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「論語」から、中国デジタルトランスフォーメーションを謎解きしてみよう。第93回

本シリーズのメインテーマは「論語」に現代的な解釈を与えること。そしてサブストーリーが、中国のDX(デジタルトランスフォーメーション)の分析です。中国の2010年代は、DXが革命的に進行しました。きっと後世、大きな研究対象となるでしょう。その先駆けを意識しています。また、この間、日本は何をしていたのか、についても考察したいと思います。
 
顔淵十二の十四~十六
 
顔淵十二の十四
 
『子張問政。子曰、居之無倦。行之以忠。』
 
子張が政治について問うた。孔子曰く、「官職に付いたなら怠けてはいけない。政策は誠意をもって実行する。」
 
(現代中国的解釈)
 
官職も民間企業の管理職も、地位は利用すべき為にある。これは現代中国人不変の共通認識である。役得を得るに当たっての罪悪感は、ほとんどないため、話は早い。ただし、DXの進展により、裏金の捻出、運用などに“支障”が出ているのは間違いない。さらに人間自体が、組織運営に不要となりつつある。無人オペレーションの発達による。
 
(サブストーリー)
 
中国は無人化が大好きだ。ハイテクの象徴のような扱いである。自動運転や無人配送車など目立つ分野以外でも、さまざまなモビリティサービスの分野で、無人化の研究が進んでいる。江蘇省・南京市(人口942万3400人)の無人地下鉄もその1つだ。南京地下鉄7号線北区間は、13.84キロメートル、10駅だが、ここに、全自動無人運転車両プラットフォームを導入した。これにより GOA4 レベルの都市軌道交通全自動運転が実現する。GOA4 レベルとは、鉄道自動運転の最高レベルを指し、日本のゆりかもめや、神戸新交通のレベルである。それを地下鉄でやろうというのだ。そのため、さまざまな新技術が投入された。
 
1 扉の信頼性…外気密閉扉を採用し、従来型の2倍の信頼性を実現。
2 スマート化…多数の検測装置を設置。
3 ビッグデータ…分析を通して車両の監視、障害警告、保守を簡易化、
4 障害自己リセット…小さな問題は自動修復が可能。また外部コントロールも可能。
 
顔淵十二の十五
 
『子曰、博学於文、約之以礼。亦可以弗畔矣夫。』
 
孔子曰く、「広く文を学び、それらを礼をもってまとめれば、道に背くことはない。」
 
(現代中国的解釈)
 
中国国家統計局は、信ずるに足りない、というイメージが強い。確かにGDP成長率や失業率などは、ほぼ間違いなく、恣意的に加減されている。ところが日本でも、国土交通省や厚生労働省で統計データ不正が発覚し、中国をまったく笑えなくなった。さらに中国は、ここ数年、次々に新職業を認定し、実態経済に寄り添った分析、統計を発表している。その最新統計は実に細かいところまで及ぶ。旧態依然の産業分類しかない日本は、大丈夫なのか。学びのないのはどちらだろうか。心配になってくる。
 
(サブストーリー)
 
例えば、中国における日本料理の分析データ(iiMedia)もある。それによれば中国の老人群体では、日本料理が好き65,9%、普通29,8%、嫌いはわずか4,3%。食事といえば中華式会食が普通のはずの高齢者たちも、日本料理きらいは、ほんの少数だった。季節の変化を重視した自然食材と調理法、鮮やかな色彩感、多彩な容器などの造形美が、視覚上の高級感を醸しだす。などとべた褒めである。
 
ホワイトカラー群体の調査は、日本料理店のどのような販促、営業活動に影響を受けるか、といったかなりマニアックな内容だ。それによれば
 
一定金額を超えればディスカウント…62,1%
一般的な割引、1割引など…51.8%
次回以降使用可のクーポン…49.2%
会員カードによる優待…33.1%
プリペイドカードによる優待…32.6%
特価料理の提供…29.0%
 
となっていて、日本料理店経営者にかぎらず、多くのビジネスパーソンに、十分有効なデータを提供している。中国は統計の力を、捏造も含め、知り尽くしている、
 
顔淵十二の十六
 
『子曰、君子成人之美、不成人之悪。小人反是。』
 
孔子曰く、「君子は人の美徳を伸ばし、人の悪徳は抑える。小人はこの逆をする。」
 
(現代中国的解釈)
 
伸ばせるものは、伸ばす。出る杭は打たない。そんなヒマがあるのなら、自分がのし上がることに力を尽くす。しかし中国IT巨頭は、業績の頭打ちが明確だ。成長ビジョンに説得力がなくなってきたのである。そのため最近は、提携の動きが盛んだ。
 
(サブストーリー)
 
フードデリバリー2位、アリババ系の餓了蘑は、先日TikTokのバイトダンスと提携したのに続き、シャオミとも提携した。
 
シャオミ(小米)のネット通販サイトには、スマホの他に、パソコン、タブレット、テレビ、生活家電、家庭用品、バッグまである。オフラインでは全国3000の「小米之家」店舗がある。これら全店を、餓了蘑アプリにアップ、それぞれの地域における商品ラインナップに加える。本業の料理とともに、シャオミのスマホが並ぶのだ。
 
シャオミの技術部門は、提携により、国慶節など長期休暇中における設備破損や紛失、電源喪失その他トラブル需要に、迅速に対応できるという。メリットは大きく、シャオミが掲げていたオンライン、オフライン融合戦略の重要な成果となり得る。餓了蘑にとっては、北京、上海、広州、深圳、成都など、小米之家がある全国200主要都市で、商品ラインナップが充実する。
 
ネット通販のユーザー構成は、85后、90后で64,6%を占める。また95后になると、50%以上が、当日または半日以内に商品を受け取りたいと考えていて、そのうち7%は、2時間以内、と考えているという。このような若者層のニーズにも応えることができる。いつどこから注文しても、即時にシャオミ製品が手に入る。長所を伸ばす、ウィンウィンの関係となりそうだが、どうだろうか。
 
 

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