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映画「あの頃、君を追いかけた」幼稚なのは浩介だけだったか

往復600km以上かけて、映画館で見てきました。見て思ったこと、感じたことを深いネタバレなしでちょっとだけ書きます。
主演の山田裕貴への熱い思いに関しては、以前のエントリーをどうぞ。

幅広い世代が泣けているらしい

ネットニュースなどによると、主人公達と同世代である10代後半や20代の客層だけでなく、30代から50代くらいの客層でも、思わず号泣した人が多いという。私も後者の世代だが、結論から言うと泣けることはなかった。というのも、私が作品で描かれるタイプの青春時代を過ごしていないからだと思う。学校のことより好きなものに打ち込んでいた記憶はあるが、私のあの頃に「片思い」という要素が一切ないだけで、あの世界ではきっと予選敗退する。

ただ、幅広い世代の心を打つものがある、それは大変に理解できる。なぜなら、映画で描かれたものがとてもいい意味で「普遍的」だったから。

普遍的だからこそ、誰しもに思い当たる節があって、幅広い世代に響いているのではないだろうか。

似たもの同士の恋心

作品内では主人公の浩介と、クラスメイトで優等生の真愛(まな)との関係を軸に、7人の青春が描かれている。予告編やCMでも分かる通り、浩介は真愛に惹かれていき、そんな真愛もいつしか浩介に……という、やはり普遍的な流れ。

仲間同士でバカをやって楽しみ、数学なんて役に立たないと勉強を放棄する浩介を、真愛はことあるごとに「幼稚」と叱ったり、あきれたり、笑ったりする。町医者の娘で双子の兄も医師、学校でもトップクラスの優等生である真愛からすると、浩介に限らずクラスメイトのほとんどが幼稚に見えていたのかもしれない。

だけど、幼稚なのは本当に浩介と仲間達だけだったろうか。医師の娘で勉強もできる、クールで美しい優等生であるという真愛のフィルターを外したうえで、真愛の言動を振り返ってみると、真愛もまた、まだまだ世間知らずの幼稚な少女ではなかったろうか。

そう考えると、浩介と真愛はある意味では似たもの同士で、惹かれあうのも当然といえる。そして、似たもの同士だったからこそ。

底知れぬ怖さを感じた詩子

真愛は浩介たちとふれあうことで心を開いていく、ヒロイン然としたヒロインだった。本作の核になる7人には、もう1人女の子がいる。浩介の幼なじみである詩子だ。私はこの詩子に、底知れぬ恐ろしさを感じた。わかりやすくいうと、女の怖さを秘めた女性(作品の大部分では高校生だが、女生徒というよりは女性という表現がふさわしい)だと思った。

詩子は何よりも誰よりも猫が好きで、浩介たちと遊ぶ約束をしても、猫を理由にキャンセルするような子だ。そして詩子も彼らを取り巻く「片思い」のベクトルに加わっているわけだが、彼女にはそんなことより大切にしたい猫という存在があったからこそ、私が感じた「怖さ」を発揮せずに済んだのではないか。

物語の主軸である浩介のまっすぐさや真愛のピュアさが、作品が持つよさのひとつとして持ち上げられるだろうが、詩子に猫のような存在がなかったら、この映画はこんなにさわやかで澄んだ空気のような出来になっていなかっただろう。

キミオイは「ただの恋愛映画ではない」

広くたくさんの人に見てもらいたい、そういう思いで主演の山田裕貴は今回、いつも以上に映画のPRに力を入れている。その中で「ただの恋愛映画ではない」ということをよく言っているのだが、実際に映画を見てみて、本当にその通りだなと思った。

想像していたより笑えるシーンも多いし、恋愛映画にありがちな甘ったるさもない。恋愛の甘さが少ないというのも、この映画が持つ普遍性のひとつだと思う。現実はそんなものだ。

最初に私は「泣けることはなかった」と書いたが、じゃあこの映画に何も感じなかったのかというと、そういうわけではない。というのも、映画1本見ただけで、これだけアウトプットできているし、正直言うとネタバレに触れた内容まで書きたかったくらいだ。公開してまだ間もないので、ネタバレ込みの内容を削りに削って、ここまでまとめた。ということは、「あの頃、君を追いかけた」にたっぷりインプットしてもらえたということ。これは、どんな映画でもできることではない。

最年長の座長

最後に今作の山田裕貴について。作中では高校生から大学生、そして高校時代からの10年後を描いている。撮影当時は27歳だったから、10年後のシーンが彼の実年齢にあったシーンというわけだが、見ていて私は、7人の中では20代後半で最年長の彼が、高校生を演じていることを忘れていた。

浩介はみんなが想像するような「アホな男子高校生」そのもので、見ていてなんの違和感もなく、本当にその辺にいそうな男子高校生だった。学校での振る舞いだけでなく、家に帰ってからの言動もそう。細かい趣味や好みに多少の違いはあれど、よくいる普遍的な高校生なのだ。

映画を見終わり、軽い晩ご飯を食べ、長距離移動で寝て、家に帰り、買ったパンフレットやネット記事を読んでようやく「そうだあの人もう高校生でも10代でもねえわ」と思い出した。そのくらい、普通の高校生だった。クラスにひとり、もしくは学年に2~3人はいる「みんなの同級生」のような水島浩介という、山田裕貴が堂々と生きた男がまたひとり増えたのは、ファンとして実に嬉しい限りだ。

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