見出し画像

『奇妙頂礼地方都市秘話』(1)

【冷や汗】

 「世にも奇妙な話」みたいに出来すぎた、気味の悪い話--。その手の話を耳にすることは、人生で一度か二度くらいあると思う。人によってはそれ以上だと思う。

 三度以上あるヤツってどんな人なのか、想像には難しくないハズ。

 又聞きだったりするから、尾ひれもついて脚色される。それでもって自分も盛っているかもしれない。事実誤認があったりする。それもご容赦してもらえれば。

 というか俺自身は、「〜から聞いた話」ってオートマ式に膨らむから仕方ないと割り切っている。

 たまたま又聞きで耳にした、地元の奇妙な話のうちの一つを紹介したい。かれこれ14〜16年前のこと。もう時効だと思う。とはいえ表に出せない話だから、ひっそりと。

ここだけの話で頼む。

【その前に】


        ***
 地元について軽く触れておく。

一言で「寂れた地方都市」

 広い市だから、上はどこかの田舎な県に面していたり、右端は都市寄りの県に面していたり、東京が近かったり――。

 都と他県の風も吹く、ちょっと風変わりなところ。そんなハイブリッド地方都市なんだけれども、地元意識が何せ強い。その市に根を張る暴走族がイケイケだったりもした。「〜市/〜中出身、夜路四苦!」みたいな、振り返ると鳥肌の立つようなことを言ってたとしても、なんら違和感がなかったかな。

 俺らが平成生まれだから、暴走族なんて化石に近かったんだけれども、勢いが衰退していなかった。小学生で「チャンプロード」を読むのは、ちょっとワルなヤツの通過儀礼的なもの。そのあとのワルの道のりは、カンパをバックれて消えたとか。本職になったとか。今は立派な会社の社長だったり--ひとえに不良と言っても、それぞれのロードがある。ただ、原点はあくまてチャンプなんだ。

 じゃあ、そんなツッパリばかりかというと、違う。

 都会風なイケた先輩もいたし、オシャレ感度も高い。当時流行り出した裏原系を先取りして、SWAGGERやSupremeを着込んで「あー、ひと味違うな」なんて。シャレたヤツは同級生のなかにもいた。これも面白いんだけれども、クールかと思いきや、当時大流行りのWINNYとか、不正なサイトからレアな動画を仕入れたりする。自作でPCも組み立てられたり、と最下層に思えるオタク要素も兼ね備えていたりした。

 ハッキリ言うとイケてる。

 で、本当に「ヤバい」オタクもいた。これは説明するのが難しいんだけれども、実は腕っぷしが強いオタクがいた。キレると地元の有名な不良もボコした、なんて話も耳にした。ところが、プリキュア(あってるかな?)とか、いかにも、なアニメのファンだったりする。この二面性が怖いんだよね。オタク街道一直線なヤツは違法サイトから、ワケの分からない動画を拾ってきたり、ウィルスを作ったり。

 疲れた。
 まあ、それくらい濃いヤツらがいたとだけ。

【奇妙頂礼話】

 ここからが奇妙な話、その一。

 高校を卒業すると、18歳になる。俺の地元のあるあるネタの一つ――卒業してから「カラダ」を売る仕事に即効で就く、中学の同級生が多い。

 で、男もサカっているから風俗に行く。うえのツッパリじゃないけれども、18過ぎた男の通過儀礼みたいなもん。で、中学の同級生だった娘を引くなんて話も。

 気まずいから男は断ると思うでしょう?

 答えは違う。サカった、ケツの赤い猿みたいなガキに、制御できやしない。プレイした後にタメと鉢合わせた。アイツはいい、とかなんとか、武勇伝なワケない。ところが歌舞いた口ぶりで話す。キモいって思うんだけれども、話が弾むから面白いってなる。

 女は女で引いた同級生を「キモい」だのなんだの罵る。とはいっても、相手が客である以上、出禁には出来ない。それに女からしたら良い噂にはならない。「同級生の〇〇がウチの店に来て」なんて言えば、ピンサロ嬢やっているのを自己申告するようなモン。ここは買った男が有利になるもんだから、妙なパワーバランスで同級生との距離感を保つ。

 やたら風俗通な男が一人や二人は身近にいた。アンテナはつねに高くい。情報網は当時で言えば、光ファイバー並みに早く広がる。その手の野郎たちは、同級生の誰々がどこどこの店で働いているって情報を握っていた。

 今思えば、女はいい迷惑だったろうに。同情とまではいかずとも、女性が不利になるのはこの世の摂理みたいなものなのかな?後ろめたい情報は知人やらにシェアされて、拡散されるから嫌に決まっている。

 正直、こんなチンケなことで盛り上がっているのもダサい。なんだけれど男女ともにシェアされるネタだったから、成人式になるころには同級生が鉢合わせて気まずいハズ。なのに、お互い過去に(もしくは今も)店でバッティングしたことはナイショ。そんでもって店で寒い思いしながら、下がカチカチな男と、気まずい汗を流した女とが仲良くなっていたり。

 これが、地元の怪奇現象だったりする。

 ここからは勝手な見立てになるけれども、その「お寒い」契りを結んだヤツらのうち、何人かは、カップルになって結婚したのかもなんて思う。それで今ごろは離婚――。入り口から出口まで寒いと思えるけれど、まあ、当たり前っちゃ当たり前なのかも。

【ノスタルジー】


 SNSなんて発達していなくて、今ほど情報拡散力はなかった。デジタルタトューって言葉が浸透しているのか、していないのかよく分からない時代だった。二つ折りのガラケーが主流。愛嬌で許されていたのかもしれない。

 iPhoneがリリースされるやいなや、ネズミ講みたいなシステムでスマホを捌く先輩がいた程度。それは別な話か。

 <その二>を紹介するのは、気分になると思う。何せ濃すぎる。話としてまとめられるか不安ってのが本音。ただ、気乗りした時は付き合ってもらえるとうれしい。

         (了)

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?