見出し画像

余命1ヶ月だった私へ~治療編④~


出てきた胸水は、実に見事な赤色でした。
まぎれもないガンが転移した胸水です。
患者さんの胸水で見たことなかったものが、自分の肺から出てくると衝撃です。

そして困ったことも分かりました。
長期間、胸水が肺にたまっていたことで、左肺の底あたりが一部潰れていたのです。
そのため、身体に必要な酸素が足りず、酸素ボンベや車椅子での移動が必須となりました。
身体に対して、ほんの1~2センチ程度です。わずかな量と言っても過言ではない。
ですが、そのわずかで、酸素が足りないのです。
人間の体は、本当に過不足なくできている。
ドクターからは、これ以上潰さんようにリハビリせんとな、と言われ、ピークフローと呼ばれる簡易の呼吸リハビリを行う器具を渡され、ベッドでしょんぼり吹いていました。

胸水を抜くと、2リットル近くの赤い水が抜けました。この水をためたまま、人間はそれでも呼吸ができるんだなと妙に感心していました。

その夜は、身体をまっすぐに横たえて眠れました。
が、翌日からもう無理でした。
深呼吸すると、胸の奥から、水のようなコポコポという音が聞こえます。もう胸水がたまりだしているのです。身体を横たえると、とたんに息苦しさが出てきます。ゼイゼイと、まるで喘息のような息苦しさでした。

眠いのに眠れないので、看護師さんにお願いして、「離被架」という道具を借りました。これは、ギプスをしている部位に直接布団が掛からないように、でも身体を暖めるようにするための、半ドーム型の骨組みのような道具です。これをギプスの上にかぶせ、さらにその上に布団をかぶせるのです。
これを使い、自分の下半身を入れ、体を起こし、その上に布団やクッションを乗せてから、それに抱きつくようにして眠ります。この格好で、ようやく眠れました。
これを専門用語で「起座呼吸」と言いますが、これに離被架を使うと思いつけたのは、我ながらナイスと思いました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?