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『映画、”ONE LOVE”を見終えて――』
“ONE LOVE”――。世界的に有名なレゲエアーティスト、ボブ・マーリー(以下、「マーリー」)の自伝的な映画です。まず、EMINEM主演の”8 MILE”のように、底辺からのサクセスストーリーを期待している方は残念。ネタバレになりかねないので、理由は割愛。
次にマーリーと言えばガンジャと思って、合法化・大麻の解禁の方向に映画の話が進行すると期待している方も残念、そのようなメッセージ性は(ほとんど)ないです。
なにが焦点か――。音楽を武器にした革命家としてのマーリーの姿と映りました。国内の政治情勢が悪化する1970年代に、時代の寵児として活躍した彼の軌跡が主題と言っても過言ではないでしょう。
「音楽で平和を実現」と、無理難題な壁を克服しようとする姿には音楽家としての姿だけでなく、芸術の力を信じる、屈強な精神がみなぎっていると思えました。魂を込めて、いや、魂を削ってでも実現してみせると、マーリーの決意がひしひしと伝わる映画と位置づけたいところ。
音楽を創作するだけなのに、見舞われる災難の数かずや抑圧――。跳ねのける弾力が存分すぎるほど胸に響きました。
一方、先述の通り「底辺から伝説へ」といったナラティヴは欠落している。すでに活躍しているマーリーの躍進にスポットライトが当てられている気がしました。
幼少期の困難や苦難といったものは、多く語られません。「伝記」の色合いを帯びながらも、その話は一部にとどまると、あらかじめ認識するほうが、過度に期待をもたずに、気楽に楽しめるでしょう。
総じて、マーリーが「どう」活躍したのかより、「実現したいこと」は何か、その点を主題としている。寂しさもあります。というのも、彼の負の側面――不倫や苦境――が削られすぎているように思えたから。
そんな寂しさもありながらも、胸に刻みたいメッセージ。それは、たった一人の、ミュージシャンの「平和」の道を音楽で模索する、果敢な姿であると締めくくります。
(了)
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