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天を見て地を知る、電離層の異常から地震の予知ができる

地震予知の鍵は空が握っているかもしれません。

これまでに大地震が起こる直前には、震源上空の電離層(電離圏)に異常が発生することは観測されていましたが、地殻変動との明確な因果関係については明らかにはなっていませんでした。

しかし京都大学の研究グループは、大地震発生の直前に観測される震源上空の電離層の異常が、地殻破壊によって粘土層の水が超臨界状態になることに起因することを報告しています。

同グループは、東北地方太平洋沖地震や熊本地震の直前にも、震源地上空における電離層の電子数の異常増加を観測することに成功しています。

この予測手法は、地震予知に向けての有効な解決策に繋がるのでしょうか?

この研究の詳細については『International Journal of Plasma Environment Science and Technology』に報告されています。


参考文献

元論文
A capacitive coupling model between the ionosphere and a fault layer in the crust with supercritical water
https://doi.org/10.34343/ijpest.2024.18.e01003


ライター:鎌田信也(Kamata Shinya)
大学院では海洋物理を専攻し、その後プラントの基本設計、安全解析等に携わってきました。自然科学から工業、医療関係まで広くアンテナを張って身近で役に立つ情報を発信していきます。


電離層で生じる異常事象とは

電離層の位置と役割。電離層は、電子密度が大きく電波を反射する層であり、太陽光の入射強度、大気の状態および地殻の変動等に応じて時間的、空間的に変化します。日本国内でよく見られる電離層の異常事象には、太陽フレア(爆発的な増光現象)を伴う通信障害であるデリンジャ現象や、電子密度が急激に増減する電離層嵐、主に夏の夜に突如発生するスポラディックE層等があります。/ Credit : 電気通信大学

電離層とは上空約60kmから800km高度に存在する、地球の大気と宇宙空間の境目に位置する領域であり、電波を反射する性質があります。

これまでに大地震が起こる前には、震源上空の電離層で電子数の異常増加が起きることが知られていました。

例えば日本では、2011年の東北沖地震、2016年熊本地震では、地震の発生直前に震源付近の電離層上空で異常が観測されたことがあります。

下図は、熊本地震の発生時刻の40分前(2016年4月16日0時45分)に、観測された上空の電離層の電子数の異常増加について、全国規模の評価結果を示したものです。

異常と判定された赤色の点が熊本県上空に集中していることが分かります。

熊本地震直前に観察された電離層の異常に関する全国規模の相関解析結果 / Credit : 京都大学

また地震のときには、電離層の位置がが20km下方へ移動したり、中規模伝搬性電離圏擾乱(MSTID)の速度が遅くなる、という事象も観測されています。

MSTIDは一種の波動であり、その異常はGPS信号や無線通信などにも影響を与えることが知られています。

このようなタイミングの一致は、地面の異常である地震と空の異常である電離層の乱れが無関係ではない可能性を示しています。

しかし電離層での電子の動きが地震と関わる詳細なメカニズムについては明らかにされていませんでした。

そこで、京都大学の研究者たちは地震と電離層の変化の因果関係を突き止めることにしました。


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