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くだらないの中に

私はお笑いが好きだ。

ちいさい頃は、とてもテレビっ子だったので
ドリフ、バカ殿、ごっつ、めちゃイケ
ウリナリ、笑う犬...などなど
たくさんのバラエティ番組を見て育った。

成長してもそれは変わらず
オンバト、エンタの神様
レッドカーペット、笑いの金メダル...
いわゆるネタ番組と言われるやつもひと通り見つつ
はねるのトびら、内P、ぷっすま、アメトーク...
と、深夜のバラエティにハマり
気の合う友達と次の日「昨日のあれ見た?」
とかなんとか言いながら、
恐らく他の子たちが知らない楽しい世界を
まるで自分たちだけが知っているかのような
気分で過ごしていたのだ。

いまや冬の風物詩となったM-1グランプリや、
なんか豪華な芸能人がいっぱい集まる
パーティーみたいになったすべらない話も、
始まった当時からリアルタイムで見ていた。
きっと、あたらしくて、わくわくするなにかを、
自分だけが知っているような秘密で特別な時間を、
こそこそといつも探していたんだと思う。

青春時代、世はちょっとしたお笑いブーム。

大人気の芸人たちが
アイドルさながらに載る雑誌を買っては
「かっこいいー!」などと興奮し、叫び、
親に頭を下げて契約してもらった
スカパーの今はなきよしもとファンダンゴTVで
好きな芸人が出る番組を録画しては繰り返し見たり、
暇さえあれば当時のルミネライブ
4じ6じなどの映像を見て
面白い芸人を探したりする日々。
お笑い過疎地に生まれ育ったため、
当然劇場などもなく
生でお笑いを見ることなんてまったくない環境。
大型のショッピングモールに
営業で芸人が来るとわかった時には、
これまた親に頭を下げ、友達を誘って見に行った。
スピードワゴン。
黄色い歓声と、井戸田さんの「あまーい!」が
特設会場につくられたステージに響き渡っていた。
とても面白かった。
初めて目にするテレビの中の人。
そして、生で見たお笑いに、感動と興奮が止まらず
1ステージの予定を2ステージ見たい!
とわがまま言って
すごく嫌な顔をされたのを覚えている。

こうして私の青春の大部分は、
生の舞台や、テレビ画面の中に見たお笑いの世界、
ルミネのきらきらした幕に憧れながらも、
オタク的活動でその幕を閉じたのだった。


やがて時を経て、
お笑いよりも音楽とそのライブに夢中になった私は、
以前よりバラエティを見たり
好きな芸人を追いかけて見たりすることは
格段に減っていた。

それなのに何故か、
はっぱ隊に救われてお笑いが好きになった
友だちの付き合いで、
よしもとの社員面接を受けたり
(グループ面接で、最後にビー玉を箸で
右から左の皿に移動させる課題があった。
あれで何を見られてたのかわからないけど、
ビー玉両方の鼻の穴に詰めとけばよかった
と今にして思う。)
友だちの大学の学祭に誘われて
大好きだったライセンスを見に行ったり、
昔付き合っていた人がバナナマン好きだったので
元々好きだったところに拍車がかかり
DVD購入特典の握手会に一緒に参加したり、
TBSラジオを色々聴かされたり(主にJUNK)と
なんだかんだ途切れることなく
お笑いとの縁は続いていた。


ある時、大好きで、
1年近く追いかけていた
バンドが解散することになった。
深く想いを傾けていたバンドが解散する
という経験が初めてで、
心の中にぽっかりと はっきりと
穴のようなものが出来るのを感じていた。
何となく毎日やる気も出なくて、
ぼんやりとYoutubeを見る日々。
そんな時、たまたまおすすめかなんかで表示された
M-1グランプリ2016。
そういや見てなかったな と見始めた途端に
衝撃的な出会いは訪れた。
それは、和牛という漫才師だった。
カップルがドライブデートをするネタ。
スマートで流れるような美しさと、
カップルがそのまま漫才をしているような
自然な演技で、まるでこのふたりが
この世界に実在するかのような漫才。
と言うのは 後に気付いたことで、
とにかく面白かった。
かなしい気持ちが一瞬、
どこかに飛んでいってしまった。
実際に、生で見てみたかった。

それから、このふたりのことを必死に調べ
情報をかき集めた。
大阪の漫才師だが、ルミネtheよしもとなど
都内近郊のよしもとの劇場での
ライブに出ているらしいと知った。
気付けば、青森から東京に移り住んでいたもので、
あ!そうだ、今ならあのルミネにも行けるんだ!
と心に閃光が走った。

憧れのルミネ。
青春時代が鮮やかに蘇った。
たぶん、ステージの仕様は昔テレビで見た時と
変わっていたけれど、とてもきらきらして見えた。
どきどきわくわくした。
たくさんの笑い声で溢れていた。
感動と面白さとで胸がいっぱいだった。


それからというもの、
生でお笑いのライブを見る楽しさに目覚め
狂ったように劇場に足を運んでいる。
劇場に行く楽しさを教えてくれた
和牛にはとても感謝している。


芸人は、いつもくだらないことを
全力で、全身全霊で、人生まるごとかけて
私たちに届けてくれる。
かっこいいなぁ と思う。
音楽と一緒で、お笑いのライブは
その日その瞬間の温度を肌で感じられるし、
同じネタでもぜんぜん違うし、
想像もしていなかったような
奇跡やドラマが起こったりもする。
その瞬間を見逃したくなくて、
劇場に向かうのだ。
なんて御託はいい。
とにかく楽しいんだよ。

簡単そうに見えてしまうけど
人を笑わせる というのは、
とっても難しいことだと思う。
そして、笑う って素晴らしい。
かなしみをどこかに連れて行ってくれる。
いつだって、尊敬と憧れの気持ちを抱きながら、
くっだらねぇな と笑ってしまう。
あたまが空っぽになって
おなかが本当にちぎれそうになるくらい笑う時間。
それが、最高に気持ちいい。


不急かもしれない。
でも、ぜったい不要ではない。

誰かの心を、必ず救っている。

また、元気で、楽しく笑い合える時間を
待っている。



私はお笑いが大好きだ。


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