【web3】ガス代の基礎知識④

千葉工業大学の「web3概論」で提出したレポートの第四回目。
 前回はガス代が現在抱えている課題について解説をしました。今日はその続きから。そして最終回になります。

どうやって解決すればいい?

 これらの利点と欠点を踏まえ、ガス代システムの改善に向けて今も世界中で継続的な取り組みが行われています。いくつか例をあげてみましょう。

レイヤー2ソリューションの活用
 ガス代を抑えるために有効な手段として挙げられるのが、レイヤー2ソリューションです。名前はよく聞くけど、中身はわからないという人も多いのではないでしょうか。レイヤー2ソリューションとは、イーサリアムのメインチェーン(レイヤー1)の上に構築される追加のレイヤーのことで、スケーラビリティの向上を目的としています。
 レイヤー2ソリューションには様々な種類がありますが、それらに共通する考え方は、メインチェーン(レイヤー1)のセキュリティを維持しつつ、スケーラビリティを向上させるということです。これを実現するために、レイヤー2ソリューションではオフチェーン処理(トランザクションの大部分の処理をメインチェーンの外で実行すること)が行われ、メインチェーンの負荷を軽減することで、より多くのトランザクションを高速に処理できるようになります。オフチェーンで処理されたトランザクションの結果はメインチェーンに同期され、そのセキュリティが継承されることになります。
 何を言っているのかわからなくなってきたと思いますが、これはイメージだけざっくり説明をすると、全部の処理を自前(レイヤー1)でやるとガス代もめっちゃかかるので大変。だったら外注先(レイヤー2)で大部分の処理をやってもらって、自分(レイヤー1)は返ってきた成果物だけちゃんとしているか定期的にチェックする、というのがレイヤー2ソリューションの仕組みです。

 レイヤー2ソリューションには、ステートチャネル、サイドチェーン、プラズマ、Rollups(ロールアップ)など様々な種類がありますが、用途に応じた適切なものを選択することで、イーサリアムのスケーラビリティを向上させつつ、ガス代を抑えることが可能になります。

シャーディングの導入
 シャーディングは、ブロックチェーンのデータを複数の小さな部分(シャード)に分割し、各シャードが並行してトランザクションを処理する仕組みです。各ノードは、担当するシャードのトランザクションのみを処理し、シャードの一部のデータのみを保持すれば良くなります。これにより、ネットワーク全体の処理能力が大幅に向上し、より多くのトランザクションを高速に処理できるようになります。
 ちなみに、2024年3月に実装が完了したイーサリアムの大型アップグレード「Dencun」では、EIP-4844(プロトダンクシャーディング)が実装されました。これはイーサリアムのガス代を直接的に削減するものではありませんが、レイヤー2からイーサリアムへのデータ転送にかかる手数料を100分の1に削減すると期待されています。またプロトダンクシャーディングはダンクシャーディングを実現する前段階の技術として位置付けられており、完全なダンクシャーディングが実現すれば、イーサリアムは、1秒間に10万回のトランザクションを実行可能になると言われています。

ガス代の動的調整
 現在のイーサリアムでは、ユーザーがガス価格を設定し、マイナーがそれを基に取引を選択するモデルになっています。これを改善するために、ネットワークの混雑状況に応じてガス価格を動的に調整する仕組みを導入することが考えられます。例えば、ネットワークの利用率が高い場合には、ガス価格を自動的に引き上げ、利用率が低い場合には引き下げるようなアルゴリズムを実装することで、ガス代の高騰を防ぎ、ユーザーエクスペリエンスを改善することが可能になります。

まとめると

 ガス代はイーサリアムネットワークの安全性、効率性、および公平性を担保するためには必要不可欠な要素ですが、一方でユーザーエクスペリエンスやスケーラビリティを阻害している要因でもあります。イーサリアムではこのような問題を解決するために、技術的な改善が今も進められており、特にレイヤー2ソリューションは現在もニューストピックになることが多く、今後のさらなる発展が期待されています。本レポートを踏まえることで、授業の補足や最新のweb3関係のニュースなどを理解する一助となれば幸いです。

 最後までお読みいただきありがとうございました!

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