【雑記】捨ててみた

断捨離を決行した。
服を30着、本を80冊。


私は荷物が少ない方だと思っていたが、どんどん出てくる。

それだけ捨てても、まだ服なんて150着位ある。 本だって半分も減っていない。
大好きな作家のシリーズ本を捨てた。 それだけで100冊近くの塊だ。

一冊一冊手に取りながら、夢中で集めたあの頃を思い出す。 

その作家にハマったのは社会人になってからであったため、 それほどお金がなかった訳ではない。
だが、なんといっても数が多かった。

 300冊以上既刊本があり、初期作品から追いかけるのが楽しくもあり必死でもあった。

 文字通り、寝るのも惜しいくらい読み耽った。

それらは文庫本なのに1000円近い値段で売られていた。 

そのため、古本での入手を何度も行った。
古本でも安くは無く、500円位した。 

値崩れしないのがその人気の高さを伺わせて、読めば読むほどハマっていった。 

そんな本を、手放した。


かれこれ5年以上読み直していなかったし、 シリーズの時系列は内容が頭に入っている。

 後続のシリーズとの相関図も、ファンサイトでこれでもかというくらい分析されていて、 文章の詩的な美しさを眺める以外に読み直す理由を、私はほとんど見失っていた。

せめて何か記録を残したい。

 罪悪感と寂寥に支配され、決心が揺らぎそうになった私は

最善の弔いとして、読書を記録するアプリをインストールした。

 バーコードを読み取ると自分の仮想本棚に表紙が並ぶ。

 感想や評価を書き込めるバーチャルな空間。 

これでいいじゃないか。
思い出は、形を持たない方が自由だ。

この本と心のつながりは、自分の中にしか存在しないものであり、 そしてそれが、読書で得られる最大の価値だと思う。

私は、 仮想の本棚に、在りし日の苦悩や喜びをともに過ごし乗り越えてきた本を、 綺麗に並べ直すことにした。 


それは、棺を花で埋めつくす時の心境に似ていた。




~~エピローグ~~ 

そうして見晴らしが少しだけ良くなった我が家のリビングでは、

こざっぱりした本棚が、

お風呂上りの夕方のような涼し気な顔で私の方を眺めている。 

どうやら彼は凝りもせず、新しい物語の登場を心待ちにしているようだ。やれやれ。

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