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世界200都市の路線図を作った話

こんにちは、ぬるいずみ(温泉)です。
ナビタイムジャパンで電車やバスの時刻表の作成を担当しています。

皆さんは「路線図」を見たことがありますか?

電車やバスに乗ってどこかに移動する時に欠かせない路線図……。

そんな路線図ですが、特に必要になるのは初めて訪れる場所に行く時、その中でも「海外旅行」をする時ではないでしょうか?

しかし、慣れない土地、見知らぬ文字の路線図を読むのは大変なこと……。

そこで今回は『NAVITIME Transit』という当社のアプリの話をします。

このアプリ、なんと世界各国の電車やバスの路線図が見られる上に、乗換検索まですることができます。

対応する国と地域は70、掲載都市数はおよそ200になります。

赤色の国と地域に対応(一部の都市のみの対応も含む)

多くの路線図をどのようにして作っているか、当社の路線図を担当するデザイナーに話を聞いてみました。


登場人物紹介


Atsushi
海外路線図の制作開始当初から、デザインやディレクションを担当。


Shione
海外路線図、『NAVITIME』のデザインを担当。


Manae
海外路線図、『乗換NAVITIME』のデザインを担当。


インタビュアー:ぬるいずみ(温泉)
『NAVITIME Transit』の電車やバスの時刻表を担当。



路線図Q&Aインタビュー

デザイナーの方に社内に集まってもらい、Q&A形式でインタビューを行いました。

左から、Atsushi、Manae、Shione


海外旅行に行ったことはありますか?

――いきなりですが、海外の路線図を作成している皆さんは、海外へ行ったことがあるのでしょうか。

Atsushi:
会社の業務で中国本土や香港に行きました。
学生の頃にタイとアメリカに行ったこともあります。
列車はバンコクからアユタヤに行く時に乗りましたが、ドアもない車両で、『世界の車窓から』に出てくるような光景でしたね。

タイ国有鉄道
(出典:Jakkaphat Kliangthisong ウィキメディアコモンズ CC BY-SA 4.0

Shione:
学生の頃に一度だけ上海に行ったことがあります。
上海では『NAVITIME Transit』を使って地下鉄で移動していました。
地下鉄の案内はわかりやすかったですが、どちらかというと地下鉄にある路線図ではなくアプリの方をずっと見ていました。

上海マグレブ(撮影:ぬるいずみ)

Manae:
家族旅行でハワイに行ったり、大学でヨーロッパの美術を見学するツアーに連れて行ってもらったことがあります。
ヨーロッパに行った時はツアーだったので、メインの移動は全員で列車やバスに乗って行きました。
ただ、フリータイムは自分たちで移動しないといけないので、添乗員さんに聞いたり事前に調べたりして、ヒーヒー言いながら地図を見比べて移動していました。

ドイツ鉄道(撮影:ぬるいずみ)

――海外での移動は大変ですよね……。

街中にある路線図はよく見ますか?

Atsushi:
すごく見ますね。
東京の路線図って複雑なので、その辺をどういうふうに表現しているのかなとか。
あとはドアの上にある路線図とか、結構デフォルメしていても意外とわかるんだなとか。
ただ、他の地域から来た人は本当にわかるのかなとか。
そういった所を意識して見ています。

JR東日本路線図(撮影:ぬるいずみ)

Shione:
私は小田急線ユーザーなので、その路線図はよく見ています。
小田急線の路線図は快速急行とか急行とかの線に文字でオレンジ色、赤色と書かれているんですよね。
路線図はいろいろな方が利用するので、誰が見ても分かるようなデザインを意識している点が凄いなと思ったことがあります。

小田急電鉄路線図(撮影:ぬるいずみ)

Manae:
私は路線図のガイドラインを探してしまいますね。
斜めの線は45度でまとめているなあとか、どういう風に作っているのかを見つけられると「おっ」ってなります。
急行が停まる駅の表現なども、路線によって個性があって面白いなとか。
あとは東京都心の路線図って本当に混沌としているので、ちょっと変更があっただけで大仕事だなと思ったりとか。

――皆さんやはりよく見ていますね。

路線図のコンセプトは何ですか?

『NAVITIME Transit』 ソウル路線図

Atsushi:
シンプルで見やすくわかりやすい、ということがコンセプトですね。
路線図は全体を俯瞰した時に位置関係がわかるとか、こういう駅や路線があるというのが、パッと見てわかることが大事かなと思っています。
路線って本当は複雑に走っていると思うんですけども、それを完全にトレースするよりはある程度デフォルメした方が見やすいだろうなと。
既存の鉄道会社さんもそのあたりは意識していると思います。

――他には何かありますか?

Atsushi:
誰が作っても同じ見た目になるように細かくガイドラインを作っています。
統一感のあるデザインもコンセプトの一つかなと思っています。

――鉄道会社さんと違って多くの人が色々な都市の路線図を作るので、そこは『NAVITIME Transit』独自のコンセプトかなという気がしますね。


参考にしている路線図はありますか?

Atsushi:
色々な路線図を参考にしているので、これといったものは特にないです。
ただ、それぞれの都市の公式の路線図は参考にしています。
特に参考にしているのはデフォルメ具合で、何となく似ているようにすることで現地の人もわかるようにしています。

『NAVITIME Transit』 台北路線図(左)と公式路線図(右)
(出典:台北捷運公式サイト

――現地の公式の路線図と全然違っていると使う方も迷ってしまうので、その点は重要なのかなと感じますね。


他の路線図と比べて特徴はありますか?

Atsushi:
どの地域、どの都市でも同じようなデザインであるのが特徴かなと思います。

――確かに、どんな都市にも馴染んでいる感じがしますね。

Atsushi:
特徴がないのが特徴かもしれません。


どのように路線図を作っていますか?

Shione:
最初に駅のデータと路線のデータを時刻表担当者から受け取ります。
だいたいの路線の形を描いていって、その上に駅を置いてラフの作成をします。
そのあと、公式の路線図を見ながら駅の配置などを整えていきます。
最後に路線の角丸などを整えていって、デザイン作業は終わりです。
その後に駅のタップ領域の作成などをして、時刻表担当者にお返しします。

――タップ領域の作成などの手順があるのが、紙の路線図などとは違いますね。

路線図の作成風景

――路線図を作るのにどれくらい時間がかかりますか?

Manae:
1,2路線しかない路線図だと1日くらいかなと。
ハワイのバス路線図は100路線以上あるので、それだと数ヶ月かかったと聞きました。

Atsushi:
私もニューヨークの路線図を作った時は、まるまる3週間かかりました。
現在は時刻表担当者から受け取ったデータを元に、大まかな路線を作ったり駅名を入れたりするプログラムがあるんですが……。
その時はなかったので、路線図を参考に路線も駅名も全部手で作りました。

――ニューヨークの公式の路線図はあまりデフォルメされていないんですよね。

『NAVITIME Transit』ニューヨーク路線図(左)と公式路線図(右)
(出典:ニューヨーク州都市交通局公式サイト
ニューヨーク市地下鉄
(出典:Robert McConnell ウィキメディアコモンズ パブリックドメイン)

Atsushi:
実際の地形に合わせて作る方が簡単なので、逆に言うとデフォルメされていない方が楽なんですよね。
なまじルールを設けてしまうと大変で、本当はこっちに曲げたいのに45度にしか曲げられなかったり……。

――統一感のある路線図を作るのも大変ですね。


海外ならではの難しさはありますか?

Shione:
海外の駅名は長いんですよね。
路線図が密集しているところだと、長い駅名は入らないことがあります。
さらに現地語だけでなく英語も入れる必要があるので、余白の問題があります。

――日本語だと数文字で収まりますからね。

『NAVITIME Transit』 パリ路線図
フランス国有鉄道(撮影:ぬるいずみ)

Manae:
そもそも駅名の文字が読めないということもあります。
日本だったらありえないようなミスを発見できないこともあります。
駅を路線図から探すのも大変ですね。

――ラテン文字以外の路線図は読むのも大変ですね。
私も路線図をチェックをする時刻表担当者として苦労しています。

『NAVITIME Transit』 ドバイ路線図(アラビア文字を使用)
ドバイメトロ(撮影:ぬるいずみ)

Atsushi:
参考にする路線図が本当に正しいのか、の判断も大変です。
これが公式の路線図なのかそうでないのか、公式サイトがあれば良いのですが、ない場合もあったりして……。

――正確な情報を入手するのが日本以上に難しいですね。
コルカタのトラム路線図などは、作成当初は公式サイトに路線図がなく苦労したそうです。

『NAVITIME Transit』 コルカタ路線図
コルカタ路面電車
(出典:Vyacheslav Argenberg ウィキメディアコモンズ CC BY 4.0



路線図談義

ここからは『NAVITIME Transit』以外にも様々な路線図を見ながらのフリートークです。

所蔵している路線図や書籍

印象に残った路線図

――印象に残っている路線図はありますか?

Atsushi:
中国鉄道ですね。
1枚に入り切らないので8分割しました。
路線数も多いですし、そこがけっこう印象に残っています。

『NAVITIME Transit』 中国路線図
中国鉄道(撮影:ぬるいずみ)

Manae:
リトアニアは路線図を担当し始めた頃に作ったので、すごく印象に残っています。

『NAVITIME Transit』 リトアニア路線図
リトアニア鉄道
(出典:calflier001 ウィキメディアコモンズ CC BY-SA 2.0

Shione:
私はイギリスのナショナルレールが印象に残っています。
何枚かに分割して作っていたんですが、合体させてみたら接合部が合わなくて苦労しました。

『NAVITIME Transit』 イギリス路線図
ロンドン・ノースイースタン鉄道(撮影:ぬるいずみ)

――デフォルメしてあるから単純に合わせれば繋がるというものでもないですよね。


路線図の文化や慣習の違い

――他の時刻表担当者からはホノルルのバス(TheBus)路線図が印象に残っていると聞きました。

『NAVITIME Transit』 ホノルル路線図
ホノルル市郡交通 TheBus
(出典:123TheBusHonolulu6969 Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0

Atsushi:
バス停の表現が大変だったみたいですね。

――日本のバス停は、道の両側に同じ名前のバス停があるのが普通なのですが、ハワイはそうでない場合が多いです。

Atsushi:
慣習や文化が違う土地の路線図を作るのはやはり大変です。

――TheBusの公式のバス路線図はバス停の位置が書かれていなくて、道路の名前しか書かれていないのも大きな違いですね。


路線図に求められるもの

――メキシコシティ地下鉄の公式路線図は線の角度がバラバラですが、こういうのも45度刻みに統一していますね。

『NAVITIME Transit』 メキシコシティ路線図(左)と公式路線図(右)
(出典:メキシコシティ地下鉄公式サイト
メキシコシティ地下鉄
(出典:Antonio Reyes ウィキメディアコモンズ CC BY-SA 3.0

Atsushi:
道路や地形も路線図に描かれていたら何か意味があるとわかるんですが、それがないと意図がわかりづらいですよね。

――『NAVITIME Transit』の路線図は川や海を描いていますね。

『NAVITIME Transit』のプラハ路線図(ヴルタヴァ川(モルダウ川)を表記)
プラハ路面電車(撮影:ぬるいずみ)

Atsushi:
路線だけ描かれていても初見の人は見当が付かないと思います。
なので何となくの位置関係はわかるようにしたいと意識しています。

――地図上に路線が描かれているのも位置関係がわかっていいですが、デフォルメされた路線図にギュッと詰まってる感じもいいと思います。

Atsushi:
都市の中にどういう路線が走ってるのかを俯瞰したい時は路線図の方が便利かなと思うことがあります。

――海外の地下鉄の中だと通信環境が悪かったりするので、そうするとアプリで路線図を眺めて見る方が便利だったりします。



さいごに

まだまだ路線図について話したいことはありますが、今回はここでおしまいです。

海外で電車やバスに乗る時には「乗り換えが分からない」「駅名が読めない」「土地勘が掴めない」といった不安がつきまといます。

そんな海外旅行を「NAVITIME Transit」は

  • 全世界70の国と地域、約200都市に対応

  • 所要時間や停車駅も分かる乗換案内

  • オフラインでも見られる路線図

などの豊富な機能でサポートいたします。

国境を越えた往来が制限される時期は続きますが、現地で使うだけでなく、今後の旅行計画を立てたり、ただ路線図を眺めて旅行気分に浸ったりなど、様々な用途にお使いいただけます。

今後もアジア・ヨーロッパを中心に、全世界へ路線図を拡大する予定です。アプリや路線図へのご指摘・ご要望などもお待ちしております。
ぜひ「NAVITIME Transit」をダウンロードして使ってみてください!