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大学時代のクラブの記憶と縁


記憶の糸

今年頭、見知らぬ人からショートメッセージが届いたかと思ったら懐かしい大学の先輩からだった(笑)。
そのメッセージがあるまで大学でワンダーフォーゲル部に入っていたことをすっかり忘れていた。

今日そのOB達の集まりがあった。
大学のクラブは数年前に廃部しているので現役生はいない。
大学を卒業したのが1985年。あれから39年経った。

僕の左隣に初老の男性が座った。
あれ?誰だろう?(失礼)思い出せない・・・・
初対面であれば、社会人としてそのやり方を知っているが、
こういう状況でどう話を切り出していいのか悩む。
しばらくフリーズしている。おそらく相手もそうなのだ。
「俺、西野。覚えている?」
あっ!そういえば、現役時代一緒に山に登ったことがある。
当時の面影が微かに残る彼の顔を見ながらお互い老けたなぁと思いながら、
何を話そうかと悩んでしまった。
右隣にも現役時代一緒に山に登ったことがある一つ上の先輩が座った。
40年も経って話すことが無いとはなんとも情けない話だ。いや、40年も経ってしまったので話すことが見つからないのかも知れない。

「ところで渡邊、あの耳の凍傷どうなった?」
先輩のひとりが僕が耳の一部が凍傷になったことを話した。
40年以上前の話を1ヶ月前にあったように話す。
まるっきり忘れてた。確か、北八ヶ岳に行った時の話だ。

その一言で、凍結されていた記憶が解凍した。

タイムトリップはSFの話、架空の話だと思うかも知れないが、心や頭の中では具体性を持っている。記憶した時期は40年前だが、その時の感覚は新鮮なまま記憶されている。

起床!午前2時。薄青のテントにのシミ。ご飯がコッヘルの中で炊ける香りと音。ホワイトガソリンの香り。無風。温度計は零下20度。でも体を刺すような寒さは感じない。月が眩しい。だから星があまり見えない。積もった雪に月の光が乱反射してヘッドランプ無しでも周りが見える。雪は膝あたりまでか。雪を踏む足にググッググッと雪の感覚が伝わる。吐く息が白い煙のように漂う。その一部が赤のアノラックに張り付き氷になる。先を歩く部員の人影が亡霊のようだ。

山の美しい記憶が頭に蘇るのを崩したく無いのでしばらく会話の輪からはずれ、その記憶をたぐる。

心が震え、鳥肌が立つ。自然の中の人間を意識する。この一瞬を味合うために自分がここに来た。そんな感覚がよみがえった。

言葉にはしたことがなかったが、親しい仲間と山に行くこと。そして自然の中に身を置いて、大自然を感じること。この2つのことが体力的も精神的にも過酷なワンダーフォーゲル部に通い続けた理由かも知れない。

先輩の中には、海外の山。日本の山。などに多く登頂した山のベテラン勢もいる。彼らを山へと駆り立てるものがあるとするとそれは何だろう?公務員をし、職場との軋轢を覚悟の上、長期休暇をとり海外遠征をした話を今度時間があれば聞いてみたい。

ところで、僕の後輩達への記憶がかなり怪しい。
というのは、OBになった後あまりクラブ活動を支援していなかったからだ。
「渡邊先輩」と知らない(とは言えない)後輩達から声をかけられるとドキッとする。先輩らしいことは何もしてなかったからだ。
それでも僕のような人間のことを覚えてくれる後輩がいることは嬉しかった。
これからでも「先輩」としてできることをして行きたい。

人生100年時代とか言われる。大学時代でクラブ活動する時間は3年程度。100年からみるとほんの「点」のような一瞬の出来事。今回こんな集まりがなかったらその時の縁も切れてしまったかも知れない。その縁をこれからも大事にしていきたい。


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