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雨の夜、崖の下で。

私が子供の頃、母によく寝る前のお話をせがんだ。
母はぽつぽつと面白い話を聴かせてくれたが、大抵は私より先に眠りに落ちてしまうので、ひとり残されたような気持ちになった私は布団をかぶり夜の闇におびえながら眠った。
寝床は暗く、湿っていて、部屋の隅の闇には常に何かが潜んでいるような気がした。
ある日、母が話してくれた。
「小雨の降る生暖かい晩は、崖の下で小豆を洗う音がするんだと。私のおばあさんがよくそう言っていた…。」
「誰が小豆を洗っているの?」
「それが音だけで姿は見えない。それが夜、聞こえてくるんだと。崖の下には何だかわからないものがいて、さみしい小雨の晩は小豆を洗っているんだと。それだけ。」
そう言うと、母は背中を向けて寝てしまった。
私はいろんな疑問が腑に落ちないまま、布団をかぶり夜の闇から身を守った。
それからテレビで「のんのんばあとオレ」というドラマの放送が始まり私は夢中で観た。
面白かった。
そこに小豆洗いという妖怪が出てきた。
主人公の“おれ”に色々助言をしてくれる妖怪だったように記憶している。
(もしかして、本当に妖怪というのはいるのだろうか?)もし、こんな妖怪がいたら…。
怖い妖怪もいるが、気のいい妖怪もいて何とも楽しいドラマだった。
小豆洗いというのは山梨などの地方で水辺で小豆を洗う音をさせる妖怪と妖怪辞典のような本に載っていた。

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