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皆殺し無頼

Johnny Yuma (1966)

 「二匹の流れ星」のロモロ・グェッリエリ監督、マーク・ダモン主演のマカロニウエスタン映画。シカゴ出身のダモンは1970年代半ばからプロデューサー業に転向し、古くはミッキー・ローク主演の「ナインハーフ」やシャーリーズ・セロン主演の「モンスター」、最近では「ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実」を制作しています。「続・荒野の用心棒」の主演は、当初フランコ・ネロではなく、セルジオ・コルブッチ監督の「リンゴ・キッド」に主演したダモンが候補に挙がっていました。

 共演は「南から来た用心棒」のロザルバ・ネリ、米国のTV俳優ローレンス・ドブキン、イタリアのTV俳優ルイジ・ヴァヌッキほか。ダモン以外は、あまり他のマカロニウエスタンで見ることの少ない面々です。強欲に走る美悪女ネリは印象に残りますが、ニエヴェス・ナヴァロやヘルガ・リーネに比べるとやはり少ーしアクが足りない。美人さんなんですけどねえ。ネリは、本作の脚本を担当したフェルナンド・ディ・レオが監督したクラウス・キンスキー主演作「スローター・ホテル」にも出演していました。

 ダモン演じる主人公を含め、登場人物のキャラはさらっと軽い反面、かなり几帳面に演出されており、グェッリエリ監督のカラーなんだろうなあと思います。押しかけ舎弟(フィデル・ゴンザレス)やペペ少年なんかも、もっとキャラ掘りしてもいいのになと思うんですが、そうするとネリとヴァヌッキのあくどさ、ドブキンのかっこよさも強調しないとバランスがとれなくなる。監督としてはあくまで、本作のキャラクターバランスでよしとしたのでしょう。

 なので、女子供にも容赦しない暴力シーンもありますけど、割と全体の雰囲気はカラッとしていて、良くも悪くもマカロニらしくない。マカロニ名物の身バレ → リンチも、さくっと形勢逆転してスマートにかっこよくまとめています。

 ダモンとドブキンのガンさばきもシャープでかっこいいですね。酒場の乱闘で意気投合したダモン(左利き)とドブキン(右利き)がガンベルトを交換するのはちょっと意味不明でしたが。(笑) クライマックスのガンファイトでは、不意撃ちやフェイクを盛り込んだ非正統派の遊びが、この時期のマカロニには珍しくも盛り込まれています。ラストはダモンがヴァヌッキを、ドブキンがネリを倒しますが、そのコントラストもかっこいい。ゴンザレスに「さすがはキャラダインさん(ドブキン)だぜ」と言わせるのも締めとしてすっきりしており、好印象です。

 マカロニウエスタン正統でもなく、ハリウッドウエスタンを指向しているでもない作風は、悪く言えば中途半端ですが、すっきりと洗練された味わいのウエスタンです。映画そのものよりも、主題歌のほうに人気があるかもしれません。本作の主題歌については、以下の記事に書きましたので、よろしければどうぞ。


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