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【日本シリーズ直前企画】オリックス・バファローズについてちょっと語らせてくれないか

1.こんな「秋」が来ようとは

 すっかり秋というか、最近はほとんど冬ですね。キワタです。

 古くより「秋」という単語には、いろいろな修飾がつくものです。「実りの秋」、「食欲の秋」、「スポーツの秋」……日本はたくさんの「秋」で溢れています。 

 私にとっての「秋」といえば、やはり音楽を嗜むので、「芸術の秋」でしょうか。はたまた物書きの端くれを名乗っておりますので、「読書の秋」でしょうか。なんてことを書いておりましたら、今年はなんと、予想もつかない「秋」がやって参りました。


 そうです、「日本シリーズの秋」です。


 かねてより申しておりますが、私は10年来のオリックス・バファローズファンでございます。オリックス・バファローズといえば、プロ野球12球団の中で、最も日本シリーズから遠ざかっていることでおなじみの弱小球団。過去5年の順位の推移を書くと、6位、4位、4位、6位、6位と、書いていて涙が出てくるような低迷ぶり……。

 毎年この季節は、「秋季キャンプの秋」として、来年ブレイクしそうな若手をのんびりチェックする時期……それが普通の「秋」だったのです。

 それがなんということでしょう。まさに「劇的!ビフォーアフター」のごとく、中嶋新監督の下、今年はセ・パ交流戦の優勝など、ここ数年の低迷が嘘のような絶好調。千葉ロッテマリーンズとのデッドヒートを制し、25年ぶりのリーグ優勝を果たしたのです。

 続くクライマックスシリーズでも、2位のマリーンズを相手に、2勝1分けと負けなし。見事に日本シリーズへとコマを進めました。

※「クライマックスシリーズ」:シーズン終了後に行われる、1位~3位チームによるトーナメント戦。勝ち抜くと日本シリーズに進出できる。2ステージ時代のJリーグにおける「チャンピオンシップ」に近しい。

 

 特に最終戦は、9回のT-岡田選手のヒットを皮切りに、送りバントと見せかけた安達選手が強襲でヒット。続く小田選手が、今度こそ送りバントと見せかけて再度強襲。これが日本シリーズ進出を決める、タイムリーツーベースとなりました。低迷期を知る男たちによる同点劇は、まさに今年のプロ野球を象徴する、名シーンと呼んでも過言ではないでしょう。

 そこで今回は、「旅をサッカーをめぐるWebマガジン」で恐縮ではございますが、「これから始まる日本シリーズを観戦したくなるような、オリックス・バファローズの魅力」について、3点ほど書きたいと思います。

 

 かつては「ファンが6人しかいない」などと揶揄されたバファローズも、今では昔の話。20日に開幕する日本シリーズを前に、これを読んだ皆さんが「バファローズを応援してみよう!」と思って頂ければ幸いです。



2.魅力その①:応援歌がかっこいい!

 のっけから野球の話ではなく恐縮ですが、オリックスの「歌」がすごいという話です。

 私は小学校の頃から野球は大好きですが、本格的に野球をプレーしたことはありません。そのため、技術的なことはまったく分かりません。

 そんな私がなぜバファローズの試合を楽しめているか。その理由のひとつは「外野席で応援歌を歌うのが楽しい」のです。(これはひとえに、「サッカー未経験者でもゴール裏で歌うのが楽しい」という状態に似ています。)


 「応援歌を歌うだけなら、別にバファローズじゃなくてもいいじゃないか。」そんな声が聞こえてきそうですが、違うのです。

 

 バファローズの応援歌は「テクニカルが過ぎる」のです。

 そしてそれが、音楽をかじっていた身としては「ぐっとくる」のです。


 例を挙げてみます。まずは一般的な野球の応援歌を聴いてみましょう。

 まずは日本を代表する名選手、巨人・坂本選手の応援歌がこちらです。

オオオ…オー燃えろ (坂本!)
誰よりも強く勇ましく オオオオオオ
お前が立つその場所は 熱気の渦が巻く
坂本! 炎となれ

 

 続いて、先日メジャーリーグ挑戦を発表した、日本代表の4番も務める、広島・鈴木選手の応援歌がこちらです。

誠の道進み チームに流れを呼べ
荒川から架けろ 夢の赤い橋
「かっとばせ!誠也!」

 このように、野球における一般的な応援歌の長さは、おおむね8小節、長くても16小節程度が相場です。

 

 それでは、これを踏まえて、バファローズの応援歌を聴いてみましょう。

 今年はセカンドとして活躍、頼れるベテラン、安達了一選手の応援歌です。

【Aメロ】
猛(たけ)れ雄々(おお)しく行け 本能の侭(まま)に
気魄(きはく)出してここで今見せろ 力振り絞れ
(かっ飛ばせ 安達)

【ブリッジ】
我武者羅(がむしゃら)に喰(く)らいつけ

【Bメロ】
上州(じょうしゅう)男が 張(は)っ飛ばす! 了一!了一!
張(は)っ飛ばせ! それ! 張(は)っ飛ばせ!

 「Bメロ」。野球の応援歌にあるまじき事態です。

 歌詞に振られたルビの数々、トランペットが裏メロになる予測不能なメロディ、個性的な合いの手のタイミング。まさに「初見殺し」です。


 続いて、沖縄出身、内外野をこなすユーティリティプレーヤー、大城滉二選手の応援歌を聴いてみましょう。

【ファンファーレ】
君よ輝けとただ願う この想い いつまでも
この詩(うた)に乗せて
【前奏】
ハイヤーサーサー ×3
【本編】
逞(たくま)しく咲き誇る サンタンカの花の様(よ)に
強く 熱く 気概(きがい)を以(も)ち
行(ゆ)けよ 凛々しき強者(ハバチューバー)

 メロディが……琉球音階……!

※琉球音階:沖縄県、鹿児島県奄美地方の音楽でよくみられる、レとラを除いたド・ミ・ファ・ソ・シ・ドの5音で構成される音階。「ハイサイおじさん」などで使用されている。

 いくら大城選手が沖縄出身だからとはいえ! いくらバファローズの本拠地、京セラドームの最寄り駅である大正駅の周辺に、沖縄からの移住者が多いとはいえ! 応援歌にここまで「沖縄」の要素を組み込むことに成功したチームが、他にあるでしょうか。「凛々しき勇者」と書いて「ハバチューバ―」などと、初見で誰が読めるでしょうか(もちろん誉め言葉です)。


 さらに進めましょう。高校時代「上州のイチロー」として名を馳せた、俊足と守備範囲の広さが売りの外野手、後藤駿太選手の応援歌です。

 まずは歌詞を見てみましょう。

【前奏】行け! 走れ! Go!駿太
【本編】容赦なく切り貫(ぬ)け 迫る敵を薙(な)ぎ掃(はら)え
上野(こうずけ)の駿馬(はやうま)よ 走り続けろ

 読み慣れない漢字はありますが、比較的シンプルな歌詞ですね。これなら初見でも覚えられそうです。

 それでは、実際の曲を聴いてみましょう。

 2周目から……転調している……!

 同じ歌詞を繰り返しているのに、2周目からメロディが微妙に変わっているのです……!

 まさか野球の応援で「音感」が問われる日が来るとは、誰が予想したでしょうか。そして驚くべきことに、鍛えられたバファローズファンは普通に歌いこなしています。応援歌がファンの音感を育てました。なんというチームでしょうか。

 

 そうなのです。バファローズの応援歌の魅力はまさに、その「音楽性の高さ」なのです。

 それもそのはず、バファローズの私設応援団のひとつである「大阪紅牛會」。この応援団は、バンドとしても活動しているのです。応援歌をバンドアレンジしてみんなで歌うだなんて、なんて楽しそうなのでしょうか。(いつか私もやってみたいものです!)

 私が大阪で日頃利用している音楽スタジオにも、しっかりとライブ告知のフライヤーが貼られていました。そして現在では、球場で流される応援歌の音源作成まで、団長の谷口さん自らがDTMで手掛けているのです。

※DTM:DeskTop Musicの略。パソコンを用いた音楽制作のこと。

 まさに「音楽と好きなクラブの融合」という、私の理想を地で行っている姿が、バファローズの応援なのです。

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(写真:大阪紅牛會のライブ告知フライヤー、Studio 246 Jusoで撮影)


 その他、「チャンスの時に倍の長さになる福田周平選手の応援歌」「私でさえ覚えきれていない吉田正尚選手の応援歌(チャンスバージョン)」「2番はおろか3番まで存在するチャンステーマ」など、紹介したい応援歌は沢山あるのですが、紙面が尽きてしまうのでこのあたりにしておきます。

 残念ながら今は球場で歌うことはできませんが、日本シリーズでも、バファローズのホームで開催される試合では、スピーカーから応援歌が流れます。試合観戦の際はぜひ歌詞カードを片手に、お家で一緒に歌ってみてはいかがでしょうか。

 https://www.buffaloes.co.jp/team/playerssong.html



3.魅力その②:バファローズは「守備」で魅せる!

 「野球の華はホームラン」と言われるように、一般的に野球において盛り上がるシーンは、攻撃時に多くみられるものです。ピンチを切り抜け、失点を抑えることも重要ですが、やはり勝つためにはチャンスをものにし、点を取らねばならぬのです。勝ちに直結するシーンこそ盛り上がるというのは、ある意味必然なのかもしれません。

 しかしここではあえて、バファローズの選手の守備の魅力を語ります。

 ここより先の内容は、旅とサッカーを紡ぐWeb雑誌「OWL magazine」購読者向けの有料コンテンツとなります。月額700円(税込)で、2019年2月以降のバックナンバーも含め、基本的に全ての記事が読み放題でお楽しみ頂けます。ご興味のある方は、ぜひ購読頂ければ幸いです。

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