【OJT】「自ら本質的な成長をする」を目指したふりかえり夕会
こんにちは、初めまして、Phydrshです。ナビタイムジャパンで『トラックカーナビ』の開発を担当しています。2022年7月から、プロジェクトに配属された新入社員のOJTトレーナーをすることになりました。この記事では、トレーニーを一人前の人材にするべく、その成長を促進するために、夕会に取り入れた「ふりかえり」の手法をご紹介します。
「自ら成長する」を目指した夕会
夕会はトレーニーの業務進捗状況の共有を主体に行います。ただし、ただその日の共有を行い、明日の予定を確認するだけでは一人材としての本質的な成長は望めません。トレーニーには、サービス開発プロジェクトの一員として、技術的にも社会人としてもステップアップしてもらいたいですよね。
また、OJT期間は有限です。OJTトレーナーの手が離れてからも成長を止まらないように、「自ら成長する習慣」が身に付くことを意識した夕会を行っていきました。
YWTでふりかえり
夕会には「課題の気づきと改善のサイクル」を仕組みとして取り入れるために「ふりかえり」を用いることにしました。フレームワークには、ひとまず「YWT(やったこと・わかったこと・次やること)」を採用しました。
「やったこと」で業務報告をまとめて共有してもらって、
「わかったこと」で深掘りすることで、
「次やること」の実行精度を高める
という流れで回していくイメージです。実際にはYWTを少し拡張して、「自分の成長について気がついたこと」という項目を追加しておこなっていました(追加経緯は後述)。
OJTトレーナーは「わかったこと」の場面で、トレーニーに「なぜそのように考えたか/行動したか」を問いかけて深掘りをサポートします。この深掘りはもっとも時間を割きたい部分なので、「やったこと」を事前に書き込んでもらっておくとスムーズに進められます。
ふりかえりは次なる成長のためのチャンスタイムです。業務の流れから切り離して立ち止まって考えることで、「できたこと・できなかったこと」を整理することができます。「できたこと・できなかったこと」はともに、一つひとつについて「なぜそうなったのか」を考えて、「できたこと」は継続し、「できなかったこと」は改善していくようなトライを考えます。
「深掘り方」が大切
特に「できなかったこと」はゴールデンサークル理論(Why-How-What)の考え方に基づいて深掘りしてから「次やること」に繋げることにしました。
ここでゴールデンサークルから得たいことは、本質からアウトプットを考えるというフローです。今回は実際の行動に対して考えていくため次のように置き換えて考えます。
Why → そうしたい理由。行動の目的。動機。
How → どのようなアプローチを採ったのか。選択肢。
What → 実際に行動したこと/すること。
「できなかったこと」はWhatに相当するので、次のようなステップで深掘りを行い、「次やること」に繋げました。
「なぜ」できなかったのかを深掘りする
できなかったこと(What)から、やり方(How)を再確認し、元々はどうしたかったのか(Why)を考える。「どうすればよかったのか」を導き出す
動機(Why)を実現できる選択肢(How)の案を出す。「次やること」を決める
導いたHowから具体的な行動目標(What)を宣言する。
トレーニーが自分自身で深掘りを進められるのが理想的ですが、詰まってしまう場合はOJTトレーナーがトレーニーに問いかけていく形で深掘りをサポートしていきます。
このように「なぜ」まで遡ってトライを出すことで、行動を本質から改善できるようになるはずです。WhatからWhyを出すのはなかなか骨が折れる作業になります。ですが、手当たり次第に別のWhatを実行する安易なトライ&エラーより、Whyに根差した本質的で効率的なトライ&エラーを目指したいですよね。
この「ふりかえりと深掘りの流れ」を細かく繰り返すことにより、業務に必要な考え方をアップデートしていくことができます。また、本質に立ち返って見直す考え方を習慣化する訓練にもなります。
大きくふりかえる
通常の夕会とは別に、成長を俯瞰してもらうために、月初に前月分をまとめてふりかえる「1ヶ月ふりかえり」も導入しました。こちらはより深掘りを重視します。ロングスパンで眺めたり、時間を置いて考えたりすることで、新たな気づきを得ます。自分の成長とそのスピード、考え方の傾向を捉えることで、当月の業務への取り組み姿勢を改める狙いがあります。
前述の「自分の成長について気がついたこと」はこの1ヶ月ふりかえりの際に役に立ちます。自分が「いつ、何をできるようになったのか」は日が経つにつれて忘れて行きがちだと思います。1ヶ月間貯めてきた成長に気づいた当時の「できた!」は、大きくふりかえった時、当時の感動とともに自身の成長として実感できます。成長の喜びは「できる」自信になりますし、モチベーションアップにもつながります。
1ヶ月ふりかえりを終えた後のトレーニーは、より意欲的にプロジェクトへの貢献を考えて行動をしてくれるようになりました。
ツールとしてMiroを採用
ふりかえりを行うツールとしては、描画表現が柔軟な「Miro」を使うことにしました。その利点は1ヶ月ふりかえりの際に特に発揮されます。日々のふりかえり内容を付箋で記録しておくことで、簡単にコピー&ペーストや移動、紐付けができるので、カテゴライズして傾向を分析するときに便利です。
また、全体を引いて概観できるので、1ヶ月ふりかえりまで到達した時点で圧巻のふりかえり量を見ることができるのも魅力的です。初月で約20回分のふりかえりをトレーニーに見せることができますし、きっと達成感を得られるに違いありません!
余談ですが、Miroのふりかえりボードをプロジェクトメンバーも閲覧できるようにしておけば、メンバーがトレーニーの成長を窺うことができるのも利点かと思います。トレーニー-トレーナー間のやり取りについて見える化しておくことで、特にプロジェクトマネージャーなどリソース管理に携わる方は、安心してOJTを任せられるのではないでしょうか。
3ヶ月経過して
さて、ここまでトレーニーの成長を促進するために夕会に取り入れた「ふりかえり」の手法についてご紹介してきました。
夕会でのふりかえりを通して、トレーニーは自身の行動特性や思考の傾向について深く考え、物事を引いて考えたり解像度を上げて考えたりする経験を繰り返すことができます。実際に私のトレーニーには、現在、プロジェクト運営の一部を担ってもらい、日常的にある簡単なタスクのほとんどは私のサポートなしで自己完結できるまでになりました。
4ヶ月目以降のふりかえりは、週1回に頻度を落として継続します。また、ふりかえりのやり方はトレーニーの成長に合わせて随時アップデートしていきます。OJTトレーナーとして「"ふりかえり"のふりかえり」を行うことで、"ふりかえり"の改善を図っていきます。
その後、トレーニーの成長に変化があれば、またの機会にnoteを執筆したいと思います。もしかしたらトレーニー当人が書いてくれるかもしれません(笑)
ここまでお読みいただきありがとうございました。