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瞬間と感情【オリジナル小説】

こんばんは。今日もおつかれ様です。

最近はつぶやきでお茶を濁していましたが、今日は火曜日なのでオリジナル小説の投稿をしようと思います。

パソコンのデータとか、USBデータとか色々探してみましたが、整理が悪いせいか、実際大して書いていなかったのか、思ったより全然データが見つからない。

結構面白い話も書いていた気がしたんだけどあれは夢だったのかな。きっとそうなんだな。そりゃ私だもんな。代わりに全く身に覚えのない書きかけのデータは色んなところからやたら出てくる。こりゃ私かよと思うエログロナンセンスで尻切れトンボな話ばかり。

ただ、記憶にはないけど文章の形がたしかに私。この妙に長ったらしくて手にアカのついたダサい言い回しをこねくり回して伸ばしたような気持ちの悪い文章。

10年前の文章も20年前の文章も変わらない。同窓会で懐かしい友達を見つけた気分になる。おー、お前全然変わってないじゃん。昔から厨二病拗らせたような顔しやがって~……いや、同窓会とかそんなに行ったことないから分からないけど。

自分の子供時代の裸の写真を見ているようなもんなんだろうけど、これが気持ち悪くて楽しい。いや、実際に自分の写真見るのは楽しくないだろうけど、昔の自分の文章を見るのって特に、日記とか手紙とかじゃ無くて創作って一番その人の本当が出るもんだと思うから面白い。自分に出会えてよかったなと思います。

結局ただの自己満足な前振りが長くなりました。そんなことを考えながらどれにしようかと思った今回の掲載は結局前回と同じホームページで掲載していたやつです。

瞬間と感情 

 殺意を感じてからが私の本当の恋愛なのかもしれない。
 そう思ったのは私が十六になったばかりの秋のことだった。その頃私が付き合っていたのは二十三だったか四だったかの大学生で私の高校に教育実習生として来ていた。私たちがどのようにして付き合い始めたのか、本当に私はあの人を最初から好きだったのか、実はもうよく覚えていない。でも、あの秋の日の午後のあの瞬間に感じたあの思いだけは今でもはっきりと覚えている。
 あの人は私の隣で寝ていた。寝息すらほとんどたてず、それこそ「死んだよう」に。安いホテルの、異様に白いシーツに包まれて寝ていた。あの人の寝顔もあの時感じた思いと同様、今この瞬間でもはっきりと思い出せる。その寝顔は安らかでも苦しげでもなく、幼いようにも、老けているようにも見えた。窓の隙間から秋の午後のまだ冷たくなりすぎる前の風が遠慮がちに部屋に忍び込んで、寝ているあの人の髪を少し揺らした。 美しい。―― 一体何を見た瞬間にそう思ったのかは覚えていないが、そう思った。そして次に感じたのはこの瞬間を失いたくないということだった。独占欲、そう言いかえると安っぽく聞こえてしまうがそれだったのだと思う。けれど、それはあの人に感じたものではなく、あの瞬間に感じたものだった。激しい感情ではなかった。私にとっては自然な流れの中に生まれた自然な思いだった。そして、私の選んだ行為も。
 私はあの人の首に自分の手を伸ばした。あの人の首もまた異様に白く、血管が青く透けて見えていた。緊迫した空気ではなかった。私も焦ってはいなかった。正しいことをするつもりだった。しかし、その瞬間部屋の中に目覚ましの音が響いた。「ピピピピ……」 という電子音、現実の音。「おはよう」 あの人はきっと、美しい顔でそう言ったのだと思うけれど、私はそれから二度とあの人の顔を見ることができなくなった。
そしてそれから三年間、私たちは一度も会わなかった。
 レトロでお洒落な喫茶店だった。三年前にも一度だけ連れてきてもらったことがある。高校生だった私はお店の雰囲気にすっかり緊張してコーヒーの味もよくわからなかった。あの人はお店の一番奥に座っていた。―― 三年前私たちが座った席だ。覚えているわけではないがそうだとわかる。 美しい。三年振りに見てもやはりそう思った。すぐに目が合ったが私とは気づいてくれなかった。
「御久し振りです」
 こういう時、一体どんな言葉をかけるのが相応しいのだろう。私は自分の発した言葉の成否を確かめるように慎重に席についた。あの人が顔を上げ目を丸くする。
「久しぶり。変わったね。わからなかったよ」
 きっと本当に驚いたんだろう。目を丸くさせたまま、何度も私を上から下まで確認する。私は本当にそんなに変わったのだろうか。私の中の時間はあの秋の夕暮れから進んでいないように思う。
「先生はお変わりありませんね……いえ、前よりもっと素敵になられましたね」
 『先生』と言う呼び名に「もう、先生じゃないけどね」と苦笑してから、私の分のコーヒーを注文してくれた。私は少し考えたがそれでもやはり他の呼び名は見つからなかった。
「もう、三年も経ってしまったんですよね。先生からご連絡いただけるとは思っていませんでした」
 言ってしまった瞬間に私はもう、後悔していた。その言葉にはあまりにも非難の色が強すぎた。三年間、あの瞬間、ずっと抱き続けてきた思いがどんどん大きくなる。
「先生は、私が『あの日』何をしようとしていたかご存知だったのですか? 私のことが怖くなったからあれからずっと会って下さらなかったのですか?」
まずいと感じながらも私の口は留まるところを知らなかった。しかし、『先生』は私の激昂にも動じなかった。三年経っても、この人は大人で、この人の前での私は子どもなのだと思い知った。
 …… あの日、首に手をかけたのは私ではなくあの人で、あの日、まるで「死んだよう」に眠っていたのは、あの人ではなく私だった。『先生』はそう私に説明した。目覚ましの音で目覚めた私はひどく驚いていて、そして怖がっていたという。怖がる私を見て『先生』も自分自身が怖くなったのだと言う。私の記憶違いとも『先生』の勘違いとも考えられなかった。あの秋の日は確かに二つ存在したのだ。『私』の欲望と『先生』の欲望。あまりにも大きなその二つの思いがあの瞬間をつくりだした。二度と戻らないあの瞬間を。
「…… 結婚するんだって? おめでとう」
 そう言った『先生』の表情からはどんな感情も読み取ることはできなかった。あの日と同じようにただただ、美しかった。『先生』は来月出産するそうだ。私は来月結婚する。何ひとつあの秋の日から変わっていないように思えるのにいつも時間は正しく流れている。「ありがとうございます」 微笑みながらそう言ってコーヒーを飲んだ。

自分でもオチを忘れていて「あ、そういうこと?」ってなりました。そういえば結構こういう構成の話流行りましたよね乙一さんの作品とか。え?なかった?

次回は尻切れトンボのやつ掲載してオチを自分で予測するとかも案外楽しいいかなと思ったり。週一回の自分なりのnoteでの遊び方を見つけたので暫くは楽しめそうです。ご縁のある方はまたよろしくお願いします。

明日からもよろしく、私。

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