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追憶ノ彼方 〜海と友達と、何故か仕事と〜

気付けば、海に来ていた。

大学の頃の仲間が15人程おり、岩場の上で簡易的なステージ設置の仕事だった。

そう、ステージ設置の仕事で来たのだった。

設置目標の岩場から海はまだ遠く、波の心配は無く作業に取り掛かろうという所だった。

が、突然、岩場に波が被ったと思うと、潮が満ち出した。
上がる水位は、寄せては返し、みるみる俺たちのいる岩場を波で洗い流してくる。
ふと目線を変えると、そこには碧く美しく荒れ狂う海があった。

中止だー。

そう思った時には、俺ともう1人以外のほぼ全員、浜に向かって飛び込んでいた。心配してこっちに向かって泳いでくる人もいたが、危険だから引き返してと諭した。

寄せては返す波と、浜から助けに来てくれた友達はまた海に飛び込んだ。

俺は寄せては返す波のタイミングを見て、ここだ!と、目一杯寄せた波に飛び込んだ。
そのまま一気に潮が引き、浜の方に流されていった。
驚いたのは海の中だった。
水面は荒れているのに、碧くキラキラと穏やかな海中は優しくて、美しかった。
その光景に息を呑んだ。

時は飛んで、いつかの日の夕暮れ時だった。
バンの後ろのスライドドアを開けっ放しにして、職人と話していた。
2人とも現役でベテランの渡邉さんと引間さんだった。

あげますよ。と俺は言った。
引間さん自前の通信機器を勝手にあげると揶揄っていたのだ。

今日、何するの?
いつものトーンで聞いてくる職人さんに、ステージの設置だ、と俺は言った。

既に夕方近くで、雨の恐れもあるから、防水のシートを張るという様な算段だった。

シートを切る時に刃物を使うから手元に注意して作業をお願いします。と俺は言っていた。

まるで海の現場中止からの2つ目の現場の様な感じがした。

戻ってくる途中に、最後は少しだけ変な感じがしたが気にもせず俺は目覚めた。
飛び込んだせいか、身体が濡れている様な気がしたが発汗によるものだった。

起きて珍しく意識がクリアだった俺は、すぐに観た夢を調べた。

何となく当てはまった。
夢占いや夢の研究は凄い。
オカルトも多くあるが、科学的根拠があるものもある。
人の深層心理や肉体の状態から推察しているのだろうが、ほぼ当てはまる様になっている。

だが、求めていた答えは無かった。
夢の中での感情に説明がつかない。

夢の中で、俺は誰だったのだろうか。
珍しく観た海の夢が気になる。


そんなある寒い日に観た夢のおはなし。

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