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いみじくも奇しき幻、ゆめ、匂い…
こそ忘れぬ

わたしは女を目で撫でるのが好きだ
わたしは藤田嗣治が描く女が好きな理由がわかった
なぜなら私も同じなのだ…
そして藤田が面相筆にこめた想いも…

17の時… テキスタイルデザインを始め
夢中になった道具は面相筆だった
美しき花々を優しく艶やかに描くには一番適した筆だった
特にお気に入りは「土生天祥堂」のイタチ毛の面相筆だった
鋭くまとまった毛先は美しく… その穂先は…
指先の感覚をそのまま線に化するしなやかな弾力は…
どこか淫美に…

目で愛で… そのざわざわと溢れる心を筆先でなぞる…
それは指先で舌先で女の肌をなぞる艶やかさ…
わたしは興奮し夢中になった…

しかし今は…
その面相筆に変わりPCのモニターの中で…マウスとペンを走らせている…
そして変わらず… わたしは女を目で撫でている…
ざわざわと溢れる心を二本の指先でなぞっている…


私にとってのセックスは五感全てだ
特に視覚と嗅覚に蠢く…

ただ挿入だけのセックスはなぜか虚しくなることが多いのだ

やわらかな…包み込む光の中で
時を忘れ…目で撫でる…



女が女になる美しき身体と細やかな悦びの顔ばせ…
微かに漏れる悦楽の息衝き…
目で触れる肌の全ての細胞に記憶される愛するぬくもり…
甘しょっぱく…甘酸っぱく…滲み出る
生々しく獣的な汗と体液…匂い…

そして現実と虚構の間を行き来し
惑わし…昂揚しながらもなぜか安らぐ時の流れ…
その一つ一つを
全てをゆっくり味わい…楽しみ…愛しみ…
こころの奥に刻印したいのだ


いみじくも奇しき幻、ゆめ、匂い

香こそ忘れぬ

ああ…また…朝がやってきた…

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