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ギブギブギブ【オリジナル小説】

こんばんは。今日もお疲れさまです。

さて、火曜日ですね。働いていた時はいつもあ、今日火曜日だ。と気づくと「まだ火曜日なの?」という絶望を一緒に思い出す響きでしたね。

先週過去の創作をアップしてみたので今日も昔書いた小説上げてみます。新しいものが何も浮かばなくて苦肉の策で過去作品探してみましたが、意外と自分が忘れていた自分を思い出せて楽しいです。

 ギブギブギブ
大きな溜息をつき、遠山アサ子は原稿用紙を丸め、畳の上に仰向けに寝転んだ。
気分を変えようと煙草を吸おうとしたが、箱の中は空だった。
アサ子はヘビースモーカーというわけではない。自分が三日以上一歩も外にでていないのだということに気づき、
「おわってるわぁ。」 
と、もう口癖になっている独り言を呟いて外に出た。
土手の上を歩きながら自分の住んでいるアパートを振り返り眺めてもう一度同じ独り言を呟いた。
四畳半の部屋に小さな流しとコンロがひとつずつ。トイレは今時共用。風呂は近くのコインシャワーで済ませている。
それでも東京に出て来たばかりの頃に比べればだいぶマシな暮らしである。三年前地元の大学にもいかず家出同然で東京に単身でやって来たアサ子には頼れる者もなく、たった一人人生を捧げたいと思った男には妻子があった。案の定すぐ捨てられた。
「お前みたいな欲望ばかりの甘い女が、一人で東京なんか来てどうすんだよ?」
 突然東京にまで会いにやって来たアサ子が男は疎ましくなったのだろう、十万円弱の手切れ金と一緒にそう吐き捨てて消えてしまった。 
それでもアサ子は故郷には帰らなかった。家に戻れば父親がいる。アサ子は自分の父親が嫌いだった。陰気でいつも社会に対して拗ねている父親。父は仕事を嫌い、社会を嫌い、家族を嫌っていた。アサ子は父の様に社会の歯車となって腐っていく人生だけは送りたくなかった。だから小説家になろうと思ったのも東京へ出て来た理由のひとつだ。
だが、やはりその考えも甘かった。高卒で得に伝もないアサ子はどの出版社でも相手にされなかった。
それでも猶、アサ子がまだ小説を書き続けているのは、夢をまだ諦めていないからではない。全てに絶望したからこそ、くたびれたアパートで碌に食事もとらずに不毛な小説を書き続けることができるのだ。アサ子は欲のない女になった。
 突然、アサ子の目の前に一匹の野良猫が飛び出してきた。ひどく痩せていて、汚らしい。目だけがギラギラと力をもっている。腐りかけた鼠の死骸を銜えている。なるほど、これが生命体の持っている欲望のカタチなのだろう。少し前の自分と野良猫の姿を重ね見てアサ子は自分を捨てた男のことを思い出していた。すると、今の自分は鼠の死骸だろうか、自分の発想に笑いを覚えながらアサ子は野良猫を強く蹴り上げていた。猫は鼠を落として逃げていった。その後姿を見送りながら、アサ子はいつもの口癖を呟いた。

火曜日の絶望感をより深める暗い話でした。

いや、明るいの書けないのか私。確か明るいのもいくつかはあったと思うのでそのうち上げます。

大学生の時授業で書いたやつですが、桐野夏生さんの世界観に憧れててこんなテイストの感じばっか書いてました。高校生の時書いたのも結構こんな感じです。

10年くらい前にホームページ作ってそっちでも上げてたんですが、久しぶりにそのホームページ見たらカウント800くらいしか回って無いの。10年以上経つのに。noteに出会えて良かったなと、改めて感謝します。

明日も多分よろしく、私。

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