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少しラクになる方法【認知行動療法】③ 人に言ってしまったことを引きずる人

今回で3回目のコラムになります。

「あなたは誰?」という方は第1回目を。

「何について書いているの?」という方は第2回目を。

どちらもすでに「読んだよ」という方は今回もよろしくお願いします。
基本的には第2回目の続きです。未読の方は是非、一度を。


さて、今回、取り扱うお悩みは「人に言ってしまったことを引きずる人」です。

「すべての悩みは対人関係である」と昔の心理学者が言ったりもしていますし(多分)、実際に皆様も悩んだことがあると思いますし、友人から聴かされる相談も人間関係にまつわるものが多いのではないでしょうか。

悩む時間が長くなると不安になったり、モヤモヤしたり、イライラしたり、その結果、眠れなくなったり(逆に寝すぎたり)、食欲がなくなったり(逆に食べすぎたり)やる気がなくなったり(やる気が出る・・・ということはあまりない)、心身に影響が出始めます。
悩むこと自体が悪いわけではないのでその点はお間違えなく。


で、そんな時に役立つのが「認知行動療法」という心理療法です。
「認知行動療法」とは、読んで字のごとく「認知」と「行動」の変化を用いて悩みを変化させていく方法です。

第2回目のコラムでは「認知」に重きを置き説明をしました。
今回も認知行動療法のエッセンスを用いて4コマを見ていきましょう。

漫画②

・・・いかがでしたでしょうか?
2回目の4コマに登場したAさんに「意外と大雑把なのね」と言った女性(Bさん)視点の悩みです。
Bさんも悩んでいたんですね。


では、どのように考えて行くかというか前回と同じです。
まずは現実的に物事を捉えていくことです
「客観的な事実」と「認知」に分けていきましょう。

 事実としては3人で話をしている際に、BさんがAさんに対して「意外と大雑把なのね」と言ったことです。
その他の「大雑把って言い方は良くなかったかしら、傷つけてしまったかも・・・」というのは、あくまでもBさん自身の考え方でしかありません。
例えば、あなたが同じような状況なら同じように考えるでしょうか?
あなたではなく元メジャーリーガーのイチローならどのように考えるでしょか?
論破王ひろゆきならどのように考えると思うでしょうか?
つまり、捉え方(認知)は自由なのです。

 ここまで書いたことは前回までの復習みたいなものです。
今回は具体的にどうしていくかについて考えましょう。
Aさん、Bさんの考え方を見て、「そんな風に考えなくてもいいのに」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、人が何かしらの場面で瞬間的に出てくるイメージや考え方は「自動思考」と呼ばれるもので、読んで字のごとく(今回2回目)勝手に湧き上がってきます。
沸き上がってくることを止めることは、なかなかできません。
しかし、沸き上がった自動思考によって、不快な感情が出てきたり、身体反応が出てきたり、行動が変化したりします。
この「自動思考」を変化させていく方法の一つとして「認知再構成法」というものがあります。

 認知再構成法とは読んで字のごとく(今回3回目)、認知を現実と比較して、新しく作っていくことです。
認知行動療法を用いたカウンセリングでは、このような方法を用いて、一緒に考えて行くことをしたりします。

では、今回の場面でいえば「大雑把って言い方は良くなかったかしら、傷つけてしまったかも・・・」という考え方があります。
認知行動療法はポジティブシンキングとは違います。
なので、実際に「傷つけてしまったかも・・・」という考えを「傷つけてない!」と考えることが違います。
なので、傷つけてしまった可能性もあります。
しかし、傷つけてしまった可能性があるとしても、そこから「私って最低ね」と悩みが進展し、「なんでこんな嫌な奴なんだろう」と深みにはまり、最終的には自己嫌悪に陥ってしまうところは、いささか飛躍しすぎてしまっていると思われます。これも私の一つの考え方にしか過ぎませんが。

人を傷つけてしまう発言をしない人はいませんし、言い方を間違えない人もいませんし、相手が気にしていない可能性もあります。
このように自分の考えに「反論」を与えていくことが考え方を変化させていくカギになることがあります。
カウンセリングでは、このような作業を一つ一つ丁寧に行い、考え方に変化をつけていきます。
認知再構成法では、このような作業などを用いながら最終的に「自分のしっくりくる元の考え方よりは気分的にマシな考え方を作り出すこと」を目指します。

また、考え方を変えるのは、その後の行動を変化させるためでもあります。
「もしかしたら傷つけてしまっているかもしれないので、明日、会ったら謝ろう」というのがBさんにとっては現実的かもしれません。
考え方だけ変化させても、問題を解決したことにはなりませんから。

note③挿絵


さて、今回も小難しい話になってきましたがいかがでしたでしょうか?
なかなか理解できなかった、わかりづらかったなど、いろいろな感想があると思います。
そのような感想を持ったり、興味を持ってくださった方は7月に開催されるイベント参加を検討いただければ幸いです。


ちなみに私は「大雑把」と言われても特に何も思わないです。
だって、現実として「大雑把」ですから。

岡崎剛 / 臨床心理士、メンタルワークス大阪代表、三家クリニック臨床心理士
大学院修了後、地域若者サポートステーションにて勤務。「不登校」「ひきこもり」「ニート」などの本人や家族のカウンセリングを担当。また、相談室だけではなくアウトリーチ(訪問カウンセリング)、地域連携なども積極的に行う。現在は、臨床心理士として勤務しながら「メンタルワークス大阪」を開業し、幅広い精神疾患に対してカウンセリングを実施している。専門は「ひきこもり」「トラウマ治療」「認知行動療法」など。平成29年内閣府・専門分野横断的研修の講師などを担当。

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