見出し画像

服を大切にするということ

お気に入りの服はなんですか?
とよくフォロワーさんに質問を頂きます。

私は「全部!」と答えます。

適当に答えてるわけじゃなくて、ほんとに全部お気に入りなんです。

今回は「購入したのちのお洋服のお話」を
していきたいなと思います。

「服の寄付」の終着点

皆様は古着の寄付ができることをご存知でしょうか。

NPO法人などが全国から古着を集め、
それを紛争している国や発展途上国などに送るという活動です。

私はこれを見た時、
「無駄にならないしもらった人も助かる、素晴らしい活動だ」
と思いました。

しかし実際に調べてみると、その活動は必ずしも良いものばかりではありませんでした。

うずたかく積まれている「衣服」。
古着屋に持ち込まれたり、寄付に出されたりしたのち「捨てられた衣服たち」です。

着られなくなった衣服が“ただのゴミ”となるだけではなく、環境問題や国どうしのトラブルにまで発展する原因となっています。

ジャケットやジーンズ、靴にバッグ。
世界各地で大量生産された末に、売れ残った商品や、着られなくなった古着です。
この場所だけで10万トンに上るとみられ、「衣服の墓場」のような状況になっていました。

捨てられた衣服には石油を原料とする化学繊維が使われています。
このため、分解されずに砂に埋もれ、土壌汚染の原因となっています。

さらに、火災によって大量の有毒ガスが発生する事態もたびたび起きています。
何者かが火をつけたと見られていて、私たちが現場を訪れたときもプラスチックを燃やしたような、いやなにおいがただよっていました。
この地域に暮らす人たちの健康被害も懸念されているのです。

問題の背景に指摘されているのは衣服の大量生産です。「ファストファッション」の浸透で、流行のデザインを取り入れた衣服の大量生産と大量消費が繰り返される中、世界で生産される衣服の量は2014年には1000億着を突破、2000年のおよそ2倍となりました。

環境省が行った調査では、日本で1人が年間に購入する服は平均でおよそ18着。その一方で、年間1度も着ない服は平均で25着にのぼっています。

着られなくなった衣服の“末路”とは…
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220218/k10013486591000.html

これを見て、問題点を知ったのと同時に
服の廃棄問題は簡単に解決できない根深いものなのだと感じました。

また、古着だけでなく新品の服も同様に、日々大量に廃棄されています。
いわゆる「売れ残り」は、倉庫などで在庫として置いておくよりも、廃棄してしまった方がコストが低く済むのです。

上記の記事ではファストファッションの服のみが廃棄されているように感じますが、実際は高価なブランドの服も同様に廃棄されているそうです。
それも、一度も誰にも着られることなく。

私流「服を長く楽しむコツ」

前々から服の問題についてnoteで執筆してきたので
そこでもチラチラ書いていることなのですが
まずは消費者が服への向き合い方を考えなくてはなりません。

人が服を手放す理由は
①「汚れや破れなどの破損が生じた場合」と
②「デザインに飽きた、嗜好が変わった場合」
の2つがあると思います。

①に関しては同じ服でもその人の着方や手入れの方法によって変わると思うのですが、
そもそもの質が悪ければ長く着ることも難しいです。

過去に正社員で働いていた時は私服でなく制服での勤務で
冬は黒の無地カーディガンなら着用OKという決まりがありました。

インスタグラムで普段の私の投稿を見てくださっている方ならお察しかと思うのですが
派手なファッションを好む私は黒の無地のカーディガンを持ち合わせていませんでした。

普段着にはしないだろうな、ということもあり
その時初めてとあるファストファッション店で
黒のカーディガンを購入しました。

職場で着用して1日目。
その日の夕方には手首から肘にかけて毛玉まみれに。

PCを使う仕事でどうしても摩擦が発生するとは言え、
まさか半日でここまで毛玉ができるとは、と驚愕しました。

みっともなく見えるのも困るので、
ハサミで毛玉をカットするのですがそれを繰り返していくうちに穴が開いてしまい…

その時に「ファストファッション店で服はもう買わないだろうな」と思いました。

もちろん全ての商品がそうとは限りませんし
私の買ったカーディガンがたまたま脆かっただけなのかもしれません。

ただ、こんなにすぐにダメになってしまっても
これだけ安ければ罪悪感なくさっさと捨ててまた別のものを買えるな、
と思ったのが正直な感想でした。

次に
②「デザインに飽きた、嗜好が変わった場合」

私は基本的にはこの場合、誰かに譲ることが多いです。
自分が大切にしていたものが、
それを必要とする別の誰かがまた大切にしてくれる。
だからこそ、普段から服を大切に着て、
できるだけきれいな状態でお譲りができるように心がけています。

逆に古着を買うこともよくあります。

潔癖だから古着が買えない、
という方も多いと思うのですが
実は私もやや潔癖です。

なので、ニットだろうがコートだろうが
古着のものは届いたらすぐに手洗いします。

意外と家庭で洗えるものは多いです。
水を吸ったニットはとんでもなく重いですが
お気に入りの洗剤と柔軟剤を使って
自分の手で洗うことで、最初の愛着が生まれるなと思います。

古着も案外いいものです。
私は新品と古着と、同じくらいの割合でよく購入しています。

新品は状態がとても良く、最新でトレンディなデザインが高揚感を呼び
古着は自らの手で生まれ変わらせることができる特別感があります。

どちらもそれぞれの良さがあって、それぞれ違ったときめきを与えてくれるものです。

安い服が悪なのか?

以前、「私がファストファッションを着ない理由」
というnoteを公開した際、沢山の共感のご感想の中に
「ファストファッションを悪と思わないでほしい」というご意見がありました。

確かに私はファストファッションを着ませんが
決して「ファストファッションなくなれ!悪だ!」と言っているわけではありません。

例えばですが、ものすごい安いスーパーがあったとします。

「安いからたくさん買おう!」とたくさん買ったものの
使いきれず、賞味期限が切れたので捨てる
という人がいたら…

もったいない、使える分だけ買えばいいのに、とか
生産者さんが悲しむだろうな、とか思います。

それと同じで、安さを理由に服を買い、
大切に着ることもせずに何の感情もなく捨ててしまう人に疑問を持ちました。

仮にファストファッションしか買わない人でも、
正しいお手入れをしたり、汚さないように気を付けたり、
長く着るための工夫をして大切にしているのなら素晴らしいことです。

安くても高くても、長く大切に着ることを
意識することで無駄に買うことも抑えられます。

私がディレクターを務めているHeroine mysélfでは
ファッション業界の抱える大量生産・大量廃棄による環境汚染問題に対して「受注生産」とすることで余剰在庫ゼロを実現し
国内生産にすることで日本の縫製職人さんの支援をしながら、長く着られる高品質のお洋服を制作しています。

上記の「服の廃棄問題」を考えたとき
「世界ではこんなにも服が捨てられているのに、わたしが新しい服を作り出すのは、どうなんだろう」と悩んだこともありました。

その中で
・在庫を作り出さないこと
・長く大切にしたい服を作ること
・服を大切に着ることの素晴らしさを発信し続けること
これらがわたしにできることだと思いました。

わたしができることも、これを読んでくれている人ができることも、世界規模で見れば本当にちっぽけで何も変わらないかもしれない。
実際そうだし、この事実にわたしも心を折られそうになる。

「それでも変えてやる!」と意気込むわたしのように、変わろうと思える人はきっといるはず。
“エシカル”とか“サステナブル”とか、数年前までは一度も聞いた事のなかったワードが最近よく聞こえてくる。きっと変わってきている。昔から、変わろうと動き続けていてくれていた人たちのおかげだと思います。

消費者の意識が変われば、会社が変わり、
会社が変われば、社会全体が変わっていきます。

人は生まれてから死ぬまで服を着て生きていく。
いつもと違うものや好きなものを着るだけで日常が彩られていくし、仕事などで仕方なく好みでないものを着るだけでなんだか気分が上がらないような気もする。

わたしは本当に服が大好きです。自分が装うことも、誰かが装っている姿を見るのも、そのお手伝いをすることも。
服が好きだからこそ、惨状へ目を向け、光も闇も知った上で真剣に向き合いたい。

アパレルにとってより良い未来がくると信じて
できることを精一杯やっていきます。



この記事が参加している募集

仕事について話そう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?