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#005 言語習得と音楽(中編)

こんにちは。ちょっと時間が空きましたが、前々回の「言語習得と音楽」の続きです。前々回の記事にも書きましたが、このシリーズで書いていることは飽くまで僕自身の実体験と自論に基づいていますので、教育のプロの方からみるとめちゃくちゃなことかもしれませんが、何卒ご容赦ください。

3.まずはとにかく「リスニング」

さて、「リスニング」から始めた方がいいということを前回書きました。
もちろん、リスニングが全てではありませんし、例えば中国語などのように、文字と音をセットでやった方がよい言語もありますが、大抵の場合はリスニングから始めるのが一番いいと思います。

まず第一の理由として、言葉というのは現代人の生活には欠かせないコミュニケーションツールであり、その中でも、私たちの日常生活の言語使用において、最も行っているのが「リスニング」だからです。一日の中で、何かを「聞いている時間」と「話している時間」、「読んでいる時間」「書いている時間」を比較すると、職業や家庭環境によってバラつきはあると思いますが、最も長く時間を費やしているのは、やはり何かを「聞いている時間」ではないでしょうか。家族・友人・同僚との会話、テレビやラジオ、映像作品等、言語を介して行われるもの全てを併せると、かなりの割合を占めるでしょう。また、前回も書きましたが、赤ん坊が言語習得する過程のスタートも、やはり聞くことから

第二に、会話のスタートは相手を「リスニング」するからです。単に会話と言っても、改めて考えるとたくさんの処理を私たちの脳は行っています。相手の発している音を①「聞き取り」、意味を②「理解」し、それに対するフレーズを③「組み立て」、④「音」として発する…という具合に。もちろんこれは「相手から話しかけられた場合のプロセス」ですが、恐らく「話すこと」に慣れていない場合は、なかなか話しかけるところ(③)から始められる人は、いないのではないでしょうか。仮に(③)から始めたとしても、③→④→①→②と、会話が成立するためには結局①を経なければなりません。

では、このリスニングを始めるにあたり、何が大切なのでしょうか。

4.「慣れること」の重要性

私たち日本人は基本的には日本で生まれ日本で育ち日本語を使って生活していますよね。ということは当然、日本語に「慣れている」わけです。この「慣れ」というものが、外国語会話において絶対なくてはならない要素だと私は思います。

例えば、私たちが日本語で日常会話をしているとき、それほど疲れを感じないと思います。ですが、単に日常会話と言っても、上述のように、私たちの脳はたくさんの処理を行っています。あれだけのことを休みなく行っているのにあまり疲れないのは、日本語でそれらを行うことに「慣れているから」にほかなりません。これが他言語だとどうでしょうか?恐らく同じプロセスでも、脳はかなりのリソースを必要とし、日本語の時ほど楽にはいきません。この差が「慣れ」の差だと思います。

車の始動に置き換えてみましょう。毎日のように車に乗っている人は、恐らく「ドアロックを空けて、ドアを開けて運転席に座り、ドアを閉め、
シートベルトを装着し、ブレーキを踏んでエンジンを始動し、サイドブレーキを下げてギアを入れ、発進する
」という動作を「ほぼ何も考えずに」出来ているはずです。これが、ほとんど運転しない人は、それほどスムーズにはいかないのではないでしょうか。車に乗る人全員免許を受ける際、学科や実技講習などを等しく受けているにも関わらず、です。
(これは免許を持っているのに普段ほとんど運転しない人たちをディスっているわけではありません。)
こうやって考えてみると、受ける教育そのものよりも自分自身の経験=慣れが形になって出てくる、ということです。

ではどうやって「慣れて」いけばよいのか?

5.教材選びのポイント

言語習得に限らずすべてのことに言えることですが、やはり結局、数多くこなすしかありません。今ではオンラインでラジオを聴いたり、外国人YouTuberを見たり、Netflixなどで外国ドラマを見る等、いくらでも「リスニング」はできます。

ここで自分の教材を選ぶ際に重要なポイントは二つです。一つは、自分の目指したいレベルと同等のものであること。もう一つは自分の好きな分野のものであること。母国語であっても専門外の話は難しくてできないことがあるのに、それが他言語にともなれば、ついていけるはずがありません。そして、自分の好きな分野のものでなければ、単純にモチベーションが持続しにくいという点と、既に自分が持っている知識が何らかの形で活かせる、という点からです。まずは、例えば音楽制作が好きであれば、自分の使っているソフトなどを外国語で解説している映像などを見てみる、というのも手かもしれません。

6.「スピーキング」の実践

さて次に、順番としてはリスニングの次、としていますが、できればある程度同時に進めていきたいのが「スピーキング」です。相手の言うことを完璧に理解できたとしても、それに対するお返しができなければ、会話が成立しませんよね。ですので、リスニングと同じくらいスピーキングは大事です。

このスピーキングですが、何も最初から相手が必要なわけではありません。
スピーキングはリスニングと同時に行うことができます。例えば、聞こえた音をそのまま自分で再現してみるのです。最初のうちは、上手く再現できないと思います。なので、ある程度再現できるように何度も何度も試します
このとき大事なのは、いちいち頭にその単語のスペルを浮かべず、飽くまで「音」として捉えることと、できれば「色んな声色を聞くこと」です。そうしていくことによって、発音もある程度は勝手についてきます。ネイティブばりに発音を極めようと思うと、それだけでは難しいかもしれませんが、最初のうちは「伝わること」が重要です。

7.一人喋り

そしてだんだん自分の中で単語の引き出しが増えてきたな、と思ったら、次に有効なのは「一人喋り」です。外でやったらギョッとされるかもしれませんが、ものすごく効果があります。例えば架空のシチュエーションを作って、喋ってみます。例えば「今日やったことを紹介する」とか。(僕自身も、これまでやってきた言語を忘れないようにするために「毎日」やっています。)
そうすると、自分の語彙力がすぐにわかります。出てこなかった単語を書き出し、調べてみます。こうやって自分が必要に駆られた状態で覚えた単語は、なかなか忘れません。単語帳を眺めるよりもよっぽど有効です。

ここでおや、と思った方がいると思います。「書き出す」「辞書で調べる」という部分です。そうです。ここで初めて、「リーディング」「ライティング」がちょっと必要になります。ですが、ここでは飽くまで「日本語→外国語」というプロセスのみです。ですので、和外辞典を使ってもいいです。ただしその際、その単語を書きとるだけでは意味がなく音としてインプットしなければいけません。カタカナ表記の発音ではなく、IPAを参照するか、最悪Google翻訳のウィンドウにその単語を入力してスピーカーアイコンをクリックすれば、よほどマイナーな言語でなければお手本の発音が聞けます。

そうしてから、自分のフレーズを完成させます。ここでもう一つポイントですが、それを「テキスト化しない」ことです。「テキスト化」した時点で、リアルタイムな自分のフレーズになりません。形に残したいのであれば、録音しておきます。私は、この録音しておくことを強くお勧めします。
時々聞き返してやることで、比較にもなりますし、自分も進歩を客観的に聞くことのできる唯一の方法だからです。

8.会話をする

さて、いよいよ次のステップが、相手のいる会話です。
ここは最初は色々な面でちょっと難しいですが、必ず必要なプロセスです。

外国人の友人がいたら相手してもらうとか、また今はオンラインの時代なので、スカイプレッスンやitalkiといったサービスもあり、時間のない現代人にとっては有効だと思います。このステップで最も重要なのは、「聞き」「話すこと」です。

常々言われていることですが、間違えることを恥じる必要はありません。目的は「意思の疎通」であって、「完璧な言葉をしゃべる」ではないのです。私たち日本人の深層心理的にはなかなか「堂々と間違える」ことが難しいのですが、これを取っ払わないとなかなか次に進めません。逆に外国人で日本語を学ぼうとしている人と話したことがある方ならわかると思いますが、
彼らは細かい間違いなんてお構いなしに話しますよね。

もうここまできたらはあとは深めていくだけです。
必要に駆られて、知らない単語を調べる表現法を身につける自分の知識にする。それを使ってみる。これらは全て、「リスニング」と「スピーキング」メインに行うだけで十分です。

9.後編へ

さて、またも長くなってしまった上に、今回は全く音楽との関連性がありませんでしたが、次回の後編では、言語習得をすることが音楽の分野にどのような影響を与えるのか、を書いていきたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
それではまた。

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