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なぜ、経営に「ソートリーダーシップ活動」が必要なのか?

こんにちは、国際社会経済研究所(IISE)、理事長の藤沢久美です。

「経営戦略」の視点から「ソートリーダーシップ(Thought Leadership)」の価値や意義について解説する、当コラム。前回は、マーケティングツールとしてのソートリーダーシップが、年月を経て変化してきたことを紹介しました。

今後当コラムでは、我々IISEが取り組む経営戦略を「ソートリーダーシップ活動」と呼び、ソートリーダーシップに「活動」をつけることで、マーケティングツールと経営戦略の違いを表現します。

さて、なぜ経営に「ソートリーダーシップ活動」が必要なのでしょうか。

その理由は、すべての企業が直面しているデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現するために必要だからです。私、藤沢は複数の上場企業の社外役員やアドバイザー、自治体の顧問などの役割をいただいていますが、いずれの組織においても昨今の大きなテーマはこのDXです。

この言葉が使われるようになってから、もう数年が経過していますので、誤解している人はいないと思いますが、DXの要諦は単なる技術導入ではなく、組織のビジョンや戦略、組織文化全体に及ぶ、広範な変革プロセスです。実現のためには技術だけでなく、人材、プロセス、文化の変革が必要です。

これらの変革を促す取り組みの一つが「ソートリーダーシップ活動」であると私は考えます。

その理由を3つにまとめたのが、下記です。

これらを一つずつ、順に見ていきましょう。

①不確実性へのアプローチ → ソートの発信

ソートリーダーシップ活動において、ビジョンとそこへ至る道筋を「ソート(考え方、思想)」と呼びます。このソートを発信し、ソートに共感した仲間が集まり、ビジョンの実現へと活動が進みます。

今は「VUCA」と呼ばれる時代です。先行きが不透明で、未来の進むべき道も不確実な今、我々が取るべき戦略は、未来探索でもなく、予測でもなく、信念を持った未来ビジョンの提示です。ビジョンに共感する人が多ければ、それが実現する可能性も高くなります。そこからさらにその確度を高めるには、その道筋も合わせて提示することです。それが、ソートの発信です。

仮説をビジョンに昇華させ、その道筋を示し、社会に問いかけること。それが不確実性に対する攻めの姿勢です。守りの姿勢で答えを待ち続けるだけでは、猛スピードで変化を続けるVUCAの時代には太刀打ちできません。

②人的資本へのアプローチ → ソートリーダーの発掘・育成

ソートを最も説得力を持って語ることができるのは、ソートの柱にあるビジョンに信念を持つ人です。ビジョンに信念を持つ人というと、経営者のイメージがあるかもしれません。しかし今は、ビジネスにおいて責任を持つすべての人が、自身の判断に信念を持つ必要があります。先行き不透明な今だからこそ、なおさら、信念なき決断には誰もついてきてはくれません。

私は出張先の中東で、砂漠に立ったことがあります。見渡す限り砂しか見えない場所で、自分が生き延びるためについていくリーダーを選ぶとしたら、間違いなく信念のあるリーダーだと、そんなことを考えていました。

ビジネスの世界も同じです。迷っているリーダーには、誰もついてきてくれません。そして、誰よりも悩み、探し求め、考え尽くした人にしか、導き出した答えに対する信念を持つことも、自らの言葉に力を持たせることもできません。責任を持ち、信念を持って語ることができるリーダーをどれほど多く社内で発掘・育成できるか。それが、答えのない時代に企業が強くなる一つの要点です。

③新市場へのアプローチ → 自社の「強み」の精査と事業再編

デジタル社会になり、ディスラプター(破壊的イノベーター)は異なる業界から現れるようになりました。自社の主戦場であると考えていた市場が無くなることも、少なくありません。一方で、企業がこれまでに磨き上げてきた技術や「強み」は、決して陳腐化はしません。使い方が変わるだけです。社会の変化、価値観の変化、個人や企業の行動変化を見据え、自社の持つ「強み」を活かした新たな市場を定義することが必要です。

ここで重要なのは、自社の「強み」の精査です。先行きの変化については、多角的にアンテナを巡らせ対話を繰り返すことで答えは見えてきます。しかし自社の「強み」については、自分たちで決め切る必要があります。絞り込んだ「強み」を未来社会に役立つ形で実装できる市場をイメージし、ソートを描きます。このプロセスを通じて、企業は変革への一歩を踏み出すと同時に、事業再編を行うことにつながります。

今回は「ソートリーダーシップ活動」がなぜ、経営戦略として必要かを見ていきました。次回は、こうしたアプローチを実施するための課題とその解決方法について、解説したいと思います。

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文:IISE 理事長 藤沢 久美

藤沢 久美
大学卒業後、国内外の投資運用会社勤務を経て1995年、日本初の投資信託評価会社を起業。1999年、同社を世界的格付け会社スタンダード&プアーズに売却。2000年、シンクタンク・ソフィアバンクの設立に参画。2013年~2022年3月まで同代表。2022年4月より現職。https://kumifujisawa.jp/

企画・制作・編集:IISEソートリーダーシップHub(藤沢久美、鈴木章太郎、塩谷公規、石垣亜純)

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