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ハワイで出会ったブルガリア人の話 1


今年の春、ハワイに旅をしていた。
学期と学期の間の一週間。今の大学は春休みがびっくりするほど短くて、本当はもう少し時間をとって色々な島に行きたかったのだけれど、一週間しか滞在できなかったから、火山がある一番大きい島に行ってきた。

飛行機を降りてから宿に着くまでにも書きたいことがあるのだけど、それは後日にして、今日は滞在二日目の話をしたいと思う。

滞在二日目、私はある女の人と過ごしていた。
彼女はブルガリア人らしく、半年ほどをハワイで過ごしているのだという。
「ここ6年来てなかったんだよねー」と快活に笑う彼女は、なるほど、確かにハワイの環境に合っているように思えた。

彼女と出会ったのは、海へと向かう道路だった。
歩いていた私を、車で来ていた彼女が拾ったのだ。海まで徒歩で30分ほどのところだった。

「乗っていく? 」
それまで一時間以上歩いていた私は、彼女の言葉に甘えて車に同乗した。
海に着くまでの間、彼女の国の話と、私がどうして一人でハワイに来たのかについて話していた。

海に着いた。
彼女は「何かあったら、海にいるから」と告げて、海に入っていった。
私は水着を持ってきていなかったので、海の周りを散策した。
温泉を見つけて、幾枚か写真を撮った。

彼女と別れた場所に戻ると、彼女がちょうど海から上がってきたところだった。どうやら、日焼け止めを塗り直しに来たらしい。

「海に入らないの?」と尋ねられたので、「水着ない」と答えると、彼女は珍妙なものを見るような目で私を見た。
「ハワイに来たのに、水着持ってきてないの? 」

「なんだこいつ」と思っただろう。ハワイに旅行する理由なんて、ほとんどが海遊びだろうに、私は何も持ってきていないのだから。私だって「どうやったら水着を忘れるんだよ」と思った。荷造りをしたのが前日の夜だったので、すっかり忘れていた。

「しょうがないから、濡れてもいい服貸してあげる」
彼女はそう言って、私に服を貸してくれた。
車の影でこっそり着替えて、彼女と一緒に日焼け止めを塗って(日焼け止めも忘れてた)、一緒に海に行った。

海は怖かった。
一応泳げるのだけど、足がつかないところだと怖くて仕方がなくて、どんどん先に行く彼女の背中をぼんやりと眺めながら、足がつく浅瀬でユラユラとしていた。
途中、日向ぼっこをしている人に並んで、岩の上で日向ぼっこをしながら海で遊んでいる人たちを見ていたら、彼女が戻ってきた。

「ちょっと別のところ行くけれどどうする? 」
別に海にとどまる理由もなかったので、私は再び彼女の車に乗った。

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