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自由で不自由な、今を謳歌する

4月1日、陽気な春をあびながら、新入社員が新しい舞台へ足を進める。

一方で、少し足を止める人、後退していく人もいる。

僕も、その一人である。


3月31日、タイムラインを見ていると、「退職しました」「お世話になりました」など、つぶやきがいくつかあった。周りから惜しまれたり、応援されて巣立っていく人たち。

それを見て、素直にうらやましいなと思った。

僕は、胸を張れるような立場ではなかった。辞めるという、後ろめたさがあったから。次につなげていく人もいれば、僕のように足を止めて、生産性のない日々を過ごす人もいる。

そんな僕の、退職後は華やかでも、絶望でもない、『リアルな現実』だった。


退職したら世界が変わると思っていた、あの日。

新卒で入社した会社を、辞めたいと思ったのは、入社一年目を終える3月。毎朝、片道2時間かけて出勤していた僕は、朝7時前に家をでて、帰宅するのが夜の12時前だった。

体力的な問題と、仕事がうまくいかないストレスが蓄積されていく日々。たまらず、友人に相談すると「いますぐ、辞めちゃえ」と、笑いながら言ってくれた。

その翌月、会社を辞めた。

一年で辞めるのは、後ろめたい気持ちもあった。ただ、頭の中で選択肢が浮かぶと、それから逃げられなくなる性格で、自制心がきかなかった。

辞めたら「自由になれる」「世界が変わる」と、思っていた、あの日。辞めても、世界が変わることはなく、時間は同じように流れた。

新しいことに挑戦しようと、最初は勉強をしていた。でも、日に日に堕落し始めた。ゆっくり、ゆるやかに後退していく。イメージとは違う現実、そこは自由だけど、どこか不自由な居心地だった。

会社を辞めても、世界は変わらない。人もそう簡単に変わらないし、変えられない。良くも悪くも、これが23歳に突きつけられた『リアル』だった。


遠のいていく人生のレール

社会に出てから、自分が納得できる成果が残せないでいた。だから、自分の職種を誇らしげに語るのが苦手だった。

年々、人生のレールから遠のいていく感覚がある。乗り遅れたレールが、遥か向こうの空気で霞んでいるような気がする。

逸れることなく、レールを進み続ける人たちを思うと、ときどき不安になる。街なかで、サラリーマンとすれ違うたびに、木の枝にぶつかるような感覚だった。

辞める前より、辞めたあとの不安が大きいことぐらい、わかっていたはずなのに。そんな時にかぎって、働いてた自分にあこがれるのだから。


変わらずにいてくれる存在

不安が募り、自暴自棄になりかけたこともある。そんな状態でも、変わらずにいてくれるのが、家族や親友だった。「やさしくいてくれる」存在が、心の支えであった。

逆に、その「やさしさ」がツラいと感じることもあった。同じコトを、シン・エヴァンゲリオンで見たのは記憶にあたらしい。

「どうして、みんなボクにやさしいんだっ!」

自暴自棄になるシンジくんが、やさしさに耐えきれなくなるシーンで、僕のATフィールドも耐えきれなかった。

やさしさは、素直に受け取るものだ。と、思うようにした。

今できることは、そのやさしさを胸に、自分らしく生きていくこと。


遠回りな人生を歩いていく。

先日、小池一夫さんの「だめなら逃げてみる」を読んだ。

心がラクになる、言葉がいくつも書かれていて、落ち着きを取り戻してくれた一冊。

なかでも、一番好きな言葉が、

「急ぎ過ぎず、のんびりし過ぎず」
だめなら逃げてみる:引用

今の自分にしっくりくる、言葉だった。

僕は、今人生のターニングポイントにいる。枝分かれした、2本のY字路ではなく、いくつもの歪曲した、道がうねうねと絡み合っている。

その絡まった道を、ゆっくりほどいて1本にしていく作業。

人生において、選択肢は少なければ少ない方がいいと痛感した。無数に散らばったピースを集める旅より、かけている残り1つのピースを探す旅がしたい。

緩やかに続く人生を、遠回りをしながら歩いていく。


自由で不自由な今を、謳歌する

仕事を辞めてから、大切にしているのは丁寧な暮らしをすること。

・朝は8時までに起きる
・顔は洗う、歯は磨く
・食事はしっかり取る
・洗濯物はキレイにたたむ
・外に出ておひさまを浴びる

自由だからこそ、なんでも雑にしない。

競争のない世界に足を止めたのだから、時間をかけても丁寧な暮らしを心がけている。そうすることで、心の落ち着きや、感性も磨かれてくる。

落ち着きができると、ふと、何かが湧き起こり、こうして文章にしてみたり。自然と体が、突き動かされる感覚がする。あとは、そっと肩を向けてあげるだけ。

今はそうやって、時間の許すかぎり、
焦らずゆっくり、のんびりし過ぎず、

自由で不自由な、今を謳歌する。


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