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ブルドーザーと呼ばれた先輩

過去にブルドーザーというあだ名をつけられた先輩がいた。会議でこれまでの背景などはいったん置いておいて、ゼロベースで仕切り直す役割を担っていた。前提なしで話すため、会議が理想論で終わる。

ブルドーザー先輩と初仕事

その人が入ると、話がまとまるので上司からは大変評価されていた。

が私にとっては実は大迷惑だった。なぜか?会議でブルドーザー先輩がまとめたはずの話を、覆しに客先からの連絡が私に来るのだ。その場で1番下だった私に、会議後に決まって、詳細の話がしたいという建前で客先の部長や課長から電話がかかってくる。

あの会議の進め方はけしからんとか、こっちがこれまでお願いしてきた内容が全然反映されていないという内容である。会議で理想論だけで終わらせるブルドーザー先輩、ふんぞりかえる上司達。折り合いのつかない先方は私が下の立場だと分かっていて、何度もしつこく様々な依頼をかけてくる。正直疲弊していた。

それを上司達とブルドーザー先輩に報告すると、仕事に関係ない話は無視しておけ。との指示。問題はそっちで解決しておけとばかりに、サポートしてくれなかった。私はというと、現場で色々な話を受け止めつつ仕様を決めているので客先を無視しないわけにはいかない。

客先からの愚痴と助けてくれない上司

結果、いつまでも私は客先からの無駄話や愚痴に付き合わなければいけなかった。上司達の言う通り、無視しても要件とあわせて長文のメッセージが来る。プロジェクトに関わる人間には思いがあって、全員が同じ目標に同じ目線であるべき、そして上司達もブルドーザー先輩も何も分かってない、冷たすぎるとか。

問題があるなら、会議で直接話して欲しいとお願いするも、お互い取り合うつもりはないらしい。問題があるもの同士対立するのを避けている。そして、正直に言う。どちらもこのプロジェクトに関しては作業範囲を譲って調整する気がないのでやらない理由に関しては話が長い。こちらとしては早く仕様の話がしたいのに。

うち上司達は元々、偉そうにその場に存在するだけの空気だったので、問題解決をしてくれるわけではなかった。そして客先もそれを分かっていたので、鼻から相手にしてなかった。会議に来ないで欲しいとも言われていた。

私1人でもなんとか、うまくまわっていると思っていたが、上司からすると報告が足りないと感じたのか、途中からブルドーザー先輩を投入してきた。しかし、私はそのブルドーザー先輩のせいで、客先との板挟みにあうようになった。そして、無駄に長い話に永遠と付き合わなければいけないのだった。

正直、私にとってブルドーザー先輩は迷惑だった。うまくまとめたように見えるが、結果、板挟みになる事が増え、自分がサンドバッグ化しただけだった。

プロジェクトその後

そのプロジェクトは最終的になんとか終了し、板挟みから見事解放された。そして、ブルドーザー先輩は振り返ってこう話していた。

あのプロジェクトには、自分で手を動かしたくない人が集まっていた。口だけ動かす人ばかりがいて、腹が立ったので、これまでの事無視して全部仕切り直したと。結果プロジェクトはあまり良くならなかったけど、会議の話が長すぎて無駄だった。そして、客先から会議で一方的に要求ばかりされる事はなくなったはず。と。その前までは明らかに不公平だった。と。

いや、その要求、ちゃんと私のとこに来てたから。ヘルプ求めても無視したけどな!と喉から出かかったが唾を呑んで我慢した。

ブルドーザーと呼ばれて

ブルドーザーと呼ばれる人には特徴があると思っている。他人に耳をかさず、ゴリ押しが強い人。良い方向に向かえば問題ないが、ほとんどの場合のプロジェクトにおいては、迷惑がられている。

そして、あれから5年が過ぎ、ふと気づいたら、私は周りからブルドーザーと呼ばれるようになった。当時のブルドーザー先輩と同じくらいの年齢になっている。私も大人になり無駄話やヤバイ人の見分けが付くようになり、豪速球の直球ストレートをメインに勝負するようになっていた。

仕事が早く進むようになり個人的には良かったと思っているが、あれ?もしかしてあの時の私と同じ思いをしてる人がいるのではないか?と不安になってきた。

ここまで話して、初めて性別の話をする。こちらの上司達2名と客先の偉い人は全員男性。実際に彼らは手を動かなさい。会議でも当たり障りのない会話で詳細は後ほど部下から連絡させますと言った発言しかしない。

一方、ブルドーザー先輩と私は女性。大体のプロジェクトがこの構図。男性はすぐに役職が与えられて口だけ達者になる。この構図に、正直吐き気がしていた。

今だから思うが、ブルドーザーというあだ名、女性的には侮辱に近いニックネームだと考えている。その先輩は口先でしか良いことを言わない上司達が作ったこの状況をどうにか打破しなければと必死になって頑張っていたのに。

男性でも女性でも、ブルドーザーと呼ばれる事を嬉しく思う人はいるだろうか?この先輩は女性だったが、きっと傷ついたのではないかと思う。

そして、コレを1番、言いたかった。会議で見事にファリシテートをこなし、まとめ上げた時、男性の場合はよくやったと思われ、女性の場合は強引だと思われている事が多いのではないだろうか?

その証拠にブルドーザーというあだ名、男性につけられたのを私の周りでは聞いた事がなく、女性だからつけられたのではないか?と思ってしまう。要は女のくせに発言するな!という事の裏返しなのではないか?と感じている。

この話はあくまで経験の話なので思い込みの部分が多いかもしれないが、少なくとも私はそう感じている。あなたがもし、今もブルードーザーと呼んでいる女性がいたら、心の中では悲しんでいるかもしれない。少なくとも私にとっては嬉しいあだ名ではない。だからどうか、なるべく呼ばないで欲しいし、本人にとっておそらくそのあだ名をつけた人を好意的には見る事はないし、ギャグだとしても、心の中では笑っていないし、むしろ遠回りな嫌味を言われていると感じてしまう恐れがある事を分かってほしい。

そして、ブルドーザー先輩!今さらながら、上司達がつけたこんな呼び方に乗っかってしまってごめんなさい。無頓着だったなと。申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

ちなみにこの話は、日本の女性活躍指数の対象企業での話である。他社に比べればまだマシなところがあるかもしれないが、実質的権限がないリーダーや係長レベルの女性を量産し女性の管理職比率の話をされても納得がいかない。現状、部長クラスはほぼ男性のみで埋め尽くされている。

職場が完全に平等になるには、後何年かかるだろうか…SNSで声を上げる以外に、何かできるはないだろうか…

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