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2022年下半期新人中編について(その2)

まだ良い作品が多いので語り尽くせない続きを書きます。

まずは須賀ケイさんの「蝶を追う」
この作品は序盤が少し退屈気味なのだが、読み進めていくととても引き込まれる作品だ。

少しずつ「あ、もしかしてそういう事?」と奥さんとの関係や馴れ初めがわかってくるが想いの深さと長さに感嘆する。

ストーカーと純愛は紙一重なのかもとこの小説を読みながら思った。

中々にひきこまれるいい小説です。


次にピックアップするのは大谷朝子さんの「がらんどう」
私はこの小説を読み終えた直後に
「この小説が芥川賞だ!」と候補作予想を飛び越えて、芥川賞を受賞してもおかしくないと思ってしまったぐらいに出来上がってるなと感じた作品だった。

それにも関わらず、今回私の候補作予想から外したのは、とても好きな作品だし面白かったけれど少し物足らなかったかなと思い直したからだ。

男性と付き合えない、けれど子どもほしい。だからといって特異な人でも、LGBTに属するほどセクシャルマイノリティなわけでもない。

とても良い作品だったのだけれど、そこがサラっとし過ぎていて、最後も
「その失敗したのでいいんかい!」とツッコミいれたくなるもので
卵子凍結しなくていいまで思えるのかと、アッサリしていた辺りをもう少し読みたかった。

でも好きなんだよね、この小説。


そして次にピックアップするのは
小池水音さん「息」
この小説は、ふとした文章がとても良かった。

「わたしはさきほどの悲しみを恋しくおもった。けれどもそう望み、あえて引き寄せようとしたところで悲しみが応じることはないと、わたしはよくわかっていた」

という部分などは分かる!ととても思った部分だった。

身近な人を亡くした事に対しての再生なんて時間が経っても出来てるとは限らない。
大丈夫そうに見えても、そうじゃない
それがとてもよく描かれていた作品だったと思う。

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