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「論語」から、中国デジタルトランスフォーメーションを謎解きしてみよう。第160回

本シリーズのメインテーマは「論語」に現代的な解釈を与えること。そしてサブストーリーが、中国のDX(デジタルトランスフォーメーション)の分析です。中国の2010年代は、DXが革命的に進行しました。きっと後世、大きな研究対象となるでしょう。その先駆けを意識しています。また、この間、日本は何をしていたのか、についても考察したいと思います。
 
微子十八の五~六
 
微子十八の五
 
『楚狂接奥歌而過孔子、曰、鳳兮鳳兮、何徳之衰。往者不可諫。来者猶可追。已而已而。今之従政者殆而。孔子下欲与之言。趨而辟之、不得与之言。』
 
楚の狂者、接奥が歌いながら孔子のそばを通り過ぎて曰く、「鳳よ鳳よ、何と徳の衰えたことよ、過ぎたことをいさめることはできない。やめろ、やめろ、今の世で政治にかかわるのは危険だ。」孔子は車から降り、彼と話そうとした。接奥は小走りで孔子を避けた。孔子は彼と話すことはできなかった。
 
(現代中国的解釈)
 
ファーウェイはAndroidを避けた。自前OS、鴻蒙(Harmony)を"純血"にしたのである。ファーウェイは、業界の歴史は書き換わる。鴻蒙は、中国オペレーティングシステム全体の王となるだろう、と自信たっぷりである
 
(サブストーリー)
 
ファーウェイは2012年から、独自OSの開発を始め、2019年、鴻蒙(Harmony)OSとして発表した。米国の制裁を喰らい、Googleが使えなくなったため、開発に拍車をかけた。そして1月18日、Harmony OS NEXT 鴻蒙星河版を発表、鴻蒙は第2段階に入ったと、発表した。これまでは、Androidとの互換性を保っていたが、断絶したのである。この星河版は、完全自社開発システムで、Androidコードは削除され、Androidアプリを開くのに必要なサポートはない。Harmony用に開発されたアプリしか利用できない。
 
新しい鴻蒙は、アーキテクチャ、セキュリティー、インテリジェンスにおいて、多くの技術的ブレークスルーを達成した(らしい)。さらに、ソフトウェア、ハードウェア、チップ、クラウドと、自社で何もかも完結しているのが、米国勢にはないファーウェイならではの強味という。後発の分、何かしらアドテージは確保できているだろう。しかし、使ってもらえないことには、絵にかいた餅に過ぎない。
 
ファーウェイは、生き残りのデッドラインをシェア16%に設定している。それだけあれば、"自律的"なエコシステムの拡大が見込めるそうだ。2023年第三四半期の段階で、鴻蒙の世界シェアは3%、国内シェアは13%である。ファーウェイは、孟晩舟副会長の拘束事件以来、熱心なサポーターを獲得した。今後のシェアは、制裁を喰らっている5Gスマホ用チップの調達量に左右されそうだ。しかし、サポーターが動けば、国内シェア16%は、到達可能だろう。しかし世界ではそうはいかない、Google抜きで、海外ユーザーと対話するのは難しい。
 
微子十八の六
 
『長沮桀溺耕。孔子過之、使子路問津焉。長沮曰、夫執輿者為誰。子路曰、為孔丘。曰、是魯孔丘与。曰、是也。曰、是知津矣。間於桀溺。桀溺曰、子為誰。曰、為仲由。曰、是魯孔丘之徒与。対曰、然。曰、滔滔者天下皆是也。而誰以易之。且而与其従辟人之士也、豈若従辟世之哉。耰而不輟。子路行以告。夫子憮然曰、鳥獣不可与同群。吾非斯人之使与、而誰与。天下有道、丘不与易也。』
 
長沮と桀溺が農耕していた。孔子が通り過ぎ、子路に渡し場はどこか尋ねさせた。長沮曰く、「あの馬車の御者は誰だい。」「孔丘です。」「魯の孔丘かい。」「そうです。」「それなら渡し場は知っているだろう。」つぎに桀溺に尋ねた。桀溺曰く「あんたは誰だい。「仲由です。」「孔丘の弟子か。」「そうです。」「世間の風潮に流される者ばかりだ。いったい誰を同志として世を変えるのか。人間を避ける孔子に従うより、世間を避ける我々に従うほうがよいのではないか。」と言い、種を蒔く手を休めなかった。子路が孔子に報告した。孔子、憮然として曰く、「鳥獣と一緒には暮らせない。人間と一緒でなければ誰と一緒にいるのか。天下に正しい道が行われるなら、私が変えることはない。」
 
(現代中国的解釈)
 
アリババ創業者、馬雲には、圧倒的な人気があった。経営の第一線を退く2019年前後には、彼の一挙手一投足が詳しく報道されていた。その報道量、存在感は、共産党幹部の比ではなく、中国のDX化、現代化の象徴であった。アリババでは2023年、大きな組織変更と人事移動が2度続いたが、裏で糸を引いていたのは馬雲といわれている。役職をはずれ、持ち株比率が大きく下がっても、可視化できない大きな力を保持しているのだろう。
 
(サブストーリー)
 
その馬雲氏がまた創業を開始した。今度は農林水産業である。アリババ通販サイトの「淘宝年貨節」コーナーに、「一米八旗艦店」というショップがオープンした。馬雲が設立した新ブランドだ。同ブランドを所持する一米八海洋科技有限公司のオーナーが、馬雲である。一米八の名前の由来は、世界中の母親は、子供が健康に成長し、身長180センチ以上になることを願っているから、という。ちょっとおかしな思考回路だ。彼自身が小男だからだろうか、と勘ぐってしまう。
 
その使命は、技術革新を通じて農業を向上させることという。消費者に高品質の食材を届
け、その農家はより高い収入を得る。一米八の旗艦店をみると、正月用とみられるギフトボックスに入った高級魚5アイテムが販売されている。馬雲は、なぜ自ら一店主となり、農水産品の販売を始めたのだろうか。
 
2021~22年にかけて、馬雲は世界の農業を視察している。浙江省、嘉興市のアリババのデジタル農業の現場、オランダのヴァーへニンゲン大学、日本の近畿大学水産養殖研究所、等々。ライバルの京東や網易(ネットイース)などを含め、中国のIT巨頭は、おしなべて農林水産業への関心が高い。
 
その理由は、通販プラットフォーム企業の成長余地が狭まる中、農業に大きな可能性を見出しているから、とされる。ある好調なライブ配信企業では、扱い商品の70%が食品という。供給、需要とも、最もポテンシャルがある食品から入るのは、常に変わらぬ正しい道に違いない。日本の通販大手は、アマゾン・ジャパンを除き、商品開発の話題が極めて少ない。脇道へ逸れている。

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