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皆殺しのジャンゴ

Preparati la bara! / Viva Django / Django, Prepare a Coffin (1968)

 フェルディナンド・バルディ監督、テレンス・ヒル主演のマカロニウエスタン。記憶にあるかぎりでは、私が最初に見たマカロニウエスタン。中盤ではなく、ラストの墓場・棺桶・機関銃で覚えています。それもあってか、個人的にヒルは「風来坊」シリーズのトリニータや「ミスター・ノーボディ」のノーボディよりも、よりシリアスで翳のある本作のイメージのほうが強いです。漫画化もされた関根二郎氏の麻雀小説に「皆殺しの雀鬼」ってのがありました。

 主人公のキャラクターは、ヴィジュアルも含めて「続・荒野の用心棒」のオリジナル・ジャンゴ(フランコ・ネロ)にかなり寄せていますね。ヒル・ジャンゴは、通信士(ピヌッチオ・アルディア)相手に軽口を叩いたりして、ネロ・ジャンゴほどのハードさはないですが、髭面に青い瞳、インバネスコートと、意識的に似せています。本来はネロがキャスティングされる予定だったのが、米国映画に出演中だったため、風貌の似ているヒルが出演することになったとの説もあるようです。

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 今回改めて見ると、主人公が金の輸送中に強盗団に襲われて妻を殺され、自らも致命傷を受けるも後に回復し、刑吏となるまで流れがずいぶんラフだなあ、と思いました。撃たれて倒れたはずなのに、次のシーンでは何の説明もなく墓場に棺桶を埋めて、何の説明もなく5年経って通信士と会話してる感じ。また主人公は、ルーカス(ジョージ・イーストマン)が黒幕デビッド(ホルスト・フランク)と通じていることはともかく、何者なのかを知っているからこそ、こっそり私兵を集めていたんでしょうけども、それが上手く機能しなくて結局1人で片を付けたりと、シナリオのだらしなさが(マカロニとは言いながら)気にかかりました。むしろ冒頭の喧嘩のシーンとか、要らなくないですかねえ。

 それでも主人公が折々でみせるハードな復讐心と、そこはかとない狂気も感じさせるルーカスのあくどさ、最後には改心して我が身を投げ出すガルシア(ホセ・トーレス)らの人物描写は生きており、多少の脳内補完(マカロニだけに)で十分楽しめる作品であると思います。

 長身が印象的なルーカス役のジョージ・イーストマンは、本名がルイジ・モンテフィオーリというジェノバ出身のイタリア人で、ジョージ・ヒルトン主演のマカロニ「拳銃無頼」にもルーカスの役名で出演しています。後年には「猟奇!喰人鬼の島」などの低予算ホラー映画にも出演しており、ルー・クーパー名義で「アクエリアス」の脚本を書いたり、「恐怖の生体実験」を監督したりもしてましたよね。芸名は恐れ多くも、コダック社創業者と同じ。(と言うか、たぶん由来)

 こちらはニコラ・ディ・バリが歌う主題歌「You'd better smile」。


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