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クリーニング沼<中編>
「出身地」で人を判断する人がいるらしい。
お前は能天気だから「○○県」、お前は寡黙だから「○○県」。
これは一概にも否定できないかも知れない。
私は某クリーニング会社に入社し、某工場の「生産管理職」を任された。
(詳しくは前回のエピソードを参照)
では、この会社の「生産管理」の仕事とはどのような内容なのか。
軽く説明をしよう。
「生産管理」の仕事内容
この工場には約10店舗からお預かりした「衣類」が1日に2回届くシステムになっている。
毎日大量な「衣類」が届き、納期もとてもタイトだ。
①.ワイシャツは午前お預かりなら「夕方」お渡し可能。
②.その他は基本的に翌日にお渡し可能。
このような謳い文句で、低価格で回転率勝負な「手法」の為、現場はいつも余裕が無かった。
配送担当がルート順に「衣類」を回収し、その「衣類」は1つの大袋に詰められており、まるで「米俵」状態で届く。
それを開封し「ドライ」(油)か「水洗い」かに仕分ける作業をおこなう。
それが私の仕事だった。
この仕分けの作業は「洗濯表示」を観るのが確実な方法だが、そんな時間はこの工場にはない。
そこで教わったのが、手で触れ「材質」で判断するやり方だった。
簡単に言えば「綿」は水洗い、「ナイロン/ポリ/レーヨン系」はドライで洗えと指導された。
ここで万が一「ミス」を犯し、衣類に不具合が起きてしまった場合、どうするのか。
それはお客様に連絡し、まず「謝罪」する必要がある。
それも私の仕事だった。
ちなみに他の作業者が衣類に「穴」や「キズ」を付けてしまった場合でも、その対応は私だ。
俗に言う「クレーム処理係」だった。
業種の中でもトップクラスのクレーム率
ではどんな「クレーム」が来るのか、簡単にまとめてみた。
・「穴があいているんだけど」
・「色が落ちているんだけど」
・「キズがあるんだけど」
・「デニムの色が落ちすぎなんだけど」
・「アイロンが下手なんだけど」
・「異臭がするんだけど」
・「ボタンが割れてんだけど」
・「シミが全然落ちてないんだけど」
・「子供の制服が縮んだ」
これらは代表的な「氷山の一角」である。
この「クレーム」の大半は「弁償」で落とし込まれる。
ここでポイントだが、ヒトによっては「弁償」では済まされないと主張する方も出てくる。
「思い出の服なんだゾ!」
ちなみに「法律」ではこの「思い出」を保証する必要はないそうだ。
そして「弁償額」は着用年数が長ければ長いほど低くなる。
つまり「全額弁償」はできないのである。
このことを仮に「感情的」になっている方にお話した場合、どのような態度を取るか。
もう想像できるかと思います。
「法律では」という理屈が通用しない状況がそこにはある。
「火に油を注ぐ」という言葉がまさにピッタリなのだった。
思い出に残る「三大クレーム」
①.60代職人のパート社員が「喪服」のラペル折り返し部分を間違った位置で「プレス」してしまった。(修正不可) 激怒したお客様に「自宅」まで呼ばれ叱責。「購入金額は12万」。翌日法律上、全額保証できないと伝えると、また「自宅」まで呼ばれて叱責。結局「全額保証」した。 この60代の職人にこの事を伝えようと試みたが「マネージャー」に止められた。 ヘソを曲げられると困るそうだ。 しかし「注意指導できない」ということは、また同じことが起きるということなので、何も解決になっていなく、再発を恐れてながら仕事をすることになる。誰もそれを気にしていない。
②.黒い女性用コートを洗濯後、「ボタン」が取れて紛失してしまった。これを電話でお客様に説明したが、その夜「自宅」まで来るよう指示された。まっていたのは旦那らしき人で「弁償しろ!」と叱責してきた。後日、工場でその「ボタン」が発見され再度お客様に連絡をしたが、「そう来たか!」と言いまた夜「自宅」へ呼ばれた。(マネージャーと2人で) 今度はそのボタンが無いと告げられた期間の「キズついた心の保証をしろ」と言ってきた。 コートの金額は「3万円」と言ってきたが、事前に「洗濯表示」に記載されている「しまむら」に電話したところ「3千円」と返答あり。 「脅迫と詐欺行為」に近い手口でお金を取ろうとしている魂胆は見え見えだった。約3時間「クリーニング代は無償にします」という保証を押し続けた。 頑なに「弁償しない態度」を取っている我々に、しびれを切らした「当事者の女性」が、同行していた「女性マネージャー」の肩を「もう帰れ!」と殴りつけた。 これを我々は「暴行」されたと認識し、話し途中で外に出た。その後このお客からは一切連絡は無い。
③.「濃いデニムパンツ」が色落ちして、付いている白いパッチに移染してしまった。 これはこの「パンツ」の特性だと説明したがお客様は納得していない。 そしてその後、某店舗から「刺青している男の人が店にきています」と連絡があり電話を代わると「今から来い」と言われ某イオン駐車場に出向いた。 そこには「黒塗りのセダン」に乗った男が数名待っており、私を囲んだ。「弁償ではなく同じ物を作れ!」と言われた。 なぜならもう販売していないからだそうだ。 その後、私は前職の「アパレル業」を活かしメーカーに電話し「サンプル室」で1つ作ってくれないか交渉をした。 メーカーは特別に「正規単価」で了承してくれた。 お客様と再度某イオン駐車場で合い「作ったパンツ」を渡すと「コピー品だったら訴えるぞ」と一言いいその場を去っていった。
(以上、三大クレームも氷山の一角に過ぎません)
このような経験をしてきたが、ここが「関西地区」だったらどこまで追いつめられるのか?と身震いしてしまう。(偏見?)
毎月必ず数件の「クレーム」を処理し、色々な「人間」を見てきた。
人は自分が「被害」にあったり「正義」を手にしたりすると「攻撃的」になることがしばしある。
「自分は今、強い立場に立っている」そう思う人がいるからだろう。
「現代社会」に不満を持っている人ならば「はけ口」と思うかも知れない。
だが基本的に物事は「感情的」になった方が負けなのだ。
この「クレーム」を少しでも解消させる方法を私は知っている。
それは「料金を上げお客の質も上げる」という手法だ。
上層部での「営業方針」に現場はいつも悲鳴を上げていた。
影に潜む「クレーム」の闇と「納期」との戦い。
次回ラストを飾ります。
クリーニング沼<後編>につづく
■次回予告:黒い企業の巧妙なテクニック。
あなたならどうする? 乞うご期待!
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