFAU-18サッカーリーグのチャンピオンシップ決勝をあげる人もいるだろう。プレミアリーグイーストを優勝したコンサU-18と、ウエストを優勝したサンフレッチェ広島ユースが対戦して敗れた試合だ。ちなみにコンサU-18の四方田修平監督と広島ユースの森山佳郎監督は、2024年に横浜FCとベガルタ仙台の監督として13年ぶりに再戦することになる。

 そもそも頂点に立っているだろうという意見もあるはずだ。2012年のJユースカップ優勝である。2011年と2012年は、北海道の高校サッカーが全国に名をとどろかせた黄金の2年間だと称してもいいのではないだろうか。

 では質問を変えよう。北海道サッカーが最初に頂点に近づいた瞬間はいつだろうか?

 僕の知る限り、その答えは全国高等学校サッカー選手権大会の室蘭大谷(現・大谷室蘭)の準優勝である。この話をすると僕より年長のコンササポに何度か「ああ、財前のときでしょ?」と言われる。財前とは、コンサの財前恵一・アカデミーヘッドオブコーチのことだ。1996年には選手として、その後は育成の指導者やトップの監督としてもクラブを支えている。室蘭大谷の同期には野田知・広島ユース監督がいる。ちなみに弟は天才の名をほしいままにした財前宣之だ。

 しかし室蘭大谷が準優勝したのは、財前・野田の時代ではない。彼らは1987年のベスト4が最高成績だった。ひとつ言えるのは「室蘭大谷が準優勝(強かった)」というと、財前の名前が挙がってしまうほど彼らのチームが与えたインパクトは大きかったのである。

 では準優勝したのはいるか?さかのぼること1979年1月8日、日本にプロサッカーリーグが作られるなんて話すらなかった時代のことだ。室蘭大谷が国立競技場(旧)で古河一(茨城県)と優勝をかけて激突したその日こそ、北海道サッカーがはじめて日本の頂点に近づいた一日である。

2.完全アウェイの国立競技場

 1979年は僕が生まれる14年前だ。自分がうまれるずっと前の話をどうして長々とこすっているのか。それは僕の父がこの決勝戦を現地で観戦しているからだ。現在60代後半の父は、この世代には珍しく高校時代から北海道の片田舎でサッカー部に入っていた。『イレブン』などのサッカー雑誌に載っているジョージ・ベストの写真を見てはソックスの履き方を真似する。映像なんて見れたもんじゃないので、写真と記事から名選手のプレーを想像して実際に試してみたり。そういう時代からサッカーが好きだった人だ。

 そんな父が東京に住んでいた頃、室蘭大谷が高校サッカー選手権で優勝候補の浦和南(埼玉県)を破るなどあれよあれよと勝ち進み決勝に進出。こんな機会はないと友達と勇んで国立競技場にかけつけたそうだ。

 ちなみに当時の浦和南で活躍していたのが後に日本代表にも選ばれた水沼貴史である。今や2017年にコンサからのオファーを断った水沼宏太(横浜F・マリノス)の父親と説明した方が通りがいいだろうか。彼は同年に日本で開催されたワールドユースに出場する。いただいた情報によれば大会の選考メンバーまで室蘭大谷のGKが選ばれていたそうだが、詳細は分からなかった。

 さて、決勝の結果を先に書くと先制されるもPKで同点に追いついた室蘭大谷だったが、古河一にロングシュートを決められ万事休す。1-2で敗れ準優勝となる。そしてこの日から現在まで北海道の高校が選手権の決勝に進んだことは一度もない。まさに北海道サッカーにとって歴史的な一日なのだ。

 父と友達は当然室蘭大谷を応援していた。PKを決めたシーンか惜しいシュートのシーンか定かではないが、2人は思わず立ち上がって盛り上がった。だが辺りはシーンとしている。それもそのはず。室蘭大谷のプレーに湧いてたのは彼ら2人だけだったのだ。完全アウェイである。おそらく2人が座っていたのは室蘭大谷の応援席周りではなかったのだろうし、完全アウェイだったのも記憶違いかもしれない。しかし僕にとってこのエピソードは、北海道サッカーが道外の試合で応援されることの難しさを印象付けるものだった。

 今や関東でコンサが試合をする際には多くて数千人規模のサポーターが集まる。ホームのサポに負けないぐらいの声援で北海道のチームを後押しする。でもその景色は決して当たり前のものではない。歴史を感じる、歴史のバトンを受け取るとはまさにこういうことなのだろうと思うのである。

【補足】
・今回の記事を読んで「この事実関係は知っておいた方がいいよ!」という話、証言や資料がありましたら、ぜひ助言していただきたいです。参照して内容を随時改定していきます。

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3.参考資料

◎回想 高校サッカー準優勝 室蘭大谷(☆ CONSA に YELL! 2号 ☆)
 コンササポのブログに準優勝の話が。おそらく当時テレビなどで観戦されていた人が書いているはず。貴重な証言だ。

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