40代フリーランスママ:ご縁が命、翻訳チェッカー
今、日本語⇔英語、日本語⇔中国語の翻訳チェッカーをしています。しかし、わたしは英語も中国語もネイティブレベルではありません。すごいわけでもないし、かといって全く話せないわけでもない、中途半端な実力です。
そんなわたしが、まさかフリーランスとして「翻訳チェッカー」としてお仕事をもらえるようになるとは思っていませんでした。もし、翻訳チェッカーになりたい方がいらっしゃったり、翻訳チェッカーに興味があるかたがいらっしゃたら何かの参考になるかもしれませんので、わたしの翻訳チェッカーとしての始まりから今までを紹介することにしました。
翻訳チェッカーのお仕事とは
翻訳チェッカーとは、翻訳者の翻訳と原文を照らし合わせ、抜け漏れ、誤訳、表記の間違いないかチェックを行う作業です。翻訳者と翻訳チェッカーを両方引き受けているかたもいらっしゃいます。
一般的に翻訳チェッカーは翻訳者よりハードルが低いとされています。語学能力の要件も、翻訳者より低く設定されていることが多いです。そのため、翻訳者より、単価・レートは低いです(苦笑)。
わたしは翻訳チェッカーが9割、翻訳が1割ぐらいなので、ほぼ翻訳チェッカーです。うまく言語化できないのですが、翻訳チェッカーと翻訳で使っている思考回路は少し違い、翻訳チェッカーのほうが向いていると感じています。
突然やってきたチェッカーデビュー
わたしの翻訳チェッカーのデビューは突然やってきました。会社員退職直前の有給休暇取得中に、中国語の先生から、翻訳コーディネーターさんが翻訳チェッカーを探しているというお話がありました。
このお仕事は、前職で実際に対応したことのある「個人情報移転」の分野だったこと、結構レートがよかったこと、そして暇だったこともあり(笑)、飛びつくようにお引き受けしました。
わたしは、あまりに急だったため、翻訳学校での勉強もせず、トライアルや試験は受けずにお仕事をスタートしたことになります。(なお、その後に翻訳トライアルを受けて、無事合格しました)
チェッカー停滞期
その後、まったくお仕事が来ない時期がありました。というのは、わたしが仕事をえり好みしていたからです。
翻訳者や翻訳チェッカーはたいてい、自分の「レート」を持っていて、翻訳会社に伝えています。1文字あたりいくらか、時間当たりいくら、です。翻訳コーディネーターさんたちは、翻訳案件があると、レートに沿った翻訳者と翻訳チェッカーをアサインします。
チェッカーの仕事は低単価。3000以上の語句リストと数ページ以上のワード資料の語句チェック照会作業で、1文字1円以下、3000円ももらえない、なんてザラです。一つの会社の中で「担当者」として翻訳チェックをしていれば、また同じ仕事が来る可能性もあります。しかし、フリーランスだとたいてい1回きりでおしまいです。毎回毎回、新しい分野、新しいクライアントの用語を覚えなければなりません。
そして、翻訳チェックの質が悪いと、次回、翻訳コーディネーターに声をかけてもらえるチャンスは減ります。毎回、最良、最善を尽くすのに、次のお仕事の確約がもらえないことを苦しく感じました。
自分を守るため、わたしは低単価・短納期のお仕事はお断りするようにしました。数回お断りすると、やがて仕事が来なくなりました。
自分が辛くならないようにお仕事を選んでいたはずなのに。どうしてだろう。と悩みました。
今なら理由がわかります。わたしには「きっと断ってもまた次声をかけてもらえるだろう」という甘い考えがありました。「チャンスはすぐにつかまないと逃げる」フリーランスの厳しさをわかっていなかった、としか言いようがありません。
転機①経験と割り切ってレートを下げる
思い切って、翻訳会社に「今は時間的に余裕があるので提示レートより低くてもお受けできます」と伝えました。
「安易にレートを下げてはいけない」と思いましたが、ヘンなプライドにしがみつく必要もない、と割り切りました。
その後、いくつか案件を振ってもらえることができました。正直、「これだけ頑張ってこれだけしかもらえないのか」と失望することもありました。でも、仕事があるだけでも少しは気がまぎれるものです。最良、最善の結果を出せるよう、翻訳者さんたちに敬意を払いながら翻訳チェックをしました。
転機②コーディネーターに会いに行く
登録している翻訳会社の25周年記念パーティーに参加しました。翻訳チェッカーの分際で行っていいのか悩みましたが、招待状が来たので、エイ!と参加してみました。
知り合いは一人もいなかったけれど、翻訳会社の代表取締役、わたしのトライアル合格を伝えてくれた管理職の方、案件を割り振ってくださるコーディネーターの方々にお会いし、日ごろの感謝を伝えました。
そうしたら、パーティー参加後、定期的に案件依頼が来るようになりました。同じクライアント様からの継続案件が増え、翻訳チェックの質も上がり、チェックにかかる時間も短くなりました。定期的な会議の翻訳チェックも担当させてもらい、次回の案件依頼見込みも立てられるようになりました。
意外だったことは、日本語⇔中国語、日本語⇔英語、という案件に加え、英語→中国語の翻訳チェックいう新たなカテゴリのお仕事もいただくことができたことです。
チャレンジしていれば、もがいていれば、前に進めるのだ、と実感しました。
AI翻訳で翻訳業界は終わりなのか
「AIの便利な機能を使うと簡単に翻訳ができる」と言われる昨今。たしかに、原文を入力ボックスにコピー&ペーストし、ボタンを押せば、数秒で翻訳結果が表示されます。AI翻訳専門の翻訳会社もあります。
「AI翻訳があるから翻訳業界は斜陽だ!」というかたも多いのですが、実はそうでもないのではないか、と思っています。
まず、翻訳業界では以前から機械翻訳の研究を続けています。機械翻訳と人の手による翻訳を比較し、機械翻訳の進化もずっと見続けています。翻訳者も、機械翻訳の得意・不得意について基礎知識があります。
そして、翻訳者は、その翻訳文が、「いつ、どこで、だれのために」使われるのか考慮したうえで訳文を作ります。特に日本語の敬語の使い分けなどは、最新の注意を払います。こういった作業は機械翻訳ではできません。
数秒で翻訳結果が出るAI翻訳と、人による翻訳は別物なのです。
冒頭にも書きましたが、翻訳チェッカーは、原文と訳文をしっかり照らし合わせて点検する仕事です。
AI翻訳が流行れば流行るほど、質の悪い翻訳が市場に出回ることになります。そこで求められるのは翻訳をチェックする力ではないかと考えています。
今後も翻訳チェッカーの活躍の場面はあると信じています。
ただ、翻訳者に依頼をするより安上がりだからとAI翻訳の翻訳チェックを安価で依頼してくる案件はきっぱり断ります。このようなクライアントは、依頼内容を読めばすぐわかります(わかるようになりました)。翻訳チェッカーを目指している方はどうぞお気を付けください。
まとめ
フリーランスとしてこの先生きていくには、「困ったら自分から声を上げること」「人に会いに行くこと」が大切だと感じています。人に会って、自分が今どんな状況か伝えれば、いつか道が開ける。そう信じています。
レートはまだそこまで上がっていませんが、時間あたりの効率が上がれば、自然とレートは上がってくるはずです。
かつて、キラキラ起業を目指していたころ「自分を安売りしてはいけない」とよく聞きました。「単価を下げてはいけない」「時間労働になってはいけない」「自分が苦しむだけだ」「フリーランスは労働者よりもひどい状況になる」とまでアドバイスしてくださった起業家のかたがたもいらっしゃいました。
今のわたしは、たしかに法に守られた正社員と比べれば弱い立場かもしれません。しかし、自分の力で案件を取ってこれる自信が付いたのは大きな収穫でした。
もう少し、こんな状態でがんばってみようと思います。明日も日本語→英語と日本語→中国語の翻訳チェックが待っています!
本記事の内容に基づき、翻訳のお仕事が来なくなった時の対応を書きました。よかったらこちらもどうぞ参考にしてください。
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