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「分断」という言葉は、私たちの社会性のハードルを下げてしまったって話〜読書ノート『日本分断計画Ⅱ』〜

ねずピカです。
最近の悩みは、鬼滅の刃の一番くじを見かけたらとりあえず引いてしまう事です。

言論人でもYouTubeやTwitterなどのSNS上の発言は、より多くの人たちに注目を集めるため多少ピエロっぽく(≒ウケ狙い)演じることがあるので、「著作を読んで、その人の言論について判断する」が私のポリシーです。
1冊だけ読むことがないよう、可能な限り現存する本はローラー作戦のごとく読みます。(出版された年によっては主張が変わってたり、逆に全く変わってない箇所を比較できたりするので)
言論人のなかにはTwitterで暴れてる方もいらっしゃいますが、それでもその人の本を読むよう努めてます。

本を読み終えたことを感想とともにTwitterにあげると、フォロワーの1割くらいのいいねはつくので、ほどほどにウケがいいのかなと思い、本日のnoteでは読書ノートを書いていこうと思います。
※本の要約みたいなかんじにはしない予定です。noteでそんなことしちゃうと本が売れなくなっちゃうので…

長々と前置きしてしまいましたが、第一回目の読書ノートで取り上げる本は〜(ドラムロール)


上念司さんの『日本分断計画Ⅱ』です!

本書のざっくりとした内容

本書はロシア・ウクライナ情勢で蔓延った陰謀論(非常にロシアよりにバイアスがかかった言論)や権威主義体制国家としてロシア・中国の情勢、極右極左政党が台頭しつつあるヨーロッパ情勢などを取り上げつつ、「分断工作」について警鐘を鳴らしています。
最終章には安倍元総理の暗殺の件にも触れ、マスコミの報道の在り方や自民党含む日本の国政政党についても、上念さんの視点で分析されています。

さてここからは、本書を読んで個人的に気になった点を書いていこうと思います。

陰謀論者は果たして「勉強しない人」なのか?

本書では、陰謀論と知識のアップデートに関係があると述べており、「知識のアップデートができない人ほど陰謀論に陥りやすい」と述べております。
これに関して、私は「No」の立場を取りたいと思います。

陰謀論と聞き、皆さんが思い浮かべるものはなんでしょうか?
アメリカ大統領選挙、コロナワクチン、ロシア、ユダヤ、etc…実に様々あると思います。これらの陰謀論に陥ってる人にはある共通点があります。それは、「積極的に勉強した結果、陰謀論に陥ってる」です。

彼らは愚直にメディアリテラシーを行使しています。
マスコミの情報を鵜呑みにしない→ネットを含む様々な媒体で情報を多角的に分析→結果陰謀論にハマる
「知識のアップデートができない人ほど陰謀論に陥りやすい」ではなく「知識のアップデートをした結果、陰謀論に陥ってる」が現状の陰謀論界隈で起きている現象です。
勉強すればするほど、陰謀論の渦にハマりどんどんドツボにハマってる様子なのは、陰謀論を吹聴してる素人を見ればなんとなくでも把握できると思います。

そもそも「金正恩死亡説」という陰謀論に乗っかってしまい、吹聴してしまったのは、紛れもない上念司さんです。
※訂正動画は出されています。

上念さんは個人のYouTubeや本を見る限り、多方の方面で勉強されております。しかし積極的に勉強した結果、S原J一郎氏というヤバい教材をつかまされて、結果「金正恩死亡説」という陰謀論を吹聴してしまった過去があります。
もし仮に「知識のアップデートができない人ほど陰謀論に陥りやすい」という上念さんの説をとると、「金正恩死亡説」に乗っかってしまった上念さん自身が知識のアップデートができない人となってしまい、言論人として致命的な欠陥になりかねません。

陰謀論にハマってしまう人のもう一つの特徴として、「やたら布教したがる」があります。

「これを見て勉強しろ!」(YouTubeのリンクをペタっと)

彼らの決まり文句のようになりつつあります。

この「布教したがり」は一体どこから来るのでしょうか?
使命感だと答える人がいますが、私は違う説を提唱したいと思います。

勉強して知識を得た高揚感を抑えられないor抑え方がわからない

です。

私も似たような経験があります。
幼稚園で読んだ図鑑で得た知識を一生懸命、親に説明したことを。
学校で漢字を習い、それまでひらがなで書いてた箇所が漢字で書けるようになって、大人の階段を登ったと一人で興奮したことを。
博物館に連れてってもらい、目を輝かせながら、行く前に読んだ本の知識を総動員して親や祖父母に一生懸命に説明したことを。
メンデルの法則を知り、三毛猫はほぼ全部メスなのをちゃんと説明できたときの興奮を。
英語の長文を音読して、まるで自分が外国人になりきってるかのように錯覚して楽しかったことを。
より抽象度が高い数学の問題を解けたとき、どんなゲームをクリアした時よりもジャンキーな達成感を得られたことを。

陰謀論に陥ってる人も一緒です。
勉強はどんな麻薬よりもジャンキーな高揚感をもたらします。
ただ、そのジャンキーな高揚感を抑えられないorどのように抑えるべきかその対処方法を知らないだけです。
学生の頃なんかは定期テストや模擬試験などで度々打ちのめされる機会はありますが、大人になったらそんな機会は訪れません。

「金正恩死亡説」を唱えた上念さんも同様だと思います。
S原J一郎氏というヤバい教材で勉強して新たな知識を獲得した結果、その高揚感も相まって、虎ノ門ニュースでしゃべってしまったと。
言論人ですらこうですから、勉強の副産物であるこのジャンキーさに対して気をつけないと、私たち一般人でも陰謀論者になってしまう可能性が十分にあります。

そんなジャンキーさをなくす特効薬のようなものは存在しないと思ってます。しかし、ちょっとした意識で抑えることは可能かと思います。

それは「私の頭でもわかることしか言ってないor書いてないのでは?」と自分の頭の中で問いかけ続けることです。

「わかりやすい」と「わかることしか言ってないor書いてない」はウユニ塩湖とウンコぐらい違います。
私の頭でも理解できるってことは何かを端折ってるのでは?多少強引な論理展開をしてるのでは?と自問することで、ジャンキーな高揚感を少しでも抑え、高揚感によって陰謀論へ突き進む可能性を少しでも減らすことができるのではないかと思います。

陰謀論といえば「ペガサスが見えてる」という言葉あります。

極めて有名な画像(画像は拾い物)

陰謀論の荒唐無稽さを表すための画像で、書いてないことor言ってないことを叫んでる人に向かって「ペガサスが見えてる」と揶揄する様が度々見られます。
しかし、私は最近そうは思わなくなりました。

何故なら、私たちが日々社会の中で行使するコミュ力こそ、このペガサスを見る力他ならないからです。

人の感情や個性など、面に表れてない事象を考慮し、「この人はAだと言ってるけど、本当はBのことだろうな」と言ってないことを読み取るのがコミュ力の側面だと思います。
そして画像の「洞察」や「知恵」のような論理展開を実生活で行うとしばしば、冷たい人もしくはコミュ障、アスペという評価を受けてしまいます。

コミュニケーション能力至上主義の現代社会において、書いてあることを書いてある通りにしか解釈しない読解力や与えられた情報だけで事実関係をつなげる論理的な思考というものは、非常に相性が悪いです。そしてこれらの能力はコミュ力と相反する能力でもあります。
(数学のx軸y軸のグラフのように縦軸横軸を用意して、コミュ力○読解力○、コミュ力✖️どっか力○、コミュ力○読解力✖️、コミュ力✖️読解力✖️のような分け方の方がいいと思います。)

そして読解力をはじめとする能力は、自転車のように一回身につけたらずっと備わってる能力ではなく、楽器の練習のように毎日メンテナンスを行わないと一瞬で錆び付いてしまうものです。

そうした現状を踏まえると、陰謀論者を「ペガサス見えてるwww」と揶揄する気にはならず、「コミュ力でものを見てるんだろうな」という気持ちになります。

陰謀論に陥ってる方々を「知識のアップデートができてない人」と断罪するのではなく、こうした様々な要素が孕んでいることを踏まえるのが重要だと思います。

「分断」という言葉は私たちの社会性のハードルを下げてしまった

本書の『日本分断計画Ⅱ』は前作の『日本分断計画』の続編として描かれました。
このシリーズの大きなコンセプトは「情報戦/ハイブリット戦争が叫ばれる現代、陰謀論を使った分断工作があるので読者の皆さん気をつけましょう」という読者の自衛を促すものだと私は思います。
決して分断を促す異分子を叩き出せという攻撃を促すものではありません。

しかし、「保守分断を促す不届きものはこいつだ!」と敵を見つけTwitter上で批判したりぐちぐちと文句を言ってる人が散見されます。

そもそも保守もリベラルも一致団結するのは不可能というのが私の意見です。そんなに「団結しなければならない」と思うのであれば、大政翼賛会でも作る気なのかと。

私たちは安倍政権の約8年間に慣れ過ぎてしまったと思います。
この8年間で右派はあまりにも団結し過ぎてしまい、自分の意見や立場と少しでも違う相手を見ると「分断」だと感じてしまう、極めて社会性が乏しい人間を作り出してしまいました。
どこを見渡しても、自分と同じ意見で囲まれたいという自己中心的な思考の発露が「分断を煽るな!」の一言で片付いてしまう結果となりました。

こうした「弱さ」を抱える人たちに情報戦というのは非常によく効きます。簡単に動揺してしまうので。そうした情報戦に踊らされないように自衛・防御するために『日本分断計画』シリーズはあります。読み方を間違えてはいけません。

安倍元総理の国葬が先日執り行われました。
様々な意見はありますが、国葬という名の「卒業式」が行われた以上、安倍政権の約8年間、「どんなにマスコミや左派が騒いでも選挙では馬鹿勝ちする自民党」であった約8年間は特殊な状況だったと理解し、その感覚から卒業しなければいけません。
留年生で溢れかえるTwitterを横目に、私たちは一人一人やるべきことをやりましょう。

最後に

例のあの漫画より

こんな風に感じとってしまった人がいるかもしれません。
なので最後に言っておきます。
もしアンチなのか?と思ったそこのあなた。
コミュ力で文章を読まないでください。
一言も非難するような文章は書いてないので、落ち着いて読んでください。

私自身、高校生の頃チャンネルくららで上念さんの「経済ニュース最前線」を見てリフレ派というものを知り、大学生の頃に『経済で読み解く大東亜戦争』を読んで保守的な思想が確立した上念さんのファンの一人です。
ですが、昨今の「百田尚樹被害者の会」的なポジションで持ち上げられている状況にもどかしさを感じています。上念さんのYouTubeに群がってる人の中には虎ノ門ニュース・ニュース女子降板劇から見るようになった人も多いようで、著作をちゃんと読んでる人が本当にいるのかと疑問に思う時が度々あるので…

あわせて読みたい

『日本分断計画』
今回読んだ本の前作となるもの。
本書では実名付きでアメリカ大統領選で陰謀論を唱えた言論人が多数出てきますが、これが良くなかったと今では思います…
当時は笑って読んでましたが、変に「限界保守を攻撃していい免罪符」的な力を与えてしまったのではと思います。

『デフレと円高の何が「悪」か』
経済評論家としての上念さんの傑作だと思います。
当時は民主党政権下でしたが、一貫してるなと。
デフレ脱却のための基礎知識が書かれており、参考文献もリフレ派の方々が目白押しなので参考文献から遡る方法でかなりリフレ派について勉強になるかと。
ただ上念さんの本全体の特徴ですが、読者を知識レベルを信用してないのか、論理の飛躍や暴論がちらほら…
もうちょっと丁寧に詰めても読者は理解できますよ。

『経済で読み解く大東亜戦争』
『経済で読み解く日本史』に現在は改訂されています。
私が「好きな歴史上の人物は?」と聞かれたら、迷わず高橋是清と答えるきっかけになった本です。

『ウェストファリア体制 天才グロティウスに学ぶ「人殺し」と平和の法』
『日本分断計画Ⅱ』でウエストファリア体制について書かれているが、「あれ?違う意味で使ってる?」と思ったので。
軽快な文章で書いてありますが、内容は重厚です。非常に面白いです。

『日常は情報戦』
政治系YouTuberのKAZUYAさんが出したF社の新作。
KAZUYAさんのYouTube活動の歴史と共に昨今の陰謀論などを振り返る作品。サクッと読める作品で、読書慣れしてる人は1時間ちょっとで読めます。

そのほかリクエストありましたらぜひ。
今日はこの辺で。

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