見出し画像

パソ・ブラボーの流れ者

Uno Straniero a Paso Bravo (1968)

 ピエトロ・ジェルミ監督の名作「鉄道員」で助監督を務めたサルヴァトーレ・ロッソ監督、アンソニー・ステファン主演のマカロニウエスタン。
 共演はマカロニ常連のエドゥアルド・ファヤルド、ホセ・カルヴォ。妻子を陰謀により殺された男の復讐譚になります。
 アントニオ・マルゲリーティ監督・クラウス・キンスキー主演の異色マカロニ「そして、神はカインに語った」(1970)は本作のリメイクです。

画像1

 ステファンは作品によって出来・不出来の差がある俳優だと思いますが、本作はどちらかと言えば不出来。本当は凄腕なのになぜか銃を持っていないもんだから、町を牛耳るボス(ファヤルド)の手下どもにいいようにされてしまい、酒場の女(アドリアーナ・アンベシ)にも軽蔑されます。復讐に燃える男の陰や凄味はまるでなく、はっきり言ってただの腰抜けにしか見えません。その割に女性に対しては妙に積極的なのがムカつく。(笑)

 そんなステファンも、殺された妻の妹(本作を最後に引退したジュリア・ルビーニ)をかばって6人の荒くれどもを瞬殺してからは、本人も周囲(観客含む)の見る目も変わります。せっかく人質にしたボスの息子を酒場の用心棒が殺してしまい、用心棒もなぶり殺され、そこで痛み分けとならないのがマカロニマジック。主人公+保安官+町の有志でボス宅に殴り込みます。

 筋運びにだれはないですし、クライマックスのかっこよさも十分、日本では劇場公開はおろか、TVでも未放映ですが、なかなかの作品だと思います。いっぽう、主人公の復讐の原因となった事件の真相について、あちらこちらで思わせぶりな台詞が飛び交うだけであまり詳しく明かされません。三兄弟や義妹の亭主、もしかすると町長も関わっていたっぽいのですが。主人公が銃を持たない理由(酒を飲まない理由はわかりますが)や、ボスの片足が不自由なのも事件に関係しているのかと思いきや、全然説明されません。脚本の詰めの甘さですね。

 ステファンの薄い演技は周囲が大いに助けていますし、傾向が異なるアンベシとルビーニの美貌が楽しめます。見ておいて損はないかと。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?