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ナビタイムジャパンにおけるアジャイルトランスフォーメーションの現在地とこれから


はじめに

こんにちは、メタルは全てを解決するです。ナビタイムジャパンでVPoEを担当しています。ナビタイムジャパンでアジャイル開発を現場にスムーズに導入するためのガイドラインを作成し社内に公開したのが2022年4月でした。

その後、各現場でのアジャイル導入が推進され、順調にアジャイル化が進んでいきました。

このnoteを執筆しているのは2023年9月。ガイドラインの公開から約1年半が経過し、ナビタイムジャパンにおけるアジャイル開発の実践がどのように変化したのか、またこれからどうなっていきたいのか紹介していきます。

アジャイルの採用がスタンダードになった

ガイドラインにどの程度適合しているのかを計測するチェックリストについて、4半期に1回の頻度ですべてのチームに回答してもらっています。「組織がアジャイルになっているか」を数値で評価することは難しいですが、便宜的に計測しているこの指標からはアジャイルのマインドセットに基づいたプラクティスを各現場が取り入れていることが読み取れます。

23年2Qには平均70%を突破

また、適合率をヒストグラムにしてみると、全体として「適合している」ほうにシフトしていることがわかります。

「まったくやっていない」チームの数はゼロ

実践の中から現場ごとの工夫が生まれている

各現場でアジャイル開発に取り組み始めてから一定の期間が経過し、各現場でふりかえりながら学び、その現場ならではの工夫が生まれるようになりました。

テスト保護されていないシステムがあれば細心の注意を払ってリファクタリングしテスト保護する。
タスクが溢れてしまうのであれば優先順位をつけるための軸を明確にし整理整頓する。
お互いに感謝を伝えられるようにふりかえり手法をカスタマイズする。

いずれも、ガイドラインに書かれたプラクティスをなぞっただけではない、「起こったことから学びカイゼンし続ける」というアジャイルのマインドセットに基づいた工夫です。ガイドラインを導入し各現場でアジャイルトランスフォーメーションが進んだことで、こういったアウトプットが生まれていきました。

学びの活性化

当社ではもともと「ナビタイムカレッジ」という名称の社内勉強会が定期的に開催されるなど、学び続ける文化がありました。ここ1年くらいはそれにくわえて良い設計やテスト戦略について学ぶ書籍の読書会、動画視聴会が開催され、アジリティ高く開発を進めるために必要不可欠なスキルを学ぶ機会が増えていきました。

■社内勉強会で取り扱ったコンテンツの一例

また、途中で参加者が脱落しがちな読書会については脱落しづらくする、一度脱落しても再参加しやすくするといった工夫がなされ、勉強会運営にもアジャイルの「学んで良くする」マインドが反映されていました。

ワークグループによる支援活動のプロアクティブ化

当社ではガイドラインの作成以前より、ふりかえりやインセプションデッキ作成、バリューストリームマッピングの実施などアジャイルに関連するプラクティスの実施をサポートするワークグループが存在していました。
方法論についてはガイドラインの形である程度整備されたこともあり、以前と比べて「ふりかえりってそもそもどうやるんだっけ」というような初期段階での相談の数は減ってきていました。

そこでワークグループでは、アジャイル開発の実践を続けているチームが新しいプラクティスを安心して試す土壌をつくるため、様々なプラクティスを紹介するボードの作成を実施していきました。

一例としてふりかえり手法「象・死んだ魚・嘔吐」、お互いの尊敬の念をみえる化するアイスブレイク「Feedbackリーグ」の紹介ボードをお見せします。

象・死んだ魚・嘔吐を実施する際のポイントをまとめたボード
お互いの良い点を伝え合う「Feedbackリーグ」の紹介ボード

ステークホルダーから見た変化

このように現場レベルでは様々な形でアジャイルに取り組んでおり、変化も起こっていました。では、ステークホルダーからはその変化がどのように見えていたのでしょうか。事業責任者全員にヒアリングした結果の一部を紹介します。

よかったこと

  • ワーキングアグリーメントで共通認識が出来た

  • 異動してきたメンバーが働きやすいといっていた(特に先進的にアジャイル導入を進めていた事業)

  • スケジュールやタスクが見えない、ということがなくなった

  • 毎週出来上がったものを触るようになって、うまく進むようになった

  • メンバーの目線あわせをする機会が増えた。若手が積極的。

課題に感じていること

  • セールスなどBizサイドの巻き込みがまだまだ

  • 理解が曖昧なまま進めているところがある

  • マネージャーがリーダーシップを発揮し進めているが現場を巻き込めていないケースがある

  • BtoBビジネスではアジャイルに進めることが難しい場合がある

チームの見える化、共通認識の形成など働くプロセスの面でメリットを感じてもらえていることがわかりました。Bizサイドをいかに巻き込んでいくかが、今後のテーマになっていきそうです。

現在地: 学びとカイゼンのサイクルが回っている

ここまで紹介してきたように、現在は学びとカイゼンのサイクルを回す働き方がある程度浸透してきているといえます。

  • 現場が主体的に動いている

  • 現場がつまづいたときに支援するワークグループが存在する

  • ステークホルダー(事業責任者たち)が変化に対して前向き

これらの要素が組み合わさることで、今の状態にまで変化してきたのではないかなと考えています。あちこちで学びのサイクルが回るような組織になるといいな、と思ってアジャイル推進活動をしていたこともあり、現状そういった状況になっているということには個人的に胸が熱くなっています。

これから: コラボレーションと再構築を経てイノベーションを起こす

1年半をふりかえってみると、アジャイルに取り組み始め、働き方の変化を起こすという目標はある程度達成できたように思います。
では、これからどこに向かうのか。

チームとチームがアジャイルを共通言語に協働する。ダブルループ学習を回し、目指すゴールさえアップデートしていく。アジャイルのプラクティスを実施する(Do Agile)だけではなくアジャイルのマインドセットを身にまとい(Be Agile)、変化を味方につける。
そうなっているチームもありますが、事前に計画を作り込んでそれをなぞって作るやり方のチームもいます。もちろんそういったやり方が最適な場面もあるのですが、計画をなぞるだけではなく、小さく作ってリリースしたものから学び計画をブラッシュアップし続ける、時には大胆にピボットする・・・そういったイノベーション組織になっていきたいし、なっていけるのではないかと期待しています。

経路探索エンジンの技術で世界の産業に奉仕する

経路探索エンジンの技術で世界の産業に奉仕するーー。当社の経営理念です。この経営理念が軸となり、その軸を中心にアジャイルの回転を回し、世の中の変化を捉えながら世の中の移動体験をアップデートしていく。そんな私達の活動が、皆さんの日々の移動をよりよいものにする手助けとなっているのであれば、なによりの幸せです。