【web3】ガス代の基礎知識③

 千葉工業大学の「web3概論」で提出したレポートの第三回目。
 前回はガス代がどういった役割を果たしているのかをお話をしました。今日はその続きから。

課題もいっぱいある

 このように、ガス代はイーサリアムネットワークの維持管理に必要不可欠な要素である一方で、まだまだ課題も多く、様々な欠点も存在します。いくつか見ていきましょう。

ユーザーエクスペリエンスの低下
 ネットワークの混雑時や、ガス価格の高騰時には、トランザクションにかかるガス代が非常に高くなることがあります。これは、特に小額のトランザクションを行うユーザーにとって大きな負担となります。またガス価格が高騰している際に、ユーザーがガス価格を低く設定してしまうと、トランザクションが処理されるまでに長い時間がかかる可能性があります。
 このように、ガス代の存在により、イーサリアムを利用するための敷居が高くなっていることも事実であり、ユーザーエクスペリエンスが損なわれる原因にもなっています。

価格変動による影響
 DAppなどイーサリアムを活用したサービスの価格設定においては、ガス価格の変動を考慮する必要がありますが、その変動幅が大きい場合、適切な価格設定は非常に難しくなります。そもそもガス価格は、ネットワークの需要に応じて変動するため、将来のコストを正確に予測することは困難です。ガス価格の急激な変動が起きると、ユーザーや開発者が当初予想していたよりも高いコストを負担することになりかねません。このガス価格の予測不可能性は、ひいては長期的なプロジェクトの採算性に影響を与える可能性があります。

スケーラビリティの制限
 
スケーラビリティ(拡張性)とは、ネットワークが処理できるトランザクション数やユーザー数を拡大できる能力のことを指します。つまり、より多くのユーザーが利用し、より多くのトランザクションを高速に処理できるようにすることですね。
 
ブロックチェーンにおいて、1つのブロックに含めることができるデータの最大量をブロックサイズと呼びますが、イーサリアムでは、このブロックサイズが、先ほど述べたガスリミットの存在によって間接的に制御されており、スケーラビリティ(拡張性)を制限しています。なんじゃそりゃ?って感じですね。少しややこしいので整理してみましょう。
 まずブロックの中にはトランザクションがいくつも詰め込まれていますが、それぞれのトランザクションにはガスリミットが設定されています。ガスリミットとは、単一のトランザクションに使用できる最大ガス量のことでしたね。これのおかげで、無限ループによるネットワークリソースの枯渇を防げるという説明も先ほどしました。
 ガスはリソースの消費を定量化する側面もありますが、これはつまり、各トランザクションが消費できるリソースの上限が予めガスリミットとして決められていることを意味します。消費可能なリソースの上限が決まれば、自ずと処理できるデータ量も確定しますよね。したがって、1つのブロック内に存在している各々のトランザクションのガスリミットの総和が、そのブロックに入れられるデータ量の上限ということになります。これが、ブロックサイズはガスリミットによって間接的に制御されているということの意味であり、処理可能なデータ量の限界値というわけです。

ここまでのまとめ

 先ほどはガスリミットがネットワークの安全性に寄与していると説明しましたが、一方でトランザクションの制約条件にもなっているわけですね。このことが、ガス代の高騰を招き、イーサリアムのスケーラビリティ(拡張性)を阻害する要因にもなっているということです。
 次回は最終回。ガス代の課題に対する解決策について説明していきます。

 それではまた!

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