お一人暮らしの葛藤…
この仕事をしていると、つい先日まで対応してきた方が、急に亡くなるという現実に直面することがあります。
病院関係者であったり、介護事業者であったりすれば日常茶飯事でしょうが、御用聞きの「ねこの手」でも同じような場面に出くわすことになります。
ねこの手のご依頼者との関わり方は、短時間であっても濃密な関わり方になるので、故人のことを思い出すことがあります。
2023年4月に他界されたTさん。
上尾市のハートページという介護の情報誌をご覧になってご連絡いただいたのが最初でした。
耳が聞こえづらくなり耳鼻科を受診したいので付き添って欲しいというご依頼でした。その当時はサービス付き高齢者住宅にお住まいでしたが、施設では付き添いをしてくれないという理由からご連絡をいただき対応することにいたしました。
付添い中に色々と今までの経緯をお話されておりました。
子宮頚ガンで娘さんを亡くさられ、お一人暮らしになったこと。
以前、勤められていた仕事のこと。
サービス付き高齢者住宅に住むことにした理由
そして、サービス付き高齢者住宅から再び家に戻りたいということ。
預けている猫ちゃんのこと。
しばらくすると家に戻ったから、食べるものを買ってきて欲しいと連絡がありました。
Tさんは、認知症を患っていて、本音をいえばお一人暮らしは難しいだろうと思っていました。歩くことも難しい状態で、日常生活を一人でこなしていくのは、困難であると…
それでも、もう一度家に帰りたかった。
サービス付き高齢者住宅であれば、常にだれかが助けてくれるけど、自由が無い。Tさんは自由を取り戻したいのと、愛猫ともう一度暮らしたいと思っていたようです。
家に戻られたその日から、ほぼ毎日のように連絡をいただき、お買い物、洗濯、掃除などを対応してきました。
Tさんは認知症なので、すぐに忘れちゃう。だからと、毎回A4ノートに自分が約束したこと、やることを全て書き溜めておりました。
「ねこの手に○○を頼む。○○を頼んだ!」など。知らない人が読んだら、ねこの手って何?ってくらい、毎日書いてあります
しばらく日々の生活は、ねこの手頼みという状態になり、やはり一人暮らしは無理だと悟ったようです。
今一度、契約が残っていたサービス付き高齢者住宅に戻る決意をしたようです。
自分のことは自分でやると言う強さも持っていたTさん。
サ高住に戻る前にはご自宅の売却を決め、サービス付き高齢者住宅に戻ったら、その後にねこの手で家の中を片付けてねと仰ってました。
猫ちゃんも新しい飼い主を探して引き渡しをされていました。
亡くなる数日前に訪問美容をさせていただき、髪を整えました。
毎回、私どもが伺うと…
「ねこの手しか頼れるところ無いのよぉ…。」
「寂しいから、まだ帰らないでよぉ…」
と仰ってました。
亡くなる前日もお弁当を買っていきましたが
「まだ帰らないでよ…」と…
その声が耳に残っております。
昨日まで元気にされていた方が、急にいなくなる…
天国で娘さんと会えたのだろうか。
ほんとに強い方だった。
最後まで家の売却、猫ちゃんの譲渡、短期間ですべてご自身の片付けをされて旅立たれました。
お一人暮らしゆえの葛藤は、最期まであったのであろうと思います。
最後は、サービス付き高齢者住宅に戻らず、ご自宅でお亡くなりになりました。
心よりご冥福をお祈りいたします。