見出し画像

人生を諭すカーナビ<前編>

※このお話は「新車」を購入して半年経つ、ある「空想の世界」の20歳の若者の話である。

それはこの車に内蔵されている「カーナビ」の声がことの始まりだった。


「新車」を購入して半年経つこの若者は、ある日「初めて」車のカーナビを使った。

若者
「さてと、○○病院○○病院と・・・ピッピッピ!」

カーナビ
「○○病院に行くのかい?兄弟!」

突然のことで驚く若者。

若者
「カーナビが話しかけたよ!」
「どーなってんだ?!」

カーナビ
「何驚いてんだよ、俺の名はニック!お前は?」

若者
「お、俺はヒロ。マジで喋れんの?」

ヒロはこの時「非現実的」な場面に直面しながらも「AIの進化」という簡単な理由で片づけたのであった。


カーナビ・ニック
「何ぼんやりしてんだよ、ヒロ!早く出発しようぜ!」
ヒロ
「そ、そうだな。じゃあ行こうか!」

車の走行音
「ブォーーーーン!」


今日の運転目的は足を骨折して入院した「いとこ」のお見舞いに行く為だった。

「隣の市」の行ったことのない病院だったので「初めて」カーナビを使ったのだ。

カーナビ・ニック
「そうかいそうかい。それは気の毒になぁ。」

ヒロ
「そうなんだよ。まさか階段から転げ落ちるなんて、まるでドラマだよ。」

ヒロはこの時、本当は助手席に座っている「幽霊」とでも話しているんじゃないかと仕切りに隣を確認したが、勿論誰もいない。

やはりこれは「AIの進化」と認める。

そう受け入れた方がいい。


そう思ったその時だった。

カーナビ・ニック
「ヒロ、少しスピードを出し過ぎていないか?」

ヒロ
「え?まぁ、確かに法定速度を少し超えているね。」
「だけどこの道は皆そうだし、安全だよ。」

その言葉を耳?にしたニックはヒロを諭すようにこう口にした。

カーナビ・ニック
「そうかも知れんが、もし事故を起こしたらその被害を受けた人 ご家族、更に君の家族が悲しむだろうなぁ。」

更に

カーナビ・ニック
「安全って言ったが何を根拠に安全というんだ?イレギュラーな出来事とは何の前触れもなくやってくるもんだ。」「悪い事は言わない。今すぐ速度を緩めよう、兄弟。」

ヒロ
「わ、わかったよ。」

ヒロは車のアクセルを緩め「速度」を下げた。

カーナビ・ニック
「そうだそれでいい。君は最高の男だよ!」

ニックはヒロの心のケアも忘れない。


ヒロはこの時このカーナビの「AIモデル」は警官ではないかと浅はかながら思った。

「・・・この先しばらく道なりです・・・」

道案内ナビは「普通の機械の声」だった。

何だか「コント」のような現象が起きているな・・・

ヒロがそう思ったその時、またニックが喋り出した。


カーナビ・ニック
「そういえばいつも独りで運転しているけど、ガールフレンドはいないのかい?」

ヒロは痛いところを突かれたと思った。

ヒロ
「元彼女にフラれてから2年は経つかな。中々出会いがなくてね。」

その言葉を耳?にしたニックはヒロを諭すようにこう口にした。

カーナビ・ニック
「君に俺の価値観を植え付ける気は無いんだが、思うにもっと行動的になった方がいいと思うぜ。」
ヒロ
「行動的ってつまり、ナンパしろっていう意味?」

カーナビ・ニック
「いやいやそんなダイレクトな言い方はしないさ。」「でも君の走行履歴を見るといつも同じじゃないか?」「俺が言いたいのはもっと行動範囲を広く持ってっていう意味なんだ。」「海や山に行くだとか、ジムに通うだとか、料理教室に通うだとか、もっとたくさん視野を広げてみないか?」「君ほどの男だ。きっと誰かが君を見ていてお付き合いしたいなと思うに違いないよ。」「まぁ、保証はできんがね。」

ヒロ
「そ、そうかな。」
「ありがとう、もっと行動的になってみるよ。」

ヒロは最後の「まぁ、保障はできんがね。」というオチが気になっていた。

そしてこの「カーナビ」はちょっと「普通じゃない」と、また再度思いながらこの「珍道中」事故が無いように「アクセル」を緩めるのであった。

「・・・約300m先 左方向です・・・」


<後編>へつづく


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?