ネガポジDays


言いたいことがある
鏡に映った私が突然喋り出した

俺は「川原寝太郎」の反転世界にいる
「平野起き小僧」だ
お前が寝てばかりいるせいで
俺はちっとも寝られない
少しは睡眠を譲ってくれ

眠れない辛さを知る身として
彼を不憫には思ったが
自分の睡眠を譲るのは嫌だ
聴こえないふりをしていると
彼は鏡の中から手を伸ばして
私の襟首を掴み鏡へ引きずり込んだ

次の瞬間、寝室の天井が目に入った
変な夢を見た気がするが思い出せず
熟睡できなかった時の不快感だけが残った

洗面台で顔を洗っている時に声が聴こえた
よく眠れるようになったら
さぞ毎日が楽しいだろうと思ったが
そうでもないんだな
悪かった

ツルッと石鹸がシンクに落ちるのを
拾った拍子に目が合った顔が
寝起き丸出しで呆けているのを
衝動的に一発殴ろうとして
拳が鏡に触れる寸前で思いとどまった

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?