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読書感想文 「ナースの卯月に視えるもの」

私の父が他界した時、ちょうど総合病院に入院していたことを思い出す。もうそれは5年も前のことだ。「延命措置をすれば長く生きることはできるが意識が回復することは奇跡的にすることは期待できない。」母と私は延命措置をしない選択をした。

全く知らない話だとリアリティーが無いのだが、父の入院した総合病院の状況を垣間見たことでこの物語は私にとって「すぐ隣の出来事」のように思える。

テレビのドラマや映画などではまず出てこない病院の患者さんへの地味だけど極めて大事な日常の仕事がこの小説から知ることができた。これは大きな収穫だった。私は幸い大病を患って入院したことは無いが、いずれお世話になったときはこの小説のことを思い出して看護師さんのことを気遣おうと思う。


それにしても主人公の卯月さんの行動力には驚かされる。
見知らぬ人を尾行したり、知らない人にいきなり話しかけたり。
ドキドキしながらページを開く。
これが、全く縁の無い世界であればそれほどドキドキせずに主人公はヒーローだからそれぐらいの行動力はあって当然だ、なんてちょっとすかして読んでしまうだろう。
主人公の卯月さんはなんか・・・・
その辺にいてそうなやさしい看護師さんというイメージがただよっているのだ。
そんな彼女がエッ!と驚くことをやってしまうところがギャップがあってドキドキさせられるのだ。

主人公の卯月さんの不思議な力は、臨終の床にある患者さんの『思い残し』が視えることだ。

卯月さんのすごいのは、『思い残し』が視えることでは無いと思う。
患者さんのために『思い残し』の原因を探し出して行動する心を持っているところだと思う。


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