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西部悪人伝

Ehi amico... c'è Sabata. Hai chiuso ! (1969)

 リー・ヴァン・クリーフ主演、流れ者サバタが銀行強盗の黒幕を退治するマカロニウエスタン。監督はマカロニコンバット作「戦場のガンマン」のフランク・クレイマーことジャンフランコ・パロリーニ。ユル・ブリンナーがサバタを演じる「大西部無頼列伝」、リー・ヴァン/ペドロ・サンチェス/ニック・ジョーダンが再び共演する「西部決闘史」も撮っています。

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 マカロニのリー・ヴァンと言えば、このスリムなスーツスタイルですよね。ほんと、うっとりするぐらいかっこいい。多くの作品ではクールでニヒル、ときに冷酷な役どころのリー・ヴァンですが、本作では結構ニコニコ(ニヤニヤ?)しながらシビアに金銭要求を行う善人寄りのキャラクター。自ら「正義の味方だ」って言ってますからね。それでも独特の凄味は十二分に発揮されています。
 彼が使うピストルは、ウエスタン定番のコルト・シングルアクションアーミー(私なんかは年寄りですから、ピースメーカー、略してピーメという呼称のほうがしっくりきますが)ではなく、四銃身のペッパーボックス・ピストル……なのですが、グリップの底がパカッと開いて、さらに3発撃てる。(笑) ピーメより1発多いぞ! 当然秘密兵器的な架空銃です。

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 リー・ヴァンの仲間になるのが、南軍崩れの酔っぱらいサンチェスと、驚異の身体能力を誇る無言の先住民ジョーダン。この2人、もう少しキャラを煮詰められるのに残念ですね。個人的には、特にサンチェスの演技が愛嬌を通り越し、いちいち下品で鬱陶しいです。バド・スペンサーみたいな立ち位置を狙ったと思うのですが、小悪党を演じてもスペンサーは基本的に義理堅くて優しい大男キャラで、必要に応じて凄味も出せるし、何より下品にはならないですから。

 ライフルを仕込んだバンジョーが武器の仇敵(その名もバンジョー)を演ずるのはウィリアム・バーガー。「血斗のジャンゴ」「野獣暁に死す」「ケオマ・ザ・リベンジャー」等々に出演するマカロニ常連ですが、これもキャラクターの掘り下げが浅くて損してると思います。バーガー自身はかっこいいのに、そのチリチリうるせえ鈴は何なんよ。

 バーガーの恋人役には「血斗のジャンゴ 」「続・復讐のガンマン 〜走れ、男、走れ〜 」のリンダ・ヴェラス。出演本数は多くなく、1971年以降は引退してしまっているようですが、アメリカナイズされたコケティッシュな美貌は本作でも印象的。入浴シーンでちょっと乳首見えてますかね。悪の親玉を演じるフランコ・レッセルは、手塚治虫のマンガにでも出てきそうな、貴族然としたイヤったらしさ全開で実にいいです。

 バーガー以前にも、レッセルは刺客を2人雇って差し向けてきます。この人たちも深掘りが効いてなくてもったいない。凄腕ガンマンのヒステリックなカーチャンなんか、もう少し見せ場があってもいいキャラだと思うんですけどねえ。

 主題歌は有名ですが、スリリングなオープニング・シーンにまったく合ってないですね。緊張した場面で入るびよよ~~~んという音もまったく逆効果。

 ほかにも7という数字を使い切れていないとか、旬をとっくに過ぎた時期のマカロニ作品としての工夫以前の、そもそも映画としてダメなところが目立ちますが、ラストは気に入っています。リー・ヴァンが好きならば見ておきたい1本でしょう。ヴェラスのファンはもちろんマスト。

 ちなみに、私が持ってるDVDは韓国のMin Production版だったのですが、日本語字幕に誤訳や人名の不統一、不自然な言い回しがとても多いです。「?」と思うたびに巻き戻して英語音声を再確認しなければなりませんでした。国内盤を新たに買うとしましょう。

1985年、リー・ヴァンを起用したサントリーのCM。
かっこいいなあ……。

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