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第12回 60代からのシニア向け仕事説明会に行ってみた / Youtube用台本


イントロ

このチャンネルは、1978年生まれの就職氷河期世代の当事者である私が、目前に迫ってきた50代を見据えて「これから」を考える動画を投稿しています。

先日、某求人情報サイトが主催するシニア向けの仕事説明会に参加してきましたので、今回はそのことについてお話します。

以前、厚生労働省が主催する雇用支援の説明会に参加して、危うく洗脳されそうになったと、散々な目にあった動画を出しましたが、はてさて今回はどうなったのでしょうか。


60代はまだ先だけど、現在のシニアの労働市場を覗いてみることにした

私は現在40代なので、「60代からの仕事説明会」に行くには少し早いのですが、チラシに「60歳以上になっても働き続けたい40代・50代の方の参加もOKです!」と書かれていたので、なるほど、それもたしかに一理あると思い、足を運んでみたわけです。

老後に備えて、貯蓄や積立投資など、できる範囲で始めていますが、働き続けられるうちは働いた方が、色々な意味で良いに決まっています。

私は、死ぬまで働き続けることには肯定的なのですが、できるだけ楽しく働きたいとは思っています。

「年金もねぇ、貯蓄もねぇ」と悲壮感を漂わせながら嫌々働くのだけはまっぴらで、自分がやりたい仕事を、無理のないペースで続けられるようにするにはどうすれば良いか、という考えで、今から準備を進めています。

私が60代に突入する頃には、今と世相も異なるのでしょうが、2024年現在のシニアの労働市場を覗いておくのは、自分のこれからにとってプラスになるだろうと考え、「60代からの仕事説明会」に参加してみることにしました。


出展ブースの3割は介護で、警備・倉庫内作業・清掃がもう3割

参加企業は全部で50社でした。

業種ごとの内訳はこのようになります。

介護 17社
警備 7社
倉庫内作業 6社
清掃 4社
タクシー 4社
土木 2社
マンション管理 2社
事務 2社
コンビニ 2社
飲食 2社
スーパー 1社
コールセンター 1社

想像通り、介護関係が最も多い出展で、全体の約3割です。

残りの3割を警備、倉庫内作業、清掃で分け合い、その他の業種が残りの3割といった感じでした。

しかし、説明を希望する参加者の数は、これには全く比例していませんでした。

事務とマンション管理には人だかりができていて、介護は閑古鳥が鳴いていました。

意外にも人気があったのはコンビニで、事務と同じくらいの人だかりができていました。

飲食店の1つは個人経営のラーメン屋で、ここには誰も寄り付いていませんでしたが、もう1つは超有名なハンバーガーチェーンで、こちらはかなりの盛況っぷりでした。

コールセンターもなかなか健闘していた印象です。

事務職に準ずるというイメージなのでしょうか。

事務やマンション管理は、肉体的な負担が軽そうということで、人気があるのは想像通りでしたが、コンビニやハンバーガーチェーンが人気だったのは意外でした。

「どうしてなのだろうか」と興味が湧いて、観察を続けていたところ、あることに気づいたのでした。


元気なシニア女性はそれだけで職場の宝だと思った

コンビニやハンバーガーチェーンは、呼び込みや業務説明に、元気な女性を多く配置していたのです。

なんというか、それが嫌味のない明るさというか。

さすが日々の接客で鍛えられているというべきか、人に安心感を与えるような、洗練された明るさでした。

ニコニコと笑顔で、ハキハキと話し、テキパキと人だかりを整理していく。

そして皆さん、冗談も上手い。

話しかけられている人は、おじさんもおばさんも、思わず笑顔になっていました。

かくいう私も、「あら、お若い人ですわ!嬉しいわ!」と話しかけられて、思わずその流れで、こちらからも色々と質問させてもらうことになりました。

素直に「こんな明るいおばちゃんと働けたら、毎日楽しそうだな」と思いました。

昔、歌手で俳優の武田鉄矢さんが、ご自身のラジオ番組で「明るさとは性格ではなく技術である」と話していたことを覚えているのですが、ご年配の方が見せてくれる笑顔って、本当にすぐれた技術なのだと思います。

人間、歳を取れば取るほど苦労を知って、笑おうと思わないと笑えなくなると思うのですよね。

ご年配の方は「笑っている」のではなく「笑ってくれている」のではないかと。

だから、こんな自分なんかのために、明るく笑顔でおもてなしをしてくれることが、純粋に嬉しいし勇気づけられます。

コンビニや飲食店の業務なんて、見るからにハードワークですが、ノリと明るさで乗り切っていけるのかな、とうっかり騙されそうになります。

私もこういうジジイになりたいのですのよね。

なんかこう、歳をとっても、張り合いのある仕事のおかげで、妙に元気なジジイでありたいのです。

まあ、あくまで客として「接客」されているから良いのであって、いざ実際に同僚として働くとなるとそうもいかないかもしれません。

私はコールセンターで長く働いていますが、あの職場にいると、女性の怖さを嫌が応でも知ることになりますからね。

特に女性が女性に向ける敵意って、本当に怖い。

…っと、話が逸れそうなので、この話はここまでにしておきます。


おじさんが仏頂面で腕組みをして待ち構えているブースもあり…

対して、タクシーや倉庫内作業、清掃の企業の担当者には一言言いたくなりました。

ほんっっとに、暗いんですよ。

雰囲気が。

ブースの中に、地味でにこりともしないおじさん達が、ぶすっと待ち構えていれば、そりゃ誰も近寄らないですよ。

平気で腕を組んだりしてましたからね。

お客様の前では腕を組んだりしてはいけないと、どこかで習わなかったのか、と。

企業説明会においては、求職者はお客様みたいなものなんじゃないんか、と。

個人的な興味としても、Youtubeのネタとしても、一社くらいは話を聞いてみたいと思っていました。

今はまだすぐに転職する気はないですが、それでも60代・70代となってコールセンターで働くのもしんどくなった時、シニアの仕事の代名詞的なタクシー運転手や清掃員なんかはどうなんだろうと。

自分がシニアになってから、未経験者で応募してまともに相手をしてもらえるのだろうかと。

そういう部分を、せっかくだから聞いてみたいと思ったのですが、どうしても気が向かなくて断念しました。

あの有名な、麻生元総理が、ハローワークで若者に「今まで何をしていたんだ」と説教かました画像が頭にちらついて、話しかけられませんでした。(ただ、実はあの画像はワンシーンを切り取られていただけで、言われるほどひどい説教ではなく、むしろ親身に対応していたという話もあるのですけども)

例えば「いい歳して未経験で応募しても良いものですか?」と質問しようものなら、どんな失礼な暴言を吐かれるかわかったものではないな、と思ってしまったのです。

「は? 未経験なんていらねぇよ。仕事なめてんじゃねーぞ。しっし!」…みたいな。

当然仕事なので、仕事内容や待遇の良し悪しや、自分に向いているかそうでないか、という点も非常に大切ですが、一方で職場そのものが楽しそうかとか、人を大事に扱っているのか、という点はもっと大切です。

なまじ自分も歳を取って、実体験を伴った実感として、そう思います。


このような場所でも(このような場所だから?)、社会の縮図を垣間見たと思った

しかし、仏頂面おじさんの問題は、求職者の方でも観察できました。

出展している企業と同様に、求職者にも色々な人がいらっしゃいました。

基本的に求職者の方々は、私よりも10歳から20歳は上のシニア層なのですが、ニコニコと楽しそうにしている人もいれば、ブースをにらみつけるように佇むおじさんやおばさんもいました。

友達同士、仲間同士で来ていらっしゃる方は、当然のことながら楽しそうです。

「嫌になっちゃうね」という言葉とは裏腹に、ゲラゲラと笑っています。

中には、どこぞのNPOなのか、ボランティアなのか、大学生くらいの若い子たちが、シニアの方々に寄り添ってブースを回っている姿も見かけました。

実際に、それぞれの人たちが幸せなのか不幸なのかはわかりません。

ブースを孤独ににらみつけている人も、実は超お金持ちで、暇つぶしに働ける場所を探しているだけかもしれません。

仲間内で楽しそうにしていても、実はその中の人間関係に疲れている人もいるかもしれません。

本当のところはわかりませんが、私はこのような場所でも、社会の縮図を垣間見たと思ったのです。

仲間がいる人と、そうでない人の明暗が、こんな場所でもくっきりと分かれているように見えてしまったのです。

私は当チャンネルの動画を作りながら、やはり就職氷河期世代が「これから」幸せになっていくのには、コミュニティが鍵なのだという想いが確信に変わりつつあります。

この先、この国や社会がどう変化するにせよ、仲間がいればとりあえず死なずに済むはずです。

私は仕事をドロップアウトして、一時的にとことん孤独な生活保護生活を経験しました。

人間関係にも疲れていたので、一人の世界で癒されたことも事実ですが、同時に孤独の怖さも知りました。

些細なことが、異様に気になって執着してしまうのは、孤独であることの危険な一面です。

ニュースやネットで社会問題を目にした時、会社で仕事したり、仲間と遊んでいると、忙しくてそこまでどっぷりとはまり込むこともないのですが、孤独な生活だとほかに考えることもないので、一日中悶々とそのニュースのことを考えたりしてしまいます。

それが一概に悪いとも言えないですが、人付き合いで忙しい時間と、一人で思索に耽る時間のバランスが取れてこそ、健全な幸福感が得られるのではないかと。

たしかに、低年金などの問題でシニアが嫌々働き続ける問題は、社会問題として取り扱うべきでしょう。

それを仲間内で酒でも飲みながら「嫌だねぇ」とゲラゲラ笑い飛ばせる人と、ただただ孤独に怨念をため込んでいく人とで、受け止め方としてどちらが適切なバランスなのか。

どちらかというと、この動画をご視聴くださっている人と、動画を作っている私自身は、孤独側の人間であるのだと想像します。

自分の内側に隙間ができすぎていると、本来もう少し軽く考えていいはずのものも、重く考えすぎてしまうということが起こりがちになります。

その結果、一人で社会そのものを仏頂面でにらみつけているだけで何だか疲れ果て、何も行動できずに、悶々としているうちに一日が終わる、なんてことに陥ってはいないでしょうか。


なぜかわからないけど謎に元気なジジイになるために

冒頭でも触れました厚生労働省の求職者支援の説明会に参加した時と同様、ここでも当初想像していたイメージとはかけ離れた「取材」になってしまいました。

最初は、動画のご視聴者さまと、私自身が気になっている業界の担当者に話を聞いて、それをシェアする動画を作ろうと考えていました。

しかし実際には、企業側や求職者側の、それぞれのシニアの方々の人間観察を通じて、やや哲学的な思惑に耽る時間になってしまいました。

言い訳するようですが、そもそも60代を対象にした企業説明会に、40代の自分が参加して、思惑通りの成果を上げようとしたこと自体が、虫の良い話だったかもしれません。

会場に一歩踏み入れた瞬間から、己の場違い感がすごかったので、どうにも萎縮してしまい、思うように動いたり、話を聞いたりするということができませんでした。

それでも、20年後のリアルを、この目で確認できたことは大きな収穫でした。

老後なるものは、一人で立ち向かうにはあまりに強敵です。

まして、働かなくても良いくらいの年金や不労所得を準備できそうにないなら、なおさらです。

家族でも、友達でも、仲間でも、なんでもいいですが、寄る辺となるコミュニティがなければ太刀打ちできそうにありません。

「嫌になっちゃうねぇ」と言いながらも、盛り上がれる仲間が必要です。

自分には家族もいないし、友達もいない、と諦めている場合ではないです。

仕事よりも貯蓄よりも生きがいよりも、コミュニティのほうが、よほど今から準備しなければいけない、老後に向けた資産だと確信するに至りました。

人を集めるのには、明るさが必要です。

仏頂面で腕組みをして睨みつけても、怖がって誰も近寄りません。

そして明るさは性格ではなく技術。

技術を習得するには、己の未熟さを認める謙虚さも必要でしょう。

氷河期世代として、ここまで経験してきた辛い出来事も、明るさを育てる糧になるように思います。

この国には、シニアになってまで働かなくてもいい勝ち組がいて、そうなれない負け組のシニアもいる。

しかしその負け組に属しても、苦労こそあれど、あまり不幸そうには見えないシニアもいれば、全身から不幸なオーラを醸し出すようなシニアもいる。

ひょっとすると、今回は観察できなかった勝ち組シニアにも、同じ幸・不幸の属性による分断は生じているかもしれない(というか、まあ、生じているでしょう)。

私の価値観や結論を押し付ける気は毛頭ありませんが、私は幸福の源泉はコミュニティであるという自説がより強固なものになりました。

お金はもちろん大切です。

しかし、お金を得るために働くには、まず元気という資本が必要です。

では、その元気はどこから湧いてくるのか。

元気なるものも、お金と同じく、人と人の繋がりの中からしか生じない資本だと思うのです。

問題はおそらく、現代社会のどこに、どうやって、元気の源泉になりうるコミュニティを築いていけるか、ということなのです。

徹底的に国に見放された棄民世代である就職氷河期世代は、どこを拠点にして、何を拠り所にして合流すべきなのでしょうか。

答えはまだ見えませんが、探す努力は続けていこうと思います。

私は20年後、なぜかわからないけど謎に元気なジジイになっていたいからです。


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