Unravel Future第3回

-NOIZが公開している2つのダイアグラムの分析とアップデートの提案-

※このアーカイブは、ND3Mメンバー独自の解釈によるものです。一部内容に不正確な表現や、誤りを含む可能性があります。

はじめに

「Unravel Future」とは、名古屋周辺の建築学生が主体となり、①「建築と異分野の融合」を軸とし過去から未来へ時間軸を横断して研究・思考・議論、②アイデアコンペ, エキシビジョン, 実作, 実務に渡るまで、デジタルデザインの分野から制作活動, ワークショップを行うチーム「ND3M(Nagoya Digital Design Developer Meeting)」が主催する研究型プロジェクト。
この企画の中では、noiz architectsが取り扱っている「Diagram for Expanded Dimension of Architecture」「物質と情報が重なる共有領域としてのコモングラウンド」の2つのダイアグラムを分析していく。

第0回から第2回までは、ダイアグラム「物質と情報が重なる共有領域としてのコモングラウンド」を具体的な事例から分析し、アップデートできる点を探った。

第3回からは「Diagram for Expanded Dimension of Architecture」の分析、アップデートできる点の議論を行う。


第3回(5/7) ダイアグラムの分析

 具体的なプロジェクト・建築から「Diagram for Expanded Dimension of Architecture」の黄色い矢印を分析する

画像7

"Diagram for Expanded Dimension of Architecture"
画像引用元:noiz  architects
licensed CC BY-NC-ND

*注)上記画像はオリジナルのもの。これ以降にはメンバーがこの画像に書き込みを加えたものがあります。画像の改変については、著作者の許可を得た上で行っています。


「Diagram for Expanded Dimension of Architecture」には赤い矢印と黄色い矢印があり、おそらく赤い矢印は従来の建築を作るプロセスの在り方、黄色い矢印はこれから目指していくべき建築を作るプロセスの在り方であると読解した。第3回では黄色い矢印の示すようなプロセスをもとに進められている具体的なプロジェクトや建築のプロセスから該当する点を分析し読解をしていく。

各自が提示した事例と分析

 近藤が調べた事例

鉄骨の部材など

画像2

建物の部材単位では、既にデジタルなプロセスが浸透してきている。構造設計者は構造体を設計要件から力に伝達や応力、地盤などの設計要件をもとにスケッチなどで形を考え構造設計ソフトで数値を計算したりgrasshopperなどでその形状をプロシージャルに設計する。それをBIMに統合し、工場に依頼しデジファブでジョイントなどを作る。

隈研吾の設計プロセス

画像3

隈研吾都市設計事務所では、設計者が書いた手書のスケッチをgrasshopperで調整するためにアルゴリズムを作ったり、grasshopper で最適化をするのではなく作業の効率化などに使用している。またgrasshopper で作ったデータをレーザーカッターで作り模型の制作にも生かされている。完全にアルゴリズムで特にではなく設計者が介在してこそアルゴリズムデザインだと述べられている。
参考 : https://xtech.nikkei.com/kn/article/it/column/20130304/605309/


②阿部が調べた事例

画像4

部分ごとに分けて、それぞれに当てはまる事例を考えた。

image → form model : グッケンハイム美術館
3D記述のCAD(CATIA)がなければ、成立しなかった建築である。

code→form model:Serpentine Gallery Pavilion 2002-伊藤豊雄, Cecil Balmond(Arup)
一つの正方形を回転・拡大させること(バルモンドの幾何形態)で生成するアルゴリズムを採用し、無限に無限拡張の抽象的イメージを付与する。

digital fabrication, structure→process model→form model→building(structure) : MX3D BRIDGE -MX3D, Joris Laarman Lab, Arup etc
産業用6軸ロボットアームを4台使用して建設されるステンレス製の橋。
歩行者の数や速度を記録するとともに、橋の歪みや変位、振動などの構造測定データを収集し、大気質や温度などの環境要因を測定する各種センサーを備える(DIgital Input)。


田住が調べた事例

MX3D BRIDGE

画像5

敷地をスキャンし、MX3Dのオリジナルソフトウェア内で、設計からロボットアームの制御までを統合して行っている。設計ではジェネレーティブデザインなどで、いくつかのパターンを作成し、構造や外観を同時に検討しながら進められる。橋は工場内で、ロボットアームを用いてステンレス線を溶接して組み上げられる。橋には自身の歪みや振動、周辺の温度変化を計測するセンサーを搭載され、様々な情報を紐付けながら耐久性などの評価が行われ、次の設計にフィードバックされる。
参考:https://mx3d.com/projects/mx3d-bridge/


⑤ 池本が調べた事例

pilling up the Green Cuboids / 山口隆

画像6


疑問点の提示と議論

ここまでは各自が調べてきた事例をもとにそれぞれの解釈でダイアグラムを読み解いてきた。ここからは読み解く過程で生じてきた疑問を共有しながら解釈を深めていく。下に示す、近藤が疑問点を書き込んだ図を元にして、議論が進められていった。

気づき

※青色の線と文字は近藤が追記したもの。

1. 赤い矢印のプロセスと、オレンジの矢印のプロセスの関係について

画像10

近藤「赤い方は人の手でスタディや図面を引いていきながら建築をつくるのに対し、オレンジの方ではデジタルなツールを用いながら設計する過程を示している、という解釈は全員同じだと思います。そのなかで、form model が、CADやモデリングソフトなどで作られたデータとするなら、デジタルファブリケーションで作られるのは 、building そのものではなく、physical model を作っているのではないかと考えました。デジタルのものをそのまま building としてつくるのではなく、一度モックアップなどをつくることが多いだろうし、コンクリートを3Dプリントしたり、CNCで木材を加工したりして建物をつくることもあるがまだ主流ではない。特にレーザーカッターは模型を作る中で用いられるイメージがある。いずれにせよ、form model から physical model への矢印も必要なのではないかと。」

田住「この図は、デジタルなプロセスとこれまでのプロセスのコラボレーションは考えていないのではないかと思います。左側のオレンジで示されている、デジタルなプロセスだけでも建物として完成できるということを示したのではないかと捉えました。また、竹中工務店のEQ House ( https://www.takenaka.co.jp/eq_house/technology/index.html  ) のように、レーザーカッターを用いて金属パネルを作成しているような事例もあります。なので、今現在の実際の活用例ではなく、デジタルなプロセスだけで完結する建築像を表していると考えればこのままで納得できるのでは。」

阿部「現在の設計過程において、人間の感覚っていうのはやっぱり大切で、デジタルなものだけでは成り立たない。また、デジタルなプロセスにおいても、形状を決定する中で、結局人間による意思決定が必要になる。だから、そう考えると赤とオレンジを結ぶ矢印がやっぱり必要なのではとも思います。しかし、赤とオレンジの関係を、これまでの方法と、新しい方法、と時間軸分けて考えれば矢印が存在しないのにも納得がいくのではないでしょうか。」

近藤「たしかに、赤いプロセスが先にあって、そのあとオレンジのプロセスが出てきたと捉えられる。それならば、赤いプロセス、オレンジのプロセス、コラボレーションしたプロセス、の3枚に分けるとわかりやすくなるのではないかと。赤いプロセスの方に疑問がある人はいないようなので、まずはオレンジのプロセスに絞って考えましょう。」

阿部「矢印の話をする前に、この図における form model と process model そしてBUILDING の関係をもう少し考えたい。そうすればそれぞれの矢印のもつ意味がはっきりしてくるのではないかと。」

それぞれ独立したプロセスとして描かれているという認識が共有できた。form model 周辺の矢印にの意味を考える前に、process model と form model 、そして BUILDING の関係について整理することにした。

2. BUILDING, form model, process model の関係

画像9

阿部「最初見たときに、BUILDING が我々の考えている、建物として完成されたものではないのかもしれないと感じました。先程近藤さんが言ったように、今は模型で使われることが主流の、digital fabrication の矢印が伸びていたり、 digital imput で前の段階に戻るような表現がされていたり。なので、この図で言う BUILDING は、通常の建物の意味から拡張した概念を示しているのではないかと思います。」

近藤「BUILDINGが円で囲まれている理由を考えると、そういう解釈なのかもしれない。建物自身ではなく、周辺環境なども含めたものなのではないかと思います。そう考えると、Digital input の矢印が、プロセスを戻るように働いているのにも納得がいくのでは。」

中島「ただ、そう考えると赤い方のプロセスでも周辺環境は考慮するはずで、オレンジの方と同様に下の方に返っていく矢印が必要なのでは。周辺環境は、一番下の DESIGN ELEMENT に内包されている気がします。」

池本「BUILDING を考える前に、このダイアグラムで対になっているように見える、form model と process model を整理すればわかりやすくなるかもしれない。私は、山口隆さんの設計手法を参考にしたのですが、process model は点群など、そのままでは明確な形態を持たないデータで、form model はそれを建築としての形態に落とし込んだものなのではないかと考えました。」

田住「その考えはいいかもしれない。例えば、Grasshopper や dynamo のように、それ自体は形態を持っておらず、様々なパラメータを内包しているデータば process model で、rhinoceros や revit のように、それらを可視化し、統合したデータを form model と解釈することができそうですね。そうすれば form と process に矢印の行き来があることも理解できるのではないでしょうか。」

近藤「ただ、そう考えると、process model 内にBIMがあったり、下の parametalization のところに grasshopper と書いてあったりするところが噛み合わなくなってしまう。」

阿部「unityでのシミュレーションなど、ゲームエンジンが建築に活用される機会も増えているように感じていますが、この図の中ではどの立ち位置になるのかがわからない。」

池本「ソフトには様々機能があって、プラグインでも拡張ができる。ツール名を入れることはわかりやすい気もするが、深く考えていくと混乱のもとになる気がします。一旦ツール名から離れて、その項目の機能を考えたほうがいいのでは。」

田住「今まで聞いていて思ったのですが、これを考えるときに重要になりそうなポイントが3つあると思います。まず1つ目は、form model と BUILDING を隔てるグレーの点線です。今までの我々の解釈に従うと、BUILDINGは今我々が生活している空間に存在していることだと捉えられます。2つ目は、BUILDING と form model を囲っている、BROADER ARCHITECTUTE です。この2つは対になっていて、これらをあわせて広義的な建築と言えるとするなら、先程のデジタルかフィジカルかの話も併せて考えると、form model はデジタルツインのような存在で、BUILDING と一体となり、ミラーワールドを形成していると考えられるのではないでしょうか。そして、3つ目はそれぞれから伸びる矢印や枠の重なり順が違うということです。重なりが上のものほど後に出てくる概念なのではないでしょうか。」

近藤「たしかに、そのように考えると、form model に digital input がされている様子は理解できる。そのデータをどのように活用するかが表現したいが、それを一枚に含めるのは難しいか。」

阿部「将来は、この重なり順の概念がなくなり、建築が自ら得たデータをもとに改築したりするようなこともあり得るのかなと思いました。」

田住「form model から process model に戻っていく矢印は、BROADER ARCHITECTURE の上に存在しているので、一つの建築から得られたデータを次の建築のprocess model に食わせて、よりよいシミュレーションなどに活用することを表現しているのではと考えました。また、赤とオレンジの違いに注目してしまいがちですが、ダイアグラムの趣旨や、digital input が一番太く表現されている点も考えると、BROADER ARCHITECTURE がこの図の鍵になっているのではないかと思いました。」

近藤「そう考えると、form model は BUILDING の一段下にあるような表現ではなく、この2つは対等に存在しているように表現するとわかりやすい気がします。」

前回のダイアググラムに関しての議論をふまえつつ、process model, form model, BROADER ARCHITECTURE の関係を整理することができた。次は、これまでオレンジのプロセスのみに注目していたが、再び全体を見て考えていく。

3. ダイアグラム全体としての関係性を考える

画像8

中島「これまでオレンジの側だけに注目しましたが、それをふまえて全体を見てみると、赤いプロセスのほうにも違和感が見えてきます。例えば、オレンジのほうでは、design element から2本の矢印が伸びているけれど、赤い方では、imageから発せられる矢印のみです。」

近藤「たしかに、先程話したように、周辺の環境などは最初に考えるだろうし、最後に構造計算などもしますよね。ただの建築家のイメージだけではない気がします。」

池本「そして、デジタルの方で input があるように、赤い方でも建築の過程で architect に帰ってくるものがあるのでは。デジタルの方ではそのままデータとして戻ってくるのに対し、フィジカルな方では建築家の中に蓄積として新たな image のもととなるという違いはあると思いますが。」

田住「デジタルなプロセスではこの図で言うexternal なデータをそのまま食わせることができるのに対し、赤い方では、最初は建築家がそのデータを読み解いた結果として現れ、そして最終段階では計算などで用いる具体的な値として出てくるように感じます。そのデータの扱い方の違いを表現できるとより深くなる気がします。」

池本「段階を分けるでも、全く別のものを作るのでもいいですが、次回に向けて各々で新しいものを考えてきて、それをまた議論しながら新しいダイアグラムにしましょうか。」

全体を通してみると、両者にプロセス内でのデータの扱い方が異なることが見えてきた。これをもとに、次回は新たなダイアグラムを提案する。

次回:第4回 (5/14)

ダイアグラム(Diagram for Expanded Dimension of Architecture)のアップデート
これまで議論してきたことをもとに、各自でアップデートを提案する。
設計プロセスの変遷やこれからの建築の概念などに重点を置き、アップデートできそうな点を探る。
それぞれの提案を再構築し、最終的に一枚に統合することを目標にする。


文責:田住


Unravel Future 過去アーカイブ



この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
6
Nagoya Digital Design Developers Meeting 「建築と異分野の融合」を軸とし過去から未来へ時間軸を横断して研究・思考・議論をするチーム。また、デジタルデザインに関連して、制作活動,ワークショップを行います
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。