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風と夜

 初めて完結させることのできた文です、文法などがむちゃくちゃで物語として成立してるかも怪しいレベルですが評価をいただけると幸いです。



 深夜、ただ意味もなく街を徘徊する癖がついた。
 初めは友達と一緒にやっているオンラインゲームに疲れたとき、気分転換にと少し外に出ただけだった。特に引きこもっているわけどもなく普通の学生として生活をしている俺にはとても新鮮だった。それ以降夜中にこっそり家をでて深夜の街を徘徊することが増えた。
 夜中の街は普段の街とは全く違う看板の電気すら消えている店、犬も吠えない車も通らない。聞こえてくるのは木の葉が擦れる音と自動販売機から出ている冷却音くらいだ。
 ゲームの世界のダンジョンにでも迷い込んだのかと錯覚するくらいこの雰囲気は昼とは違う。
 この時間を味わいながら朝を迎える街を見てみたいがために俺の生活は21時に寝て3時に起きるといった就寝時間にかんしては小学生低学年のようになっている。
 昼夜逆転はしていない健康優良児のつもりだ。
 極端かもしれないが生活のリズムが整い始め高校の授業も集中して受けるようになったからか成績も右肩上りになっている。
 学校では楽しく友だちと過ごす『動』の時間、真夜中には『静』の時間この2つの時間を行き来することにハマっている。
 そんな時間にも飽きが来る学校での時間には騒がしさに疲れを感じ、夜中には孤独を感じる。
 深夜3時の公園横の自動販売機で炭酸を片手につぶやく
 「矛盾……してるな」
 その時風が吹いた、首筋を駆けていく鋭い風が。
 台風が来るんだっけ、天気予報を見ようとスマホを取り出す。
「ねえ、君何をしているの?こんな時間に」
 女の人の声だった、警察に捕まってしまったと思い心臓をバクバクさせながら振り返る。
 そこには、少女がいた。暗くて顔をはっきりとみれない。
真夜中とは正反対を感じさせるような真っ白なワンピースの上にそれを隠すかのように丈の長い真っ黒なカーディガンを羽織っている。
 そういうファッションがあるのかもしれないが知識がない俺にはそう感じ取れた。
「ねえねえ、君聞こえてる?」
「あ、はい聞こえてます」
 人にいきなり話しかけられるなんて、それも深夜に。
「散歩をしてました」
「そう、もしかしたら私と同じ理由かもね」
 一体この人は何者なんだろう。
「誰だか気になる?」
「ええ」
 我ながら、ついさっきであった人と会話を成り立たせていることに驚きつつ答える
「教えてあげない、秘密のほうが楽しいでしょ」
 この人は秘密を楽しもうと俺に提案してきてる少なくとも俺はそう読み取った。
 そして真夜中の雰囲気に乗せられて俺はその提案を快諾した。
「俺若干この時間に飽きつつあるんですよね」
 名前も知らない今日出会ったばかりの人だから変なことを相談することができる。
 俺は矛盾した悩みを打ち明ける。
 そうすると少女は教えてくれる。
「それはまだこの『静』の時間の楽しさを分かりきってないからじゃないかな」
 そう言い俺に背を向けて歩き出した、ついてこいと言わんばかりのあるきに自然と俺の足は少女を追いかけていた。
「君、自分の家の周りから出てないでしょ」
 あるきながら少女は話す。
「昼より歩く範囲が狭くなってるってことよ」
「それは確かにありますね」
「でしょ、あと敬語やめてくれない? フラットに行こうよ」
 明らか年上に見えるんだけどな
「そうか、わかった」
 この夜の雰囲気にまかせて余計なことを考えるのをやめた。
「そうしろ、とりま喉乾いたその炭酸よこせ」
 急に荒ぶる口調、これが素なのだろうか。それとも普段抑え込んでいるこの少女のなりたいものなのだろうかおれにはいまいちわからないがこのキャラにのっかることにした。
 「いいか、この夜は誰も見ていない、見ていても昼のお前を知ってるやつはいない」
 俺からぶんどった炭酸を飲み一拍おいてから
「だから好きにすればいい、法に触れない範囲でな」
 そして、少女が足を止める。
「ついたぞ、ここが私の好きな場所だ」
 そこは普段俺が使っている通学路の橋だった、普段何気なく通り過ぎているこの橋は昼間は周りの店に押しつぶされるように存在している。
 しかし、この真夜中では自分がこの街の主役と言わんばかりに蛍光灯を照らしている。
「ぜんぜん違う…」
「だろ、だから私は夜が好きなんだ、ちょっと危ないところもあるけどな」
 光る電灯のもとで初めてちゃんと少女の顔を見た。
 とても整った顔立ちだった、ただ目立つような可愛さではなく。クラスにいたら「アイツかわいいんじゃね?」っとなるような可愛さといえばよいのだろうか。
 そんな俺の推測はよそに少女は話を続ける。
「私はこの夜で、新しいいつも通りをさがすのがすきなんだ、だからこの時間に飽きないでくれよ」
 また今度逢えたら一緒に新しいいつも通りを探しに行こうよ、そう言い残し少女は橋の反対へと歩いていった。
 そして強い風が吹いた。

 その日から俺は夜中の活動範囲を大きく広げた少女の会ったとき彼女が知らない場所に案内できるよう。
 少女には2週間に一回くらいのペースで会った。俺自身外に出ない日もあったからそれほど頻繁に会うことはなかった。
 ただ、会うたびに俺の飲み物を取られていく。そしてまだお互い名前を知らない。
 季節は冬になり深夜は凍えるほど寒くなった。
 少女も寒いのか会うたびに厚木になっている気がする、そして少女の服はどんどん夜に溶け込んでいってる気がする。

 別れの季節がやってきた、高校の卒業式在校生として出席し元生徒会長の話が始まる。
 瞬間会場がざわついた、所々から聞こえる「雰囲気変わってない?」「メガネ外してるよね」そんなざわめきとともに壇上にいる人物に目を向ける。
 そこには少女がいた。
 ざわめきとともに少女は話を終わらした。
 そして、卒業生退場のとき俺の真横を通り過ぎていく卒業生その中に居た少女と目が合った。少女は一旦立ち止まり耳元でささやく。
「今夜あの橋で」
 俺は混乱しながら帰宅し橋に行く準備だけして布団に入った。

 深夜3時空に雲が見えつついつ崩れるかわからない天気の中少女に『静』の時間について教えてもらった橋へ行く。
「来てくれたんだね」
 少女は真っ黒な服に身を包み右手には缶を持っていた。
「まさか同じ学校だったとは思わなかったです」
「私も先週体育館の近くであすれ違ったときに気づいた」
 少女は缶に口をつける、よく見るとそれはアルコールのようだ。
「私遠くのところに進学するの、だからもう君に会えるのは最後」
「それは、少し悲しいですね」
「ほんとに思っているの?」
 少女は、ほほえみながら問う。
「さあ、どうでしょう」
「まあ、いい」
 少女近づき持っていた缶を俺に渡す。
「やるよ、お前はそのままでいい、夜に飲み込まれるなよ」
 そう言うと少女は去っていく、俺は呼び止める事もしないし、できなかった。
 そして俺は缶に口をつける。
 中身はただの炭酸だった。

 強い夜風が首筋を駆けていった。

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