きみ、アルバイトをする暇があるなら小説を書きたまえ!15
「人気小説家の伊集院摩耶はオヤジごろしのロリフェイスだが誰にも知られちゃいけない秘密がある!」
摩耶先生には誰にも知られてはいけない秘密があった。
世界がひまわりで満たされる季節になると強く思い出す……ひとり、墓地に佇んでいた。知らない女性が声をかけた──摩耶ちゃん、どうしたの?
品の良さそうな顔立ちに高価そうな着物姿。それが「自分のママ」だと名乗った。
奥から恰幅の良い男性もやってきた。優しい笑顔だ。それが「自分のパパ」だと名乗った。
摩耶先生はこのとき、両親だと名乗る大人の男女から心配され大学病院へ連れていかれた。脳波の検査を受けた。どこにも異常は見当たらない──カーネルサンダースに良く似た髭の医師は「軽い熱中症で記憶が混乱していたのでしょう」涼しい場所でのんびりさせてあげなさいと病院から追い出した。
エアルは言った。躰は入れ物に過ぎないと。
いまの自分の躰は自分が選んだものであり、いまの自分の生活は自分が望んだものである。いまが苦しいと語る人間がいるが、それは嘘で実は「苦しい自分」をエンタメ化して楽しんでいる。つまり望んでその世界にいる。