『唯識の思想』

 先月くらいから仏教関係の書籍に手を出し始めて、般若心経の本を2冊ほど読み終わりました。今は『唯識の思想』という本を読んでいます。

 仏教は言うまでもなく宗教です。しかし哲学や科学とも通じる部分もあって、まだ4分の1程度しか読めていませんが非常に面白いです。ただ仏教は、僕たちが通常認識している感覚とは少し異なる視点で世界を解釈しているため、難解な部分も当然あります。仏教は全く知らないけど本書を読んでみたいという方がもしいたら、今は仏教思想の導入に適した比較的薄い本が何冊か出版されているので、まずそちらを読破することをおすすめします。

 せっかくなので本書には具体的にどのようなことが書かれているかということにも、少し触れておこうと思います。
 唯識とは、「唯」=のみ、「識」=心の働き、つまり、心の働きのみが存在するという意味です。心の働きのみとはどういうことでしょうか?
 唯識論では、「私たちが見ている世界は、実は心が作り出した仮の世界である」という立場をとります。急にSFっっぽくなってきましたね。映画『マトリックス』は、我々が現実だと思っていた世界が実は仮想現実で、実際の人類はマシンによって支配されていた事実に気がつくところから物語がスタートします。
 しかし『マトリックス』は、いわゆるシミュレーション仮説みたいな話なので、唯識論はそれとは異なります。唯識論のいうところの「心が作り出した仮の世界」とはすなわち、各々が自分の脳によって解釈された主観的な世界を見ているということを指します。

 僕たちは普段、目に見えているものが実際にあって、世界はちゃんとそこに存在していると思って生活していますよね。でも実際は、ぜーんぶ自分の脳が解釈し、自己の認知によって主観的に世界を捉えているに過ぎないんです。要は、自分にとって都合のいい解釈で世界を理解しているだけ。だから、そこに客観的な世界なんてものは存在しない。ゆえに「唯識」なんですね。

 これって宗教的でもある一方で、非常に論理的かつ科学的で、しかも哲学的でもある。どうですか、めちゃくちゃ面白くないですか?僕はこういう哲学的な問いが昔から好きだったので割と納得感があったし、どこかでそういう感覚も持っていたので受け入れやすかったんですが、そうでない人にとっては世界観がひっくり返るほどの思考のパラダイムシフトです。そして、この思想を紀元前に考えていた人が存在していたという事実は驚嘆に値します。

 書籍を読むことの意義は、過去の叡智を比較的容易に、しかも母国語で享受できる点にあります。限りある人生を豊かにするために、僕はこれからも本を読んでいきたいと思います。

 読書は最高です。
 それではまた!

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