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人をいたわることは、見る目を変えること。映画「ワンダー 君は太陽」感想

「ワンダー 君は太陽」を観ました。

これは、顔に生まれつきの障害をもつ主人公が、様々なことを経験して成長していく物語――

と言ってしまえば終わりですが、それだけではありません。

これは主人公とともに、周囲の人々も「主人公と関わることによって」成長する、まさに「彼という太陽」の周りをまわる人々の物語です。

何より、こういった映画では必須ともいえる「感動路線に傾かなかった」ことが衝撃的でした。
まあ、映画の〆は傾きます。やっぱり。
上手く行きすぎ、という感想もあるかもしれない。

だけど主人公だけでなく、彼を取り巻く周囲の子どもたちや家族それぞれが主観となって話が進む場面が多々あり、困惑、かなしさや嬉しさ、ユーモアなどがちりばめられ、かなりの頻度で泣きながら観ました。(結局泣いてる)


簡潔にあらすじを述べます。

主人公オギーは、遺伝子の突然変異による顔の変形(トリーチャーコリンズ症候群)のため、入退院を繰り返し、自宅学習をしていました。
それが母親の勧めにより、5年生(中等部の始まり)から一般の学校へ通うことになります。

オギーはそれまで外出の際、宇宙服のヘルメットをかぶっていました。
彼の夢は、宇宙飛行士になること。
初めて足を踏み入れた学校という社会で、オギーは様々な経験をします。

それは想像の世界と全く異なり、痛く、つらく、心も体も削られていくことだったけれど、ジャックという友達が、オギーの心を支えてくれました。
ジャックとは、とあるすれ違いから、一時期仲違いをしてしまいます。
ですが、新しくサマーという友達もできます。

終盤、オギーをいじめた子が両親と共に校長に呼び出される場面で、校長が「彼は見た目を変えられない。わたしたちが彼を見る目を変えなくては」と言います。
私はその言葉の重みを、つよく感じました。
しかし彼らに校長の思いは届かず、結局学校を去ってしまったけれど。

冒頭でオギーは「僕の見た目は、”普通”とは言えない」と語っていました。

ですが、最後に「心の中がのぞけたら、みんなも普通じゃないと思う」と語っています。

家族から学校という、少しだけ広い社会に触れた彼が得た知見は、かけがえのないものでした。


以上が、この映画の大まかなあらすじです。

最初で述べたように、この映画は様々な立場から物語を構成しています。

家族だけの世界から、外へと飛び出して行ったオギー。
クラスで避けられていたオギーへ声をかけた、子どもたちの善意。
オギーをいじめるジュリアンの悪意、その元凶であろう彼の両親の高慢さ。

からかわれても「学校へ行きたい」と言うオギーの気持ちを尊重し、いつも彼を見守っていた両親。
オギーの姉ヴィアのやさしさと、オギー中心の家族への嫉妬と寂しさ。
そんなヴィアのことを、世界で一番大好きだと言ってくれた祖母。
突然ヴィアを避けはじめた親友が、実はサマーキャンプで自分の生い立ちをヴィアと偽り、人気者として過ごしており、それを後悔していたこと。

多様な主観を目の当たりにして、私は考えます。
果たして自分はその場で、的確な行動が出来るだろうか?

その疑問の答えとして、映画の中のある場面を挙げます。

オギーが最初に出席した授業では、格言について学ぶものでした。
そこで取り上げられたのは、「 正しいことをするか、親切なことをするか、 どちらかを選ぶときには、親切を選べ。」というもの。

本当は「親切」でさえ、主観でしかありません。

それが「迷惑」になるか「好意」と捉えられるかは、「どれだけ相手の立場を想像し、思いやっているかで変わるのではないでしょうか。

最後に挙げられる格言は、以下です。
「人をいたわれ。みんなも闘ってる。相手を知りたかったら、やることは1つ。よく見ること」

人とのかかわり方の学びはじめとして、また人とのかかわり方をうまく学べなかったわたしのような人間にとって、この映画は、とてもよい教えになったと感じています。


蛇足になりますが、私がこの映画で一番好きなシーンは、オギーの姉ヴィアと祖母が浜辺で座っているところです。

「世界中の誰よりもお前が大好きだよ」

おばあちゃんの、その台詞でもうだめ。もう号泣。もう嗚咽。

弟のことは大好きだし応援してるけど、本当は両親にもっと自分のことを見てもらいたかった、そんなヴィアの気持ちを誰よりも理解してくれた祖母。
祖母は亡くなってしまったけれど、その言葉を支えにして歩きだすヴィア。

自分の価値観がすべてではなく、相手の気持ちを思いやることの大切さ。

それを思い出させてくれる、いい映画でした。

「ワンダー 君は太陽」の制作にかかわったすべての人に感謝を。
ありがとうございました。

Photo by Mick Haupt on Unsplash

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