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【詩】 『男顔』

 

サッと浴びたシャワーの
水滴を軽く手で払って
髪の毛にきゅっと
タオルターバンを巻いたら
ちょっとつり目な私の顔は
気合いの入った男顔に変身する

 
平行太眉に整えた眉毛が色濃く
艶っと凛々しく光るから
眉間に力を入れて
更なる男顔に近づくように全力を尽くす

 
お風呂から上がったら
一刻も早く化粧水を付けないといけないのに
手の先から足の先まで全身念入りにボディクリームを塗りたくる勝負の時間なのに…

 
「いつもの女心は完全にお留守だね」

 
鏡の中の男が話し掛けてくる

 
タオルターバンが解けて床にパサッ
穏やかな目付きに変わったその男を
まじまじと見つめた

 
「服着なくて寒くない?」

 
からだに張りついていた水滴は
もうとっくにどっかに行っていて
手足が冷え始めている

私のこと一番よく知っているあなた

促すようにそっと服を着せてくれた

 
ほんの一瞬だけ表情がほぐれて
柔らかな女心がチラつき始めるも
何故だか今日は 男心が勝る日だ!

 
両手で濡れ髪をサイドにオールバック

眉間にしわ寄せて 睨み倒す
 

私の男心がウォーって叫んでいる

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