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けっして忘れないこと

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忘れがたい思い出、大事なひとのこと、書き記しておきたい気持ちをまとめておきます。
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#随筆

8月 母の誕生日(けっして忘れないこと)

「鍛えておかないとね。足はすぐ弱るから」 いつもこうやって体操をしているのと母は病院のベッドの上、伸ばした足を交互に持ち上げて笑った。 手すりや歩行器、点滴の器具まで支えにして病棟の廊下をくるりと一周、母はひとりでよく歩いた。ポータブルのトイレを嫌い、無理やり許可してもらっての「お手洗いのついで」の散歩だ。無理をしてでもしゃんと伸ばした背中は、私は生きてここに居るのだ、そう宣言しているようだった。 廊下の突き当たりの大きな窓には、吸い込まれそうなくらい奇麗な夕焼けが広

浴衣 砂利道 虫の声

浴衣2枚が手術の時と術後に必要だと言われ、慌てて探しに行った。 もう9月で、時期はずれだったし、 小さな子供の寝巻用の浴衣なんていっても、なかなか見つかるものじゃない。店員さんに用途を説明するのも気後れしてしまい、数件回って古い商店街の雑然とした子ども服の店の棚の奥から、やっと見つけ出してそれを買った。その子に似合う色とか、可愛い柄を選ぶとか、そういう楽しみもなかった。 2枚の内1枚を着て手術に向い、後の1枚を着ないまま、その子は旅立った。生後間もなくから決められていた心