Unravel Future 第4回

-NOIZが公開している2つのダイアグラムの分析とアップデートの提案-

※このアーカイブは、ND3Mメンバー独自の解釈によるものです。一部内容に不正確な表現や、誤りを含む可能性があります。

 はじめに

「Unravel Future」とは、名古屋周辺の建築学生が主体となり、①「建築と異分野の融合」を軸とし過去から未来へ時間軸を横断して研究・思考・議論、②アイデアコンペ, エキシビジョン, 実作, 実務に渡るまで、デジタルデザインの分野から制作活動, ワークショップを行うチーム「ND3M(Nagoya Digital Design Developer Meeting)」が主催する研究型プロジェクト。
この企画の中では、noiz architectsが取り扱っている「Diagram for Expanded Dimension of Architecture」「物質と情報が重なる共有領域としてのコモングラウンド」の2つのダイアグラムを分析していく。

前回の第3回ではnoizの公開しているダイアグラム、「Diagram for Expanded Dimension of Architecture」を読み解くため、事前にメンバーが集めた建築プロセスを図中に書き込み、それをもとに出てきた疑問点などを議論した。


豊田さんとのディスカッション前、最後となる第4回は、前回の議論をもとにダイアグラムのアップデートを提案する。

第4回(5/14) ダイアグラムのアップデート

「Diagram for Expanded Dimension of Architecture」を読み解いていった過程で出てきた疑問などをもとに、よりよい表現方法を探る。
前半では、前回の議論を踏まえ、各自が作成してきた改変案を発表し、議論する。
後半ではそれをもとに一枚のダイアグラムに落とし込む。

画像1

"Diagram for Expanded Dimension of Architecture"
画像引用元:noiz architects
licensed CC BY-NC-ND

*注)上記画像はオリジナルのもの。これ以降にはこの画像に書き込みを加えたものがあります。画像の改変については、著作者の許可を得た上で行っています。


メンバーそれぞれがアップデートさせて提案したダイアグラム

1.池本の提案

ピエン瀧

「form model から digital fabrication に直接行くことに違和感を覚えたので、間にスタディモデルを追加しました。スタディはフィジカルでもデジタルでも行われ、いくつかのシミュレーションなどを経たあとに具体的な提案がなされ、BUILDINGが完成形として現れてくる表現にしました。」


2.中島の提案

ナカシマ

3つのフェーズに分け、1つ目は今までの設計スタイル、2つ目がデジタルなプロセス、3つ目はその 2つのコラボレーションという形に変更します。また、黄色と赤で色分けされているので、元の図のグレーの破線はいらないのではと思い、削除しました。」


3.田住の提案

02_アートボード 1

「先週の議論で出た要素をすべて一枚に盛り込もうとした結果、オリジナルのものを改変するのではなく、全く新しい形に行き着きました。」

architectから発せられるimageと、外的な要素の関係を左右で書き分け、従来のプロセスでは最初は外的な要素も考慮しつつも、建築家のイメージがベースとなり、その後スタディを繰り返しながら具体化していく。そしてその過程で計算などによる具体的な外的要因が影響してきて、最終的にその延長上に建築としての実体が現れるような表現にしました。一方デジタルなプロセスでは初めからそれぞれの要素がデータとして対等に扱われ、同時に処理しながらだんだんと具体化されていくような表現にしました。
また、デジタルなプロセスでも自動で進むのではなく、建築家の決定によりい進んでいく様子、そして、form model とBUILDINGは一体で、単にデジタル化フィジカル化の次元が違うだけ、というような表現にして、デジタルツインとしてのBROADER ARCHITECTURE の概念をわかりやすくしました。」

「結局、表現したいことを全部詰め込んだ結果よくわからない図になってしまい、オリジナルのダイアグラムの上手さを実感しました。」


4.近藤の提案

そめ1のコピー

そめ2

「中島さんと同じ様に、段階ごとに分けた図を作りました。しかし、分け方は違っていて、2つ目の段階を、赤とオレンジの手法のコラボレーションで建築が作られていく様子を表現しました。さらに3段階目は建物が完成した後、維持されていく様子として、form model がデジタルツインとして振る舞い、建物の維持管理が行われていく様子を示しました。」


5.阿部の提案

画像7

「ほぼ近藤さんの図と表現していることは同じだが、あくまで元の図をそのまま分割した形にしました。また、最後の形態として、従来の維持管理に変わり、施工後でも建築自らが増改築をしていくような、生物的な建築もありうるのではないか、ということを提案したい。」


以上の提案の後、一枚のダイアグラムに落とし込めるような議論をして、アップデートさせた一枚の図を作成した。次に、作成した新しい図を示し、議論で過程や我々の注目したポイントを説明する。


ND3Mがアップデートしたダイアグラムの提案

改定案4

こちらが、ND3Mで新たに作成したもの。オリジナルのものと比較する前に、このダイアグラムを段階ごとに分けて、順を追って説明する。

①これまでの設計手法

改定案2

建築家は、自分の中のイメージや、外的な要素を統合し、それを形態として可視化する。スタディを繰り返しながら建築を具体化し、建物として完成させる。

②デジタルな設計手法とのコラボレーション

改定案3

これまで建築家の主観により形態を操作していたが、デジタルな手法により、数値としてデータを取り扱い、さまざまなデータを統合して扱うことができるようになった。1人の建築家が扱う領域が広がり、これまでの各専門の分業体制ではなく、並列して協働するようになる。施工においてもデジタル・ファブリケーションなどを利用しながら、より自由で正確な施工が可能になる。

③建築の領域の拡張

改定案4

コンピュータ上で作られた3Dモデルは、建物に関する情報が全て統合され、建物のデジタルツインとして振る舞う。取り付けられたセンサーなどにより、変化が常に記録され、反映される。それらは建築内で利用されるだけでなく、過去のデータの蓄積として、次の建築へ受け継がれていく。


オリジナルとの比較

ここからは、オリジナルのダイアグラムと比較しながら、改変するにあたって着目した点を見ていく。

着眼点1 Architectから発せられる赤い矢印について

2-1_アートボード 1

近藤「前回の議論で出てきたように、建築家のイメージだけではなく、敷地や環境、構造のことも、計算まではしていないにせよ考慮しているはずなので、それを示せるようにしたい。」

田住「しかし、デジタルな方でそれぞれの要素から延ばしたものと同じ様に表現するとデータの扱い方の違いを表現できないように思うので、Design Element を囲っている枠から直接伸びるようにして、Externalixation とすればいいのではないかと思います。」

中島「そうすれば、デジタルのほうは対等にデータが扱われ、フィジカルな方では統合された建築家の意思として現れることが説明できますね。」


着眼点2 form model と process model の立ち位置

2-2_アートボード 1

池本「結局 form model は実体が有るか無いかの違いだけで、建築として具体的になっていて、デジタルツイン的に振る舞うもの。そして process model はその前のスタディやシミュレーションをするものだったり、点群だったり、決定の過程で派生してきたモデルという解釈でいいんですかね。そうすると、赤い方に合わせて、process model を physical model と同列に、form model をBuilding と同列に持っていきたい。そうすれば対比的に見ることができてわかりやすいのでは。」

阿部「そして、BROADER ARCHITECTURE の枠があるように、process model とphysical model, drawing も枠で囲って、スタディというプロセスという表現にすれば、互いを結ぶ矢印を書かなくても相互に連携する様子が表せるのではないでしょうか。」

田住「少し乱暴かもしれませんが、form model はDigital Twinと言い換えてしまったほうがわかりやすいかもしれないと思いました。」

近藤「それは我々がいままでデジタルツインについて議論を深めてきたからそう感じるのかもしれないけれど、そのようなことを知らない人からみたら、form model のほうがすんなり理解できそう。レイヤーで分けて、ミラーワールドが出てくるプロセスのときはDigital Twin 、それより前はform model という表現にしたい。」


着眼点3 digital input の意味

2-3_アートボード 1

池本「form model と Building がミラーワールドを作るとしたら、そのdigital input は建物をセンシングしてデータを反映させる、というように捉えることができますよね。コモングラウンドのほうのダイアグラムではそのデータを用いて、physical agent と digital agent が作用しあうような概念が示されていましたが、それはこの図に盛り込まなくて良いんでしょうか。」

近藤「その概念までをこの図に表現すると、一枚のダイアグラムとして表現することが難しくなってしまいそう。建築、という概念の拡張を示すのがこの図の目的なので、そこまでは含めなくて良いのでは。」

中島「digital input が太いのは、これまでなかったプロセスを強調するためだと思うので、BROADER ARCHITECTURE としてセットになる、というところまで表現できていれば良いと思います。」

阿部「ただ、このままだとdigital fabrication とdigital input が相互に働いているようにも捉えられるので、その区別をする方法はまた考えないといけないと思います。」


着眼点4 form model から process model に戻っていく矢印の意味

2-4_アートボード 1

田住「前回の議論で、この矢印は次の建築が作られるときに、これまでセンシングなどで得たデータが用いられるという意味だと解釈しましたが、それなら、赤いプロセスでも建築家に戻ってくる矢印がありそうなので、この2つを対比させるのはどうでしょう。」

近藤「デジタルの方はそのままデータとして蓄積されて、次の設計のdesign element となるようにするとプロセスの最初まで戻ってくるので、自然な表現になるのでは。」

中島「それならBUILDINGからは Arhitect の image にそのまま戻ってくればよさそうですね。」


着眼点5 process model 内のBIMの存在

2-5_アートボード 1

池本「やっぱり、ここにBIMがあるのはなんとなくしっくりこないんですよね。BIMはどちらかと言うと情報が統合された、form model なのではないかと。」

田住「ツールの機能はプラグインなどでどんどん拡張していくこともできるので、プロセスの中に書いてしまうとやっぱり捉え方が難しくなってしまいますよね。今回はソフト名は書かずに、あくまでもこのようなプロセスを踏む、ということを強調しましょう。」


まとめ

第0回からここまでの議論で、2つの新しいダイアグラムが提案された。

01改_アートボード 1

改定案4

次回はこれを豊田啓介氏に投げかけ、コモングラウンドや設計手法を中心とした議論に発展させたい。


次回(5/22) 電脳設計論壇#1 豊田啓介氏

ここまで、それぞれの意味を整理し、新たな要素を加えながらダイアグラムのアップデートをしてきた。
次回はいよいよ、豊田啓介氏の講演会内の企画として、アップデートした2つのダイアグラムをもとに議論をしていく。

文責:田住


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